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2022年05月30日

DITA audio 10周年モデル Perpetuaレビュー

DITA audio PerpetuaはDITA 10周年を記念する製品であり、新しい世代の始まりの製品でもあります。Perpetuaは筐体・ドライバー・内部配線・ケーブル・プラグまで一新された新しいフラッグシップイヤフオンです。国内では糸竹管弦を経ているようにも思えますが、直接的にはDream XLSの後継となります。

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Perpetuaは先行販売と一般販売に分かれます。先行販売はDITA公式ストアおよびfinal STOREフジヤエービックにて6月10日から開始されます。一般販売はその他の店で6月24日から開始されます。価格は428,000円(税込)の予定です。

* はじまり

先日のヘッドフォン祭におけるPerpetuaの発表会で、CEOダニー氏が語ったように全ては10年前から始まりました。
わたしが10年前のヘッドフォン祭(当時は青山)でうろうろしていたところ、HeadFi仲間から紹介したいイヤフオンがあると呼び出されて、そこに行ってみると数人のシンガポールから来たグループがいました。そこではじめてダニー氏と会ったわけです。デモ機を持参していましたのでその場で試してみました。
こうしたことはよくあって、私も責任があるのでうかつに国内紹介できないわけで慎重にしてはいました。DITAについては当時はあまりないようなその強気の価格設定にも驚きましたが、聴いてみると先鋭的でカチッとした精巧な音で、当時はまだ少なかったような本格的なサウンドに感銘を受けました。これは自分自身も欲しかった音で、マニアが欲しくなるようなサウンドだと思いました。そこで次のヘッドフォン祭に参加できるように尽力したというわけです。まず日本から成功させたいという情熱も良かったですね。

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* Perpetua

Perpetua(永遠)に関してダニー氏は日比谷公園で美味しいトマトを食べながら、天啓的に音楽は技術だけではなく情感(emotion)が大事であると感じたそうです。そのためPerpetuaは10周年記念として技術的な進歩も大事だが、一方で情感がきちんと込められる製品にしたということ。技術的には悩みながらも決定した12mmの新型ドライバーがポイントで、直径にすると2mmの差ですが65%も振動板面積が広いとのこと。振動板にはDream XSでの複合術から、帝人の「TEONEX」という優れた強度特性をもつ特殊樹脂を新たに採用。
内部配線も新たに近藤オーディオノートジャパンの純度99.99%の純銀線を使用しています。
そしてPerpetuaはいままで作ったDITAのイヤフォンで最も左右の周波数特性マッチがタイトであるとのこと。
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標準ケーブルも新規に設計され、信号経路は導体に高純度無酸素銅(PCOCC)を使用して芯線に6mmピッチで線材を巻き付ける特別仕様のコイル構造を採用した「コイル/オーバー」ケーブルが採用されています。
イヤフォン側端子はユニバーサル2ピン対応で、プレーヤー側端子はAwesome Plugの改良版である第2世代を採用しています。より強度が高く、太いケーブルに合わせて設計されています。
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独特の丸みを帯びた筐体は軽量で高剛性のチタン筐体を採用。ロゴはサファイアガラス。
有機的で耳にフィットする人間工学に基づいた筐体形状
黒とシルバーにしたのは原点回帰を含んでいるということです。

キャリングケースには高い質感と使い心地に優れたイタリアンレザーを使用し、また蓋が空気圧でゆっくりと閉まるように計算して設計されたこだわりのキャニスターケース(アルミ切削加工)も付属している。

* インプレッション

Perpetuaのテーマであるエモーションはパッケージから感じられます。外箱は特徴的な引いて開けるタブが設けられていて、開けると10 years of DITAと表示が出てきます。
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なにか古い旅行カバンを思わせる内箱にはポストカードが何枚も収納されています。中には空気圧でゆっくりと開け閉めできるキャニスターケースにイヤフオンが格納されており、レザーケースは工業製品的なファスナーではなく手作り工芸品を思わせるはめ込みボタンで留めるのも懐かしい感覚です。このようにパッケージからPerpetuaは「感触・感覚」をテーマにして作られているのがわかります。

イヤフオン本体を出してみるとさらにその「感触・感覚」が伝わるような独特の丸みを帯びた筐体や独特のデザインのケーブルに感じ入ってしまいます。ケーブルは太いのですが柔らかく取り回しには特に不自由はありません。

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DITA PerpetuaはTruthからDreamへの先鋭的な進化路線とは異なる滑らかで柔らかく暖かみのある広大なサウンドが感じられます。まるでヘッドフォンが耳に入ってるかのようです。もちろん従来からの細かな音の鮮明さもその音世界の中で際立っています。
音の滑らかさはTwinsからProject71を経て進歩してきたと思います。ケーブルの影響も大きいように思いますが、かなり標準ケーブルの質がいい。
音の系統でいうと振動板がA8000系だった糸竹管弦とも異なる個性的な音です。

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またPerpetuaは音の滑らかさもさることながら、予想を超えるところから音が出てくるような立体感も特徴的です。これはダニー氏が発表会で語ったような、今まででもっとも左右の特性マッチングがタイトであるという点も効いてるんでしょう。

Perpetuaでは音の滑らかさや広がりだけでなく、説明しにくいけど迫りくるような音の迫力というかパワー感に圧倒されます。JBLのスピーカー的というか、やはり65%広いという12mmの新しい振動板の面積がより広いので空気が多く動いている感じです。これで自然だけども聴いたことないような独特な迫力と躍動感があるように思います。

滑らかで広大で迫力あるというと味系というかまったりとした鳴りのイヤフォンの特徴にも聞こえるかもしれませんが、PerpetuaのすごいところはそれをDream並みの解像感、先鋭さと併せ持ってるところです。それがダニー氏が発表会で語ったテクニカルとエモーションの両立ということだと思う。

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SP2000TとPerpetua

機材との相性でいうと、PerpetuaはA&K SP2000Tのチューブモードと合わせるとポタオデとは思えないような高品質かつ滑らかで豊かな音が楽しめます。ハイエンドスピーカーオーディオのミニチュア版が耳に入ってる感じで、聴いて心地よく情感(ダニーの言うエモーション)が感じられます。きわめてリアルで音楽的なサウンドです。
ほかにはACRO CA1000と相性がいい。やはり音の広がり感の良さですね。家で楽しむのにも良い。

これを書いている時もPerpetuaで聞いているのですが、時折キーを叩く手を止めて音楽に聞き入りたくなります。アメリカの現代音楽ユニット、Bang on a canのSteel Hammerを聞くと声や楽器の音色がリアルでかつ厚みがあり音楽の躍動感が感じられます。Steel Hammerは現代音楽だけれども決して冷めた音楽ではないことを教えてくれますが、同様にPerpetuaもテクニカルとエモーショナルは相反する物ではないことを教えてくれます。
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開発の時に掲げたテクニカルとエモーションの調和というPerpetuaのテーマは十分に達成されていると思いますし、完成度が高く、節目にして到達点という感じさえします。それがPerpetuaです。
posted by ささき at 13:38 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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