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2024年07月20日

L&Pの新たなフラッグシップシリーズ「E7 4497」PREMIUMレビュー

8月にLUXURY&PRECISIONの新しいDAP「E7 4497」が登場する。限定モデルを除き、L&Pの新DAPとしては5年ぶりの注目製品となる。全世界499台限定で、E7 4497 PREMIUMとE7 4497 STANDARDの二つのモデルがあり、搭載しているDACチップは同じですが、PREMIUM版はDACチップの選別品を使用しています。
発売日は2024年8月17日ですが、すでにPREMIUM版は5月17日からフジヤさんで販売しています。本稿ではPREMIUM版を借りてレビューしています。

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E7 4497とAK ZERO2

* 特徴

LUXURY&PRECISIONというと、うちのブログではたくさん扱ってきましたし、HeadFiなど海外フォーラムを見ている人にもおなじみのブランドです。このブランドは、AMDのチップ開発に携わったエンジニアや「COLORFLY C4」の開発者たちによって、2014年に中国で創立されました。
今回LUXURY&PRECISIONは新たにEシリーズを立ち上げていくというのが一つのポイントで、「E7 4497」のPREMIUMとSTANDARDが最初のEシリーズとなります。Eシリーズは「L&Pフラッグシップの原点」に立ち返るというスローガンの元に開発され、EはECONOMY(経済性)や、EXCHANGE(交換)の意味を有しています。これはモジュール交換機構を備えることで、将来的な新技術や新DACチップに素早く対応できるという意味合いを含んでいます。
このモジュール着脱機構は他の取り外し可能なDAPよりも取り外し可能な基盤面積が広いのが特徴で、モジュール基盤にはヘッドフォン端子などのパーツは含まれていません。重量は300グラムと比較的軽量かつコンパクトですが、交換基盤にしたのでL6よりは大きくなっているとのこと。

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「E7 4497」の名の由来はDACチップにAKM AK4497をデュアルで使用しているということです。AK4497はLINNのKLIMAX DS/3などにも使われたチップで、ポータブル向けのICではなく据え置き機材にも採用されるようなハイエンドDACチップです。
LUXURY&PRECISIONによると、AK4497チップは、AKMのフラッグシップチップの中で最もバランスが取れており、聴感も優れて電力消費が少ないことなどポータブル機器との相性が最適とのことです。ポータブル機器との相性が良いということの一つには現在のAKMフラッグシップのAK4499が電流出力であるのに対し、AK4497は電圧出力であることが挙げられます。オーディオ機器では最終的に信号として電圧が必要なので、電圧出力であるAK4497は電圧変換のためのI/V回路が不要であるという特徴があるからです。
またもう一つの「E7 4497」の特徴はAK4497の選別品を使用しているということです。AK4497はチップのばらつきが大きく、データシート上のTHD+Nの代表値は-116dBですが、最低値は-108dBにまで下振れすることがあり、選別品を使用することで公称性能を4dB上回る性能を得たということです。

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DAPとしての基本ソフトウエアにはLE OSという新しい独自開発のOSを搭載しています。これは可能な限り小型で軽量に設計したというもので、軽量なので音質に寄与するというだけではなく、デジタル部の電力よりもアナログ部分により多くの電力を割り当てるという「E7 4497」の開発方針が反映されたものでもあります。
またPREMIUM版ではFPGAを活かしたLP Tuneという音質変更モードがあり、これは普通のイコライザーとは再現性、聴感の差異、原理が完全に異なるということです。LP Tuneには3つのモードがあり、「High Dynamic」は華やかでエネルギッシュ、「Harmonic Tune」では柔らかな温かみ、「Low Distortion」は標準の低歪みモードと切り替えて使うことができます。STANDARD版では「Low Distortion」のみとなります。

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LP Tune比較図

回路部分ではLPFオペアンプ電圧調整機能というユニークな試みがあり、これはダイナミックドライバーや、BAドライバー、ハイブリッドなど各種ドライバーがLPFオペアンプの電圧に対して異なる感度を持つことがわかったということが開発のきっかけだったということです。固定電圧では「このイヤホンでは良いが、あのイヤホンではダメだ」という現象が起こってしまうので、E7は広範囲で0.1V刻みの細かい電圧調整ができるように設計し、調整と試聴を通じて様々なイヤホンの特性を最適に引き出すことができるようにしたとのことです。

また「E7 4497」ではWi-Fiが搭載されていないので直接ストリーミングを再生することはできませんが、その代わりにBluetoothレシーバー機能を凝ったものにするというアプローチが行われています。コーデックはaptX、aptX HD、aptX LL、そしてAACとSBCに対応しています。
ちなみに「E7 4497」では内蔵メモリはなく、外付けのMicroSDカードに音源を格納します。

* インプレッション

デザインはL&Pらしくメタリックで鋭角的なデザインで、装着していた革製のケースを外すとブラックのシャープな造形のシャーシが現れます。サイズ的には片手で持てるので、フラッグシップモデルとしてはそう大きくはないように思う。側面に凹みがあるのがユニークで、持った時の指かかりになっています。

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ちなみに写真の革製ケースは今後発売を予定している別売り品で、フジヤエービックの発売分にはプレゼント品として同梱されているものだということです。

底面にはビスが見えて交換が可能であることを示しています。どちらかというと頻繁にモジュールを差し替えて機能を変えるような目的ではなく、アップグレードのためなのですぐには外せないけれども、確実に固定できるような方式となっていると思います。

