最近ハイエンドヘッドフォンではダイナミック型の平面駆動タイプ(オルソダイナミック)がよく使われているが、この形式を世に広めた功績はAudezeとHIFIMANにあります。もともとダイナミック型の平面型はオーディオ黄金期には国産メーカーも参入していたのですが、コストがかかるこの方式はオーディオが衰退していくにつれて忘れられてきました。それをマニアックメーカーとして復活させたのがHIFIMANです(Audezeはライブ音響機器の応用として開発されてます)。HIFIMANはハイエンドだけではなくHE400など低価格機にも平面型を広げてきましたが、このSUNDARAはその結実と言えます。
最近の価格改正で旧価格の50,000円(税別)から新価格の34,600円になったことで、平面型の入門にはうってつけです。
特徴はやはりこの価格にして本格的な平面型ヘッドフォンが楽しめるということです。
SUNDARAでは振動板も改善され、HE400に比べると80%も薄型になっているとのことです。振動板が薄いほど軽くなるので平面型には有利ですね。この辺はHIFIMANが得意としているナノテクの産物でもあるのでしょう。
ヘッドバンドはアルミと皮革で製作されて、この価格とは思えないくらいの高級感があります。また快適性も向上しています。
再生周波数は6Hzから75kHzと広帯域で、インピーダンスは37Ω、感度は94dBです。重さは372gと軽量です。
ケーブルは着脱式で標準ケーブルは3.5mm端子が付いています。ヘッドフォン側はステレオミニ(TRS)タイプです。端子はかなりしっかりとしたもので、低価格品とはいえマニアックメーカーらしいパーツです。
各部は十分に剛性感があり、側圧はややきつめなくらいでよくフィットします。わりと軽めなので長い時間つけていても大丈夫でしょう。
能率はやや鳴らしにくい方で、ポータブルプレーヤーでも音量を取ることはできますがやや暗めに感じられるのでパワーのあるアンプを使用したほうが良いです。実際にアンプを使用して鳴らすとその真価を発揮することができます。
たとえばAK380だとやや足りなく、SP1000だと申し分ありません。あるいは据え置きのヘッドフォンアンプを使うのが良いと思います。
音質はこの価格帯では比類ないくらい高いレベルだと思います。かなりコストパフォーマンスはよいと思いますね。この独特の立体感や音の素早さ、整った周波数再現性はこのクラスのヘッドフォンではなかなか聞くことができず、また平面型らしいと感じるところでもあります。
高域はよく制御されてきつくなく、低域も量感がたっぷりある割には膨らむ感じはないのでこちらもよく整っています。低域はぶおっという量感ではなく、小気味良いタイトなパンチを感じるタイプです。低音が軽いわけではなく、それなりの深みもあります。音はニュートラルで着色感はあまりありません。
振動板が薄くて軽いだけあって、歯切れも良くスピード感があるのでノリのよい音楽にもむいています。ただ低音どかっというタイプではなく、周波数特性が整っていてタイトなので、どちらかというとジャズクラシック系の音です。平面型の利点は高域とか低域に変わりなくインピーダンス変動が少ないというものがありますので、本来こうした周波数特性が整っていて低音の不自然な張り出し感が少ないほうが平面型らしくありますね。
上級機のHE1000seなどに比べればやはり音は粗めで厚みが足りなくはありますが、同価格帯の普通のヘツドフォンではまず実現できないような立体感が特に良いと感じます。三次元的な音の広がりと、楽器やヴォーカルの定位感というか音の重なり感を感じられると思います。
音の細かさは平面型ならではと思えると思います。こうした音楽の空気感というか情報量豊かな音を感じられるのはさすがという感じではありますね。
録音のきつめの音楽ではやや音の荒さが気になるところがあり、この価格では文句が出ないレベルなのですが、本機のポテンシャルが高いのでやや勿体無い感はあります。録音が良い音源だとそれほど気になりません。
余裕があればケーブルを変えてもう少し滑らか感を出すとかなり高級感のあるハイグレードな音を楽しめると思います。今手元にこのタイプのケーブルがないので変えて試せませんがヘッドフォン自体はもっとポテンシャルはあるように感じます。
この価格でも平面型ヘッドフォンを買った感じは味わえると思います。おそらくいままで使ってきたヘッドフォンとは一味違うと感じるでしょう。いずれにせよ開放型でポータブルには向かないので、家で使うヘッドフォンで5万円以下で一味違うものを探している人におすすめです。
かなりコストパフォーマンスの良い買い物ができると思います。
SUNDARAとは古代サンスクリット語で美しいという意味を持っているそうです。たしかに価格以上の内容と見た目の美しさ、音の美しさを兼ね備えたヘッドフォンと言えるでしょう。