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2024年07月16日

分厚くダイナミックな音の個性派イヤフォン「iBasso 3T-154 」

iBasso 3T-154はiBasso Audioの個性的なシングルダイナミックイヤフォンです。使用されている技術、出音、アクセサリーの全てにわたって個性的なのがポイントです。現状で市場価格が20,750円程度と求めやすい価格帯でもあります。

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特徴

3T-154という名前はそのまま特徴を表していて、3T-154の3Tとは磁気回路が強力で3T(テラ)もの磁束密度を実現していることをしめしています。これまでは1Tあると強力と言われていましたから、3Tというのはかなり強大なマグネットが使われていることになります。これは振動板を動かす力が優れているということです。

ダイヤフラム.jpeg

また154というのは振動版の口径が15.4mmあることを示しています。普通は10mmを超えると大口径と言いますので、15.4mmというのは超大口径です。また口径に比較するとかなりコンパクトに設計したということです。以前ソニーに16mmの振動板を搭載したXBA-Z5やMDR-EX1000というモデルがありましたが、これは振動板が大きいので傾けたレイアウトを採用していましたので、大口径イヤフォンの設計が難しいことがわかります。15.4mmの3T-154が普通のイヤフォンのように設計されているのは特筆ものといえるでしょう。12mmダイヤフラムを採用したドライバーユニットと比較した際に、ユニットサイズが65%で済んでいるということです。
振動板が大口径だと迫力がありそうなのは直感的にも想像はつきますが、実は大口径だと振動版の移動距離が短くて済むので歪みも低減できるという側面もあります。ただし振動板が大きい場合にはその面積が広いため、動かすためにより多くのエネルギーが必要となります。そこで3T-154では3T(テスラ)というマグネットを組み合わせているのでしょう。

内部図解.jpeg

振動板はベリリウムメッキが表面に施されています。また3T-154は大柄ですが、シェルは軽量なマグネシウム合金で片側9gと軽量に設計されています。
ケーブルとは2ピン端子でリケーブルが可能です。面白いのはプレーヤー側の端子が3.5mmと4.4mmで交換可能なのですが、これがビス留めされていることです。これは普通よりも太い端子を使用しているので確実に固定するためのようです。

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3T-154はシルバーとブラックの2色展開。付属品が豊富です。特にイヤーピースはシリコン4種類(各3サイズ)、フォーム1種類(2サイズ)が標準で添付されています。またノズルが着脱可能で、スペアノズルまで添付されています。

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インプレッション

イヤフォン本体は大きめですが意外と軽く、耳にはめてしまうとそれほど違和感は感じられません。ただしシェルが大柄なので女性や耳の小さい人は店で試した方が良いかもしれません。
ケーブルはしなやかでタッチノイズ等はあまりありません。太い割には使いやすいケーブルです。イヤフォン端子もかなりごつい大きなものですが、これも不都合を感じるケースはあまりないでしょう。4.4mmと3.5mmの交換式プラグはビスで締め付けるので確実ですが、ビスが小さいので気を使ってしまいます。

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添付のケース

まず標準チップの柔らかいシリコンで聞いてみます。チップ別の音質変化については後で触れます。
3T-152はとても第一印象が独特で、あまり聴いたことがないくらい低音が分厚く重い音です。迫力があって音場も広いと感じられます。バスドラとベースギターは低音のアタックが腹にくるほど半端ないほど響きます。ロック、ポップにはとても相性が良く、音にやや暖かみがあるのが過激な音を聞きやすくしています。
一方で少し聞き込むと、それでいて中高域もしっかりとしています。意外とヴォーカルに大きく被らないのも良いと感じます。多少は被りますが、第一印象の低音の重さから思っているほどではありません。この辺が単なるベースヘッドの低価格機とも異なっていて、歌詞もわりとよく聴こえます。ポップの歌ものも良いと思えますね。楽器音も鮮明でクリアに聞こえます。ハイエンド機に比べると荒さは残っていますが悪くありません。BA機のように整っているわけではないですが、シャープに感じられます。
ロックポップ向けではあるが、音が骨太で空間に太いペンで音像を書いたような独特のサウンドで静かな器楽曲を聴いても意外と鮮明な音で悪くない。


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A&K SR35と3T-154

分厚く太い音ですが、曖昧さという意味での甘さは少なく、大口径振動板ででかい音が出るけれどもそれを3T(テスラ)の強力マグネットでグイグイとコントロールする感じですね。ただし打撃感はやや甘く出ることがあるのでパワーのあるアンプを使うのがおすすめです。
例えばAstell & Kern KANNシリーズや同じiBassoのスティックDACであるDC-Eliteです。KANN Ultraで聞くと余裕のある音空間が楽しめ、パワー感と共に音の広がりも堪能できます。

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DC-Eliteと3T-154

またスティックDACにしてはパワーのあるDC-Eliteと組み合わせると、メタルのドドドドドとかダガダガダガダガというドラムロールがあまり聴いたことがないくらい激しく打ち付けられ、破壊力と言って良いほどでちょっとクセになるほどです。またDC-Eliteの搭載するローム社のDACは音楽志向で柔らかな聴きやすさがあるので、メタルでもあまりキツくならないと言うことで良い組み合わせといえます。
A&K SR35で聴く時はハイゲインモードにして聴くとパワフルな音になって良いです。個性ある音だが鳴らすにはそれなりに必要です。やはりパワーが必要なので4.4mmバランスで聴くのがベストです。

各チップの相性

3T-154にはイヤーチップがたくさん付属してくるのが特徴です。特徴的な音なので個人的には標準チップで少し聞き込んだ方が良いと思いますが、慣れてきたらイヤーチップを変えてみると個性あふれるサウンドにあった音傾向を見つけられるかもしれません。

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白いシリコンチップ
標準チップよりも少し音が明るく、音がややシャープになります。少し抜ける感じで、女性ヴォーカルやポップスに良いと思います。

黒いフォームチップ
より低音が強く出るようになりますが、一方で高域も十分シャープで悪くありません。

濃い青のシリコンチップ
より中高域が伸びるようになり、少し低域を抑えたい時に使うと良いと思います。

黒の硬いシリコンチップ
標準よりは低域が抑えられますが、少し超低域が出にくくなります。音傾向は標準と似ていますが、耳の相性で選ぶと良いと思います。

柔らかい黒いシリコンチップ
他のシリコンチップと音傾向は似ていますが、低音の出方が硬いシリコンと標準の中間くらいです。


まとめ

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3T-154は他にない個性が楽しめるユニークなイヤフォンです。A&K KANNのパワフルさはマルチBAなどではもてあましてしまうんですが、こうしたパワーを要求するイヤフォンにはよく適合します。
3T-154は安価ではありますが、しっかりとしたアンプやスティックDACを使ってきちんと鳴らし込んでユニークな音を楽しむことができます。高音質でちょっと変わった個性のイヤフォンが欲しいというユーザーにおすすめです。

posted by ささき at 09:23 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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