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E7 4497とWhite Tiger

ボリュームにはガードがデザインされ、ノブを回すとカチカチと適度なクリック感があります。

電源ボタンを押下してからのブート時間はロゴ表示後までほぼ8秒でAndroid系より早いですね。電源オフのたち下げは瞬時です。

画面は質実剛健というかシンプルなデザインで、これも軽量OSという感じで音質優先ということがわかります。
基本的には音楽画面と設定画面のタブを切り替えるだけで音楽画面も最小限のデザインですが、画面をフリックするとVUメーターが現れ、ボリューム表示もグラフィカルでわかりやすいなど凝った点もあります。

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ちなみにグラフィックのボリューム表示のホイールは一周以上回るので、一周で音量が足りないと思ってはいけません。ボリューム表示のホイールは指でなぞってクルクル回すことができますが、これは細かい音量の調整がしやすく便利です。
液晶表示は鮮明で色は鮮やかに感じられます。画面を横にフリックするとVUメーターが現れ、音源のサンプリングレートの表示も行われます。

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VUメーター表示モード

音源はexFATのMicroSDカードを使用し、カードの直下に音源を格納して再生しました。ちなみに音源の格納はMicroSDカードのみです。カードを挿入したらメディアライブラリの更新を行うと音源が反映されます。

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E7 4497とqdc White Tiger

まずqdc White Tigerで聴いた。ゲイン位置はLowですが、ボリューム調整がとても細かく行えるので高感度IEMでも使いやすいと思う。
音は解像力がとても高く、細かい音がよく聞こえる割には子音の音のキツさなどがほとんどないのは、とてもよくチューニングされた音であり、高級オーディオ機器のような高品質な音を感じます。
従来のL&Pに比べても硬質感が抑えめで滑らかでスムーズな音だと思います。音調はやや温かみがあるニュートラルで、低音や高音の誇張感はないです。
ジャズヴォーカルでの女性の声が艶やかでかつ滑らか、囁くような小さな声から叫ぶ声までスムーズに再現されます。楽器音や声質に厚みがあって、豊かな音楽を奏でる感じです。
全体的に音が上質でよく調整された感じがします。

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E7 4497とDITA Perpetua

イヤフォンをダイナミックイヤフォンの最高峰であるDITA Perpetuaに変えるとダイナミックらしく力強く鳴らしてくれ、E7がパワーもあることが分かります。マルチBAでは繊細さがよくわかったが、Perpetuaでは力感と解像力の高さがよく両立している感じですね。
上原ひろみのジャズのようにスピード感あふれる曲もスムーズでかつパワフルに鳴らしてくれます。AK4497らしく解像力が高く、ウッドベースでは細かな鳴りや響きをよく表現します。叩きつけるようなドラムスやパーカッションでも歪み感が少なく、打撃力の強さと切れ味の良さをよく伝えてくれます。おそらく電源なども強力だと思いますが、E7 4497は基礎体力というか基本性能が高いDAPと言えます。
DSDネイティブ再生だけではなく、PCM音源を聴いても音が滑らかでキツさが少ないのは全体的に上質な回路設計がなされていることを窺わせます。この辺は上級機ならではの良さがよく出ているところです。

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E7 4497とAK ZERO2

ハイブリッドのAK ZERO02を使うと、中域から高音域にかけてはバロックバイオリンが倍音豊かになる音もよく再現されて厚みがあり、音色の美しさがよくわかります。これはZERO2の高音域のプラナーとピエゾドライバーが活き活きと動いているようです。低音ではダイナミックドライバーらしいたっぷりとした低音が楽しめます。
消え入りそうになるヴォーカルの歌唱の表現も解像感高く、艶やかに描き出す点はなかなか心地よく見事だと思います。

このようにマルチBAやハイブリッドなどさまざまな形式、さまざまなタイプのドライバーのイヤフォンで聴いていくとE7 4497がイヤフォンの適応範囲が広く苦手なイヤフォンがないという印象を受けます。マルチBAはマルチBAらしく、シングルダイナミックドライバーはシングルダイナミックらしく、ハイブリッドもハイブリッドらしいサウンドで高品質に楽しむことができます。

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E7 4497とDITA Perpetua

次にBluetoothレシーバーのモードを試してみるとiPhoneで簡単にペアリングできました。
iPhoneからAAC での接続ですがBluetoothでの音も極めて高いと思う。これまで書いてきたような厚みがあるオーディオらしい音がワイヤレスでも十分に楽しめます。内蔵音源とそう遜色ないというと言い過ぎだが、たぶん聴いていて不満を持つことは少ないと思う。かなり高品質なBuetooth回路が搭載されていると思う。
E7 4497にはストリーミング機能は内蔵されていないので、 ストリーミングを楽しむ時にはスマホでストリーミングを再生してBluetoothでE7 4497に送って楽しむということが想定されてよく考えられています。

まとめ

E7 4497は基本的には原音忠実に音源をよく再現するDAPですが、いわゆるモニター的な味気ない音ではなく適度な温かみと滑らかさで音楽的な心地よさもよく表現していると思います。音の細かさも低音のパンチも必要な時に必要なだけ出てくる感じして、そこがチューニングがよくなされている音だと感じます。カタログに基板の設計改良を重ねたように記されている気持ちがわかります。

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開発での設計改良

高性能機というとシャープだがきつい音になることも多いが、E7 4499は良い音を長時間聴いていられるDAPだと思う。
DACが強力なだけではなく、アンプも力強くかつイヤフォンに適切に出力を出し電源も強力と、全ての回路がバランスよく性能が高いフラッグシップらしい完成度の高いDAPです。
E7 4497は様々な種類のハイエンドイヤフォンを使いこなしたいという上級者に向いているDAPです。

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E7 4497とDITA Perpetua
posted by ささき at 08:01 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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