LUXURY & PRECISION W2はいわゆるドングル型・スティック型と呼ばれるポータブルDAC内蔵ヘッドフォンアンプです。PCにも使用できますが、バスパワーでの動作が可能でコンパクトなのでスマホ向けに最適です。特に標準添付のケーブルでアダプタなしにiPhoneに直結できるのでiPhoneに向いています。
Luxury & Precision(楽彼)は何回か書いていますが中国のオーディオブランドで、はじめはHeadFiなど海外マニアックフォーラムで人気を集めていましたが、2018年からサイラスが国内でも扱いを始めました。L&Pは一時期うちでもよく書いていたColorFly C4の流れを汲む会社でもあります。最近では世界初のディスクリート方式マルチビットDAC搭載のポータブルプレーヤー「L&P P6とP6Pro」を発表して話題になりました。
LUXURY & PRECISION W2は同様なスティック型DAC内蔵アンプのLUXURY & PRECISION W1の上位モデルです。価格は39,600円(税込)です。
iPhone12 Proとライトニングケーブルで接続
* 特徴
1. iOS、Android、PCの全てに対応可能
W2は対応機種が広く、USB-C to USB-C, USB-C to Litghtning, USB-B変換アダプターが付属しているので、iPhoneやAndroid、PCに広く対応しています。
2. DACはCS43198をデュアル搭載
CS43198は久しぶりに開発されたシーラスロジックの最新DACチップで、長らくこの座にあった4398の後継でもあります。シーラスの基準のMasterHIFIというハイグレード製品ですが、主眼としてはコンパクトで低消費電力なので、ポータブル製品向けと言えると思います。
CS43198は同社のハイレゾDAPであるL4にも搭載されていますし、他ではA&K SR15やiBasso DX300などにも採用されています。W2では最大131dBのS/N比を実現しているということです。
3. 4.4mm端子でバランス出力対応
W2には3.5mmシングルエンド端子と4.4mmバランス端子が採用されています。 W2では特にバランス時の性能が圧巻で、歪みがバランス時にはシステムとして0.00012%(バランス出力,300Ω)と超低歪みでDACチップの仕様より優れているとしています。これはにわかには信じがたいですが、実際に音を聞いてみると納得します。これがバスパワーで動作しているというのはちょっと驚きますね。バランス端子は日本Dics製Pentaconnジャックです。
4. 鳴らしにくいヘッドフォンにも、高感度IEMにも対応
W2はバランス時に230mW/@300Ωとハイパワーであり、さらにゲイン切り替えでHighとLowの2段階のゲイン切り替えが可能なので様々なヘッドフォンやイヤフォンに対応ができます。
またW2は低消費電力でもあり、USBチップとDACチップ用に別々の電源を備えているという凝った設計を採用しています。
5. 豊富な音質調整のオプション
W2は豊富なデジタル処理が可能です。イコライザーはClassic/Jazz/Rock/Pop/Bass/Movie/Gameのモードが可能、さらにDACフィルター設定でFAST/SLOW/NOS/LL FAST/LL SLOWが設定可能です。
またチューニング切り替えがあって、リラックスしてポップスやボーカル向けのTune01と繊細で情報量が多くオーケストラ向きというTune02が用意されています。
6. SPDIF出力可能
いったんアナログに落として劣化することなく、直接スマホからデジタル信号を取り出して他のDACに送ることができます。端子はイヤフオン端子と共用です。
これによって他の据え置きDACに接続することも可能です。
7 その他
本体には0.91型モノカラー有機ELのディスプレイが搭載されていて、入力サンプルレートやモードなどが表示されます。本体のサイズは60x22x12.5mmで22gと軽量です。
* インプレッション
W2は極めてコンパクトでかつ軽量です。スマホに取り付けるタイプは重いとケーブルの負担になりますが、W2はまずそうしたことはないでしょう。作りはL&Pらしいメカニカルな角ばった形で背面にはカーボン風のパネルが採用されていて小さい割にはなかなか高級感があります。
