先日Roonが1,6にバージョンアップしました。その目玉はTIDALと並び称されるロスレスストリーミングサービスQobuz(コーブズ)のサポートです。Qobuzはフランスの会社で、欧州では以前からロスレスストリーミング・ハイレゾストリーミングを提供していましたが、アメリカではこの年初から開始されています。Roon1.6でのアップグレードはそれを見据えてのことでしょう。
1.6での注目機能はTIDALでMQAによるハイレゾストリーミングが可能となったように、QobuzでもハイレゾストリーミングがRoon上で可能となるということです。
ただ残念ながら日本では両サービスともまだ正式にサービス開始していないこともありますので、まず基本からハイレゾストリーミングサービスのTIDALとQobuzを数字や必要要件で比較してみます。
* ハイレゾストリーミングのサービスプラン
TIDALの場合はハイレゾストリーミングをするためには月$20のHIFIプラン(CD品質のロスレス配信)を取ることによってハイレゾストリーミングも同時に使用できます。これは後に詳しく述べますが、TIDALがハイレゾ配信でMQAコーデックを採用しているために実質的にCD品質と通信速度の必要性がほぼ変わらないからです。
最大は352kHz/24bitですが、ソフトウエアデコードの場合には96kHz/24bitまでとなります。
Qobuzの場合はハイレゾストリーミングをするためには月$20のHiFiプラン(CD品質のロスレス配信)ではだめで、Studioプラン(月$25) かまたはSublime+プラン(年$300)が必要です。Sublime+プランではStudioプランに加えてダウンロード音源の購入で割引が適用されます。
最大は192kHz/24bitまでです。
* ハイレゾストリーミングの楽曲数
TIDALの場合は総数が約6000万曲、ハイレゾストリーミング可能な曲が約100万曲
https://www.whathifi.com/news/tidals-hi-res-masters-tracks-surpass-one-million
Qobuzの場合は総数が約4000万曲、ハイレゾストリーミング可能な曲が約75,000アルバム
https://help.qobuz.com/hc/en-us/articles/115001675592-What-does-the-streaming-catalogue-contain-
曲数は不明ですが、だいたい1アルバム10曲とすると75万曲くらいなので、双方ほぼ同じくらいでしょうか。Qobuzに関してはハイレゾ200万曲という数字もどこかで見た気がしますが、いずれにせよ双方とも増えていくでしょう。
* ハイレゾストリーミングに必要な機材
TIDALの場合はフルにハイレゾストリーミングをするためにはハードウエアデコードをするためのMQA対応機材が必要です。たとえばMQAフルデコーダーもしくはMQAレンダラーの機能を持つネットワークプレーヤーとかMQA対応DACです。この場合に録音されたオリジナルのサンプリングレートまで再生可能です。
もしMQA対応製品がない場合にはMQAアプリやRoonなどのソフトウエアデコード機能を使用して96kHz/24bitまでとなります。
Qobuzの場合はハイレゾストリーