代理店アユートの製品ページはこちらです。カスタム版は既に受注開始で、ユニバーサル版は本日4月21日から販売開始です。
https://www.aiuto-jp.co.jp/information/entry_1817.php
価格はユニバーサル版が税込66,000円、カスタム版は税込79,200円とハイエンド機にしてはお手頃な価格です。

* 特徴
特徴としてはまずqdcで初めて平面ドライバーを使用したということで、超高音域に平面型ドライバーが使われ、中高音域にBAドライバー、低域にダイナミックドライバーが使用されています。周波数レスポンスは10 Hz-40000 Hzとかなり広く再現が可能のようです。


ホームページのドライバー構成図をみると平面ドライバーはダイナミックと同軸配置されているようです。(図はイメージとのこと)
この辺も位相の良さの理由なのかもしれません。

もう一つの特徴はFolkが名の通りにフォークソング(民族音楽)をターゲットに開発されたということです。これは実際のある音楽グループのためのものが端緒になったようです。Folkでは特にヴォーカル域に重点を置いたようで、qdcによると向いている音楽はジャズ、フォークソング、室内楽とされています。

そしてフェイスプレートがとても美しくデザインされていることで、これは開発が始まった秋をイメージしているようです。ユニバーサル版のフェイスプレートにはゴールデン・メープルの意匠が施されています。ちなみに英語での紅葉・黄葉はゴールデンで形容されることが多いです。
標準ケーブルにはTIGERなどと同様に端子の差し替えで3.5mm/2.5mmバランス/4.4mmバランスが選べる仕様です。線材は銀コート銅線のようです。
* インプレッション
パッケージは竹製の箱が使われて、布製のケースと共にフォークという名の温もりを感じさせます。小箱にはイヤーピースが入っています。イヤーピースはダブルフランジとシングルフランジのシリコンタイプがニ種類入っています。TIGERではダブルフランジが良かったんですが、Folkではシングルタイプを使用しました。



Folkは美しく、コンパクトなユニバーサルIEMです。フェイスプレートのゴールデンメープルもシェルの色によく映えています。小さいのは3ドライバーのみの利点でコンパクトで耳に入れやすい。表面には特徴的なメッシュ状のベントホールがありますが、このベントホールは他と違いベントした空気が後室から流れ出して緩衝作用があるため、低音の響きを調整できるということです。

Folkの音をA&K SP3000で聞いてみると、ちょっと聞いてすぐわかるくらい個性的な音で、広がりがあって鮮明な楽器音が楽しめます。やや暖かみがあるのも特徴です。能率は中程度くらい。
Folkは楽器の音色が驚くほど美しく、美音系と言っても良いと思います。バロックバイオリンみたいな古楽器のように倍音がたっぷりあると、音楽に厚みが乗って豊かになり、弦の擦れる音が極めて美しく楽しめます。バロックバイオリンがあまり気持ちよかったのでもう一回聞き返したくらい、癖になるようなサウンドです。もちろん声も良いです。特に女性の声が甘くて甘美ですね。前に出て、声が音楽の中心にあるように聞こえます。


楽器の音や声の輪郭が鮮明なのは平面型をスーパーツイーターのように使用した効果ではないかと思います。音場感も良いのですが、これはドライバーのまとめ方が良くて位相特性も優れているように思えます。
低音域は少し多めくらいでちょうど良い感じです。低域もタイトで良く、超低域もけっこうあります。Folkの名のように土俗的なパーカッションの打撃感が楽しめると思いますが、ジャズやロックのドラムスなどでも軽快でスピード感があります。民族音楽のみに向いたIEMというだけでもなく、わりと万能に使えます。
それはqdc TWXと組み合わせた時にイコライザーを使用することでさらに万能性を広げられると思います。TWXとFolkはとても相性が良よい組み合わせです。TWXのイコライザーと組み合わせて、Folkの強みを伸ばすようにも、少し味付けをますこともできます。



解像力も高くて、背景にあるこまかな擦れる音やかすかな物音もよく聞こえます。それが多重的な立体感を産んでいます。SP3000のような高SN解像力モンスターでも十分再現できる能力を持ってこの値段だとかなりコスパがいいと言わざるを得ないと思う。性能が高い味系という感じなので、SP2000Tの真空管モードともとても相性がいい。
全体的にマルチドライバー機というよりは質の良いシングル機を効いているようなまとまりの良さがあります。
* Folkとフォークソング
名の通りフォークソングを聞くためにアイリッシュ音楽研究家である、おおしまゆたか氏のアイルランド音楽本の付属CDを聞いてみました。
民族楽器のアイリッシュホイッスルの音が素朴な音色に温かみがのって朗々と鳴り、深みがあると同時にシンプルで素朴な民族音楽という感じを味わえます。解像力も高いのでこうしたアコースティック楽器の音色がダイレクトに伝わってきます。長いこと使われて擦り切れたような楽器の質感が伝わるような感じです。
女性の声も温もりがあって冷たい感じがしないのもポイントです。土の温もりが伝わってきて、大地と太陽と風を歌い上げているのがよく伝わってきます。
こうした古い音楽ではいくつかのテンポの違う曲がつながってメドレーのようにセットとして演奏されることも多いんですが、曲調が一曲の演奏中にがらっと変わってもテンポ良く鳴らし切ってしまう力もあります。民族音楽はおとなしく退屈なわけではなく、祭りのときに踊るためのリールやジグと呼ばれるようなダンス曲でもとてもハイスピードで軽快にノレる音楽として楽しませてくれます。
実際に民族音楽をターゲットにしただけあって、こうした音楽にはとても向いていると思います。
* まとめ
qdcというとプロ向けというイメージがあってTIGERの音はよくわかるのですが、Folkはプロメーカーとしては挑戦的なほど個性的で音楽的なサウンドです。モニター系ではなく、味系で良い意味での着色感があります。全体的に暖かみがあって滑らかだけど、鮮明に聞こえるのは基本性能の高さも伺えます。実際にFolkは音楽系という他にとてもコスパの良いIEMという面もあると思います。Folkが向いているのは小編成で楽器の音色や声の美しさを楽しむ音楽ですが、基本性能が高いので万能性もあります。
暖かみがあって音楽的で美しい、qdcのプロ用というイメージからはFolkは挑戦的なイヤフォンに思えます。でも素朴な民族音楽グループの再生に特化させたという意味ではやはりプロ用と言えるかもしれません。Folkは個性的でかつ性能が高くコスパに大変優れたIEMと言えると思います。