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2022年06月07日

HIFIMANのコンパクトなハイパワーヘッドフォンアンプ、EF400レビュー

HIFIMAN EF400は据え置きのDAC内蔵型ヘッドフオンアンプです。
EF400の特徴はDACにHIFIMAN独自のヒマラヤDACを採用している点、完全バランス構成、ハイパワー出力、デスクトップに置けるコンパクトなどが挙げられます。つまり強力なヘッドフォンアンプをデスクトップサイズにコンパクトにまとめたものがEF400です。
6月10日に発売開始、価格は85,800円(税込み)です。

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* 特徴

平面磁界型ヘッドフォンは最近は高能率化してきましたが、やはり鳴らすためにはハイパワーアンプが必要です。
平面型ヘッドフォンのパイオニアでもあるHIFIMANは平面型の鳴らしにくさを知っていたので、10年も前の2012年に平面型のためにハイパワーを生み出す強力なヘッドフォンアンプであるEF6を発表しています。
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私も一時EF6を使用していました。たしかにヘッドフォン史上もっとも能率が低いような平面型のHE6でも鳴らしきるようなハイパワーだったのですが、EF6は大型のスピーカーオーディオ機材のような、とても大きくて重くて扱いにくいアンプでした。
その能力を引き継いでコンパクトに扱いやすくし、バランス対応でさらに高出力化を図って、最新のヒマラヤDACを搭載するヘッドフォンアンプの新製品がEF400と言えます。

ヒマラヤDACはFPGAを核にしたDACで、マルチビット形式とも言われるR2R形式と低消費電力という点がポイントです。性能ではマルチビットDACの代表であるPCM1704と互角で消費電力が1/20というのがヒマラヤDACです。
R2R形式を特徴としていますので、デジタル臭さの少ないオーディオらしい豊かな音を可能にすることができ、低消費電力なのでさまざまな製品に応用ができます。Blueminiではポータブルの応用でしたが、EF400ではそのコンパクトさに貢献しています。

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コンパクトなEF400ですが持ってみるとけっこう重たく、中身は図のように大変に本格的な設計がなされています。
OFC巻線トロイダルトランスがあり、3万マイクロファラッドの大容量コンデンサーと大出力のアンプ回路を搭載しています。それに加えてヒマラヤDACモジュールが搭載されています。

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EF400のアンプ回路は4チャンネルでAB級増幅のフルバランスの設計がなされています。そして4.4Wというヘッドフォンアンプとしては驚くような大出力を実現しています。一般にヘッドフォンアンプでは1Wくらいの出力でハイパワーといわれると思います。ちなみにEF6ではシングルエンドで5Wの出力でした。

EF400は接続性や機能性にも優れています。
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前面左の4段スイッチによりゲイン切り替えだけではなく、NOS(ノンオーバーサンプリング)やオーバーサンプリングなどDAC設定の調整ができます。NOSはマルチビットDACとよく組み合わせられますが、DAC内部でSNを高めるためのオーバーサンプリング処理をしない方式です。その分で本来ノイズのデータを捨てないでそのまま使うので「味がある」音になると言われます。実際に使うとOSモードだとすっきりして現代風、NOSモードだともやっとした感はあるが暖かみがあっていわゆる真空管風の音になります。長短ありますが音の差もわかりやすくマルチビットDACらしい機能といえます。
(ちなみにオーバーサンプリングとアップサンプリングは別の話です)

また通常の標準ヘッドフォン端子に加えて4.4mmのバランスとXLRキヤノン端子の4ピンバランス端子も装備しています。ヘッドフォン接続は豊富です。
USBデジタル入力の他にもXLR端子やRCA端子などの出力端子もあるのでプリアンプとしても使用できるでしょう。入力はデジタルのみでUSB-CあるいはUSB-B(フル)です。

EF400のスペックは以下の通り
SN比:Aウエイトで118dB
全高調波歪み(THD):ラインアウトで 0.002%〜0.004%
チャンネルセパレーション: 125dB
最大出力:4.4W/ch


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* インプレッション

MacbookからUSB-Cケーブルで接続して聞きました。あまり熱くならないので上に乗せてもいいくらいで机においてもいいかもしれないですね。横に立てておいてもよいでしょう。

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音はニュートラルで色つけが少ないHIFI調の音で、誇張感も少ない方だと思います。音調自体はたしかにDACが同じBlueminiと似ています。ただし音のレベルはより高いので、アンプ性能をより引き出せている感じです。これはバランスで使用するとより強く感じます。かなり細かい音が聞こえるのでDACの解像力も十分に高いと思います。低音のパンチが気持ち良く、楽器音の歯切れも素晴らしくスピード感に溢れています。音の立体感も良いですね。
ちなみにOSモードだと普通にすっきりと良い音、NOSだと少しもやっとしますがより滑らかで角の取れたアナログ風の味のある音になります。

そしてやはりポイントはとても力感があって力強さを感じられるサウンドだということです。
ヘッドフォンは私が所持しているAUDEZE LCD2という古い平面型を使用してみました。というのは最近の平面磁界型は高能率化してきましたが、このころの古い平面磁界型は能率が低くてとても鳴らしにくいからテストに最適というわけです。試してみると躍動感やスピード感もひときわ優れてた素晴らしいサウンドになっていると感じます。
一般に低能率のヘッドフォンではボリュームが取れたとしても遅く重く暗い音になりがちです。これでは音量が十分に取れていても鳴らしきっているとは言えません。EF400ではそうした重苦しさは少なく、朗々としたパンチがあるサウンドで躍動感やスピード感もひときわ優れています。まるでLCD2が高能率のヘッドフォンのように感じられます。
ラックにしか置けないような大きいアンプならともかく、こんなに小さいのに4.4Wもの出力があるのは特筆ものといえるでしょう。

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AB級増幅で熱くならないのでデスクトップでもあまり問題にならないでしょう。デスクトップに置けるサイズで価格も手ごろな平面型ヘッドフォンに最適のヘッドフォンアンプを探している人にオススメです。

posted by ささき at 09:40 | TrackBack(0) | __→ HiFiMan HM-901, 801 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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