初代のFitEar To Go! 334は2012年に発売されました。その時のブログ記事は下記です。
須山ユニバーサル、FitEar TO GO!334登場
http://vaiopocket.seesaa.net/article/253318386.html
「須山ユニバーサル」と書いたのはこの時はFitEarという名よりも須山カスタムという言い方のほうが一般的だったからです。
この名称の「To Go!」というのはこの「Music To Go!」から取られた名称でもあります。"To Go"というのは(海外のハンバーガーショップなどで)外に持ち出すという意味の英語で、ポータブルの意味であると同時にカスタムとは異なる店頭でそのまま持ち帰られるという製品だという意味もあります。
FitEar TG334
今回のTG334はカスタムIEM「FitEar MH334 Studio Reference」をベースモデルとしたユニバーサルIEMです。ユニット構成自体は以前のMH334/TO GO!334と全く同じで、ネットワークはMH334 Studio Referenceを踏襲しています。
しかしこの10年でFitEarも進化を続け、それらが採用されてリニューアルされたのがTG334です。付属するケーブルは013ケーブルで信号線にはオヤイデ電気様精密導体102SSCを採用、また今回からイヤーピースが変更となり、AZLA SednaEarfit SE1000がSS/S/MS/M/ML/Lの6サイズ添付されます。また試供品として同じくAZLAのSednaEarfit XELASTECもSS/MS/MLの3種類が同梱される予定です。
発売は5月13日の予定です。
* インプレッション
ブログ記事では主にインプレを多く書いていきます。
筐体の大きさはコンパクトだったTo Go 334に比べるとやや大柄で、サイズ的にはTo Go 335と同じ程度。楕円形ノズルのステムなのでイヤーピースはやや装着しにくいところはあります。
青い半透明のシェルはFitEarらしく造形も美しいですね。遮音性は高く、装着感はTo Go 335とほぼ同じです。標準ケーブルはしなやかで細身なので使いやすいと思います。To Go 334の時の001ケーブルは音質はわりと良かったけど、固かったのがやや難だったのを思い出します。いろいろと改良されていますね。
ぱっと聞くと音的にはTo Go 335とやはり似ていて、To Go 335から低音を減らしたような感じを受けます。ただし低音は初代To Go 334でもそれなりにあったけれども、TG334でも少し多め程度にあると思います。これはカスタムからユニバーサルになったことで遮音性が減る分を足したわけですね。低音はたっぷりとしていて、かなり低音の迫力があります。ただしTo Go 335ほどではありません。
全体的にまとまっていてバランス良く音がなっている感じは元がMH334であるということを十分思わせてくれると思います。高音域は解像感が高くマルチBAを感じさせるけれども、落ち着いていて刺激的なところは感じられません。
左からTOGO334初代 TOGO335 TG334
性能的にはかなり高く、To Go 334当時はまだなかったようなSE200やSP1000のようなハイエンドDAPを使うと本来の実力が発揮されるように感じます。情報量が多く複雑な曲を鳴らす感じで、SE200であれば文句なくAKM側を使いたいイヤフオンですね。AKMの高い音再現を受け止めてエネルギッシュに聞かせたり、静寂の中の細かな音表現も聞かせてくれます。イヤフオンの方の強調感が強くてシャーブすぎたりすると、AKMの音だと全体にきつくなりすぎるけれども、TG334はモニターベースの音なので余裕があり、DAP側の音を受け止めてくれます。SE200でアニソンのようなきつい録音を聴くときはESS側にすることが多いけれども、TG334だとAKM側で聴きたくなります。
パワフルな表現も十分にできるのは低音側にでかいBAドライバーを選んだ須山氏の見識によるものもあると思います。またベースがモニターなのでよいのは様々なタイプのDAPに合わせてその個性を引き出せることだと思います。そういう意味ではDAPに合わせやすいイヤフォンですね。To Go 335では同じMH334から派生したものにしても低音が強すぎてイヤフオンの個性が出すぎていたので、こうした元のモニター的な良さというのは感じにくくなっていた点はあったと思います。TG334は自分を抑えて他を活かすというモニター本来の美点が発揮されやすいと感じます。それでいて(初代ToGo334も同じだけど)低音はそれなりに強調されているのでリスニングとしても使いやすいというバランスがうまくできています。
*To Go 334とTG334
左TOGO334初代 右TG334
ケーブルを同じものにしてTo Go 334とTG334を比較してみます。このコネクタ形状が同じという点もFitEarらしい継続性ですね。プロだったらもっとありがたいでしょう。
To Go 334とTG334の音はBAドライバーなど基本的構成が同じなので全体的な印象はかなり似ているんですが、細部に違いがあって、TG334の方がより洗練されているように感じられます。それは周波数特性がよりスムーズであったり、ジャズのソロパートでのドラムの歯切れの良さがTG334の方が鋭かったりというような細部がより音質が良くなっているということです。楽器の音や声はTG334の方が明瞭感が高くなっています。その点でTG334の方がより解像感は高くなって聴こえます。音場感はほぼ同じだと思います。ただTG334の方が明瞭感が高くクリアなので感覚的に音場は見通しがよくて広く感じられます。
BAドライバーが同じでもこれだけ音に差があるのは細かな改良の積み重ねということなんでしょう。
* To Go 335とTG334
左TOGO335 右TG334
To Go 335とTG334を比べてみると、全体の音の感じは同じだがTo Go 335の方がかなり低音が強く出ている。このためにTG334の方がよりすっきりとした感じがあります。ただTo Go 335はこんなに低音が出てるのにきちんと中音域があまりマスクされないでヴォーカルがよく聞こえるのはなかなかだと思いますね。ただアカペラを聞くとやはりTG334の方が声を聴きやすいとは思います。
音の細部表現はTG334とほぼ同じですが、低音が少ない分でTG334の方が全体にクリアに聞こえます。音場についてはTo Go 335の方が低音が出ているのでスケール感はより大きいと感じます。
*まとめ
モニターベースのMH334をベースにして基本は素直な音ながら、低音がより強調されていてその高い音レベルをコンシューマー的にも楽しめるサウンドをもたらしたのが、プロ用のカスタムに対してコンシューマーもより楽しめるユニバーサルイヤフオンの形(のひとつ)といえるかもしれないですね。
ちなみにTo Go 334はAK240の時代です。TG334は基本設計は同じだから、今の最先端のDAPでより楽しめるということは先見性を感じられます。DAPやソース機器は速く進化するのだから、長く使いたいイヤフォンはそれを見越して音性能には余裕を持ったものを選んだ方がよいということでしょう。