10月30日に室町三井ホール&カンファレンスにて開催されたBluetooth東京セミナー2024に参加しました。
ここでは様々なAuracast機器が展示、デモされていましたが、そこに先のPhilewebの記事で書いたJBL Tour Pro3を持参して行って実際に使いました。
PhilewebのAuracast記事リンク
https://www.phileweb.com/sp/review/column/202410/28/2457.html
会場は手前の部屋が様々なメーカーがBluetooth機器を展示するブースで、奥のホールがセミナー会場です。
「Bluetooth最新情報:技術発展とAuracastの普及に関するハイライト」というセミナーではBluetooth SIG APAC&中国担当 シニアディレクター ロリ・リー氏がBluetooth の概要と歩みの概要を解説、興味深かったのは米国FCCがワイヤレスイヤフォンと補聴器の関係について勧告を行ったという点、そしてAuracastアシスタントにTWSのチャージングケースも使えると言及した点です。
前者は最近のAirPods Pro2のOTC補聴器機能とも関係しますし、後者はこれまでAuracastアシスタントは主にスマホやPCと言われていたものを、私のPhilewebの記事のようにTour Pro3の液晶ケースのようなデバイスにもBluetooth SIGが言及したという点で画期的です。
またAuracastのシナリオを解説した図には私がアスキーで記事を書いたAuriも含まれていました。
Auriシステム紹介記事リンク
https://ascii.jp/elem/000/004/183/4183952/2/
自分の情報認識とSIGの考えていることをすり合わせできたという点でも意味があります。
右図の赤丸部分がAuriシステム
「広がる Bluetooth LE Audio ワールド」というセミナーではLE Audioのキーパーソンであるソニーの関正彦氏によるLE Audio概要を解説。興味深い点としてはゲーミングプロファイルであるGMAPと従来の音声プロファイルTMAPの拡張です。
GMAPは昨年暮れに発表された新しいプロファイルで、ゲーミングに特化したものです。特徴は低遅延で30msを達成するとのこと。次世代TMAPではハイレゾ、サラウンド、安定性向上、ワイヤレスマイク(複数) 、そして機能拡張などが可能になるということ。
2028年には80%がLE Audio対応機器になるということですが、さてアップルはという気もします。
ノルディックのAuracast対応SoCのセミナーも興味あったのですが都合があり退席。
さて、セミナー会場では同時通訳が行われており、それをBoschのワイヤレスタイプの受信機で聴講することができました。これはINTEGRUSというシステムで赤外線通信を用いています。これが一般的な会議・セミナーでの聴講システムですね。
Bosch INTEGRUSリンク
https://www.boschsecurity.com/xc/en/solutions/conference-solutions/language-distribution-system/
Bosch INTEGRUSポケット受信機
一方で実は会場ではAuracastで同時通訳がブロードキャストされており、私は持参したJBL Tour Pro3でAuracastで聴くことができました。Auracast送信機にはST Microのシステムが使われていたようです。
BoschのINTEGRUSポケット受信機(右)とJBL Tour Pro3
Auracastの使用法は液晶ケースの画面をフリックしてBluetoothマークの表示されている画面に持ってきます。そこで「追加」ボタンを押下すると最下部に三角のAuracastのロゴが表示されます。これを押下すると少しの同期する時間の後に会場にブロードキャストされているAuracastチャンネルの一覧が現れます。ちなみに正確にいうと「Auracastチャンネル」は私が便宜的に使用している名称で、Auracast送信機がブロードキャストしているAdvertise情報の一覧です。
Tour Pro3の画面。一番下のロゴがAuracastロゴで、これを押下すると同期ができる
ここには隣の部屋のデモも合わせて複数のチャンネルが表示されますが、その中の"Japanese"(日本語音声)と"English"(英語音声)の二つがセミナーのチャンネルです。これを選択するとTour Pro3から日本語または英語の音声が流れてきます。
BoschのINTEGRUSの音声は中域に特化した昔の電話のような音質ですが、Tour Pro3は高域寄りの鮮明な音質です。もちろんTour Pro3のANC機能を使って会場の背景ノイズを消すことが可能です。
Auracastの音声はやや途切れがちですが、これはなんの影響かはわかりません。もしかするとWi-Fi機器が多いので2.4G帯干渉によるものかもしれません。(BoschのINTEGRUSが赤外線を使用しているのは2.4G帯干渉を避けるため)
セミナーで実際にAuracastで聴講。Englishは英語音声チャンネル
実際にAuracastで聴講してみて気がついたのは、Tour Pro3の液晶ケースで音量調整ができることが便利だということです。なぜかというと、Auracast使用中はスマホとはコントロールが切断されてるので、スマホで音量は変えられません。イヤフォンでもボリュームは変えられますが、方法が機種によって違うので使用に難があります。液晶ケースで音量調整できると便利ですね。
この状況でiPhoneのJBLアプリを開くとBluetoothソースリストにAuracastのチャンネルも表示されます。スマホとはコントロールは切断されていますが、セッション自体は維持していて、Auraacastを終了して通常のBluetooth(ここではクラシックBluetooth)に戻っても再接続やペアリングをし直す必要はありません、
展示会場ではAuracast experienceと似たAuracastのデモが行われていましたが、このAuracast送信機は中国のtelink製でUSBドングルに実装されています。
Tour Pro3ではチャンネルにB23 Gate(空港ゲート案内)とTV1(スポーツバーのデモ、バスケの試合)を選んで聴くことができました。この会場では音声の途切れはありません。
TV1チャンネルでバスケの試合観戦、右はTelinkの送信機
Philewebの記事に書いた東芝情報システムも出展していて、同時通訳システムのデモをしていました。ここでも自分のTour Pro3で再度試してみました。
またCEarではパヴェでいち早くAuracastを取り入れてCEar Fieldとして独自展開していましたが、その送信機のみの機能を持つ機器を展示していました。これは3.5mmアナログ端子を備えていて、TVなどの音声をCEar Filedで飛ばせます。Privateモードでパヴェ専用ですが、通常のAuracastでの送信もできるようです。
価格は11,000円で年末に発売されるようです。
パヴェ・送信専用モデル
今回は実際にJBL Tour Pro3を用いてAuracastを実際に試せましたが、たしかに自分のイヤフォンを持ってセミナーを聞きに行くというのはちょっとした未来体験でした。ANCなどの機能を合わせることができ、工夫すればさらに音質も改善できるでしょう。
一方でセミナーでの音質や途切れの問題など、課題もいくつかあるように思います。しかしBoschのシステムではこちらでは何もできませんが、自前のイヤフォンならイコライザーの調整など調整手段もあります。
また会場ではSTマイクロ(セミナー)、ノルディック(東芝情報システム)、Telink(Auracast Experienceデモ)、クアルコム(パヴェ)など様々な種類の送信機が使われていました。それぞれチップ型やマイコン型などいろいろと実装の方式や柔軟性が異なり、アナログ入力やドングル型など様々な応用ができます。これらの多様な機器の組み合わせで、これまでのスマホとTWSの組み合わせよりもより柔軟なBluetoothオーディオの可能性が見えてくるのかもしれないとも思います。
Music TO GO!
2024年10月31日
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