ケーブルはUSB-C to USB-CとUSB-C to ライトニングの二つとUSB-CとUSB-Bの変換コネクタが付属しています。ライトニングでiPhoneと接続し、USB-CでAndroidスマホやノートPC、そしてアダプタを取り付けてデスクトップPCとマルチに接続が可能です。ちなみにケーブルについては付属品ではなく無償の同梱品という扱いになるため色や長さなどは予告なしに変更になる場合があるということです。
なおファームウェアアップグレードについては国内公式のサポートはできないが(ソフトは英語のみでかつWindows限定なので国内での案内は難しいとのこと)、国内正規版は海外モデルと同じく、メーカー発表のツールでFWの更新が可能だそうです。
本体側の端子はUSB-Cと3.5mm、4.4mmのイヤフォン端子があり、液晶パネルと二つのボタンが搭載されています。ボタンはモード切り替えと音量上下および設定値変更に使います。ボタンを押してモードを選択して上下キーで値を変更するという形式です。
接続は簡単で、USBケーブルをスマホに接続してイヤフォンを端子に接続するだけで使用ができます。iPhoneと試しましたが、あっさりと認識しました。音を出す前にゲインを調整したほうがよいかもしれません。Amazon Music HDの出力確認をすると端末は192kHz/24bit対応でハイレゾ出力ができているのがわかります。
設定が多いんですがまずはデフォルトの状態で聴き始めます。音質はたしかにSNの高さを感じるようにメリハリがくっきりとした音で小さい音もかなりしっかりと明瞭に聞こえます。小さいと言って侮るなかれというくらいかなりレベルが高い音質で、バスパワーでこれだけ引き出せるのはちょっと驚きです。
DACフィルタの効きはわりと大きくてそれなりに音が大きく変わります。この手の設定では違いが大きい方ですね。SNが高いのでわかりやすいというのもあるかもしれません。私はSLOW設定が好きですね、
EQも大きく音が変わりますが、W2の音自体がHIFI風なのであまり味付けをするよりは音楽はNormalのままで良いかなと思います。チューニング切り替えは02だとやや誇張感があるので、低価格イヤフォンなどでは変えても良いですが、ハイエンド系では01を使用した方が良いように思います。W2の基本的な音質が高いので設定はいろいろいじれますが、デフォルトが良いように思いますね。イヤフオンによってはいろいろと変えてみるのもよいかもしれません。
ゲインはイヤフォンはダイナミックでもBAでもLOWで良いように感じますが、低能率ヘッドフォンをつけるときはHIGHでバランスが良いですね。
3.5mmではイヤフオン的には切れ味の鋭いFAudioのMajorがなかなか相性がよいように感じました。
バランスでARAと組み合わせ
CampfireのARAで同じケーブルで3.5mmと4.4mmバランスで聞いてみます。
4.4mmではバランスらしく力強さが一段と増して、空間的な広がりもいっそうよくなります。解像力は極めて高くてかなり細かい音も拾います。楽器の擦れている音は圧巻です。たしかにバランスで聞いているのが一番ハイレベルで、力感だけではなく歪みなどもこちらの方が端正で優れているように感じられます。音の歯切れが良くARAの鋭い切れ味もよく活かせます。このくらいのハイレベルな音がスマホ+ちょっと付の機材で出るのは不思議な感覚でさえあります。
聞いているとシーラスの音というよりはESSっぽい感じさえしますね。電子設計がかなり際立っているのでしょう。DACのスペックよりシステムのスペックが上というとにわかには信じられないですが、音を聞いていると嘘ではないような気もします。3.5mmでも十分良いんですが4.4mmで聞くとちょっと後戻りできなくなります。絶対にバランスがオススメです。
Mac上のTIDALアプリで使用
Macに使用してみましたが、同様に簡単に接続してあっさり音が出ます。仕事をしながら使うにもいいですね。
ちなみにW1と比較するとW1もかなり良い音ですが、やはりW2はさらにレベルが高いというか音の鮮明さがかなり上です。驚くほどの音と言って良い感じがします。W2がおすすめです。
左がW1
* まとめ
コンパクトで多機能、そしてバランスでの音の良さは特筆ものです。こんな小型デバイスとは思えません。細かい音が再生できるという点ではハイレゾ再生に向いていますし、iPhoneでストリーミングを高音質で楽しみたい、話題のApple Musicロスレスを楽しみたいという場合にうってつけの機材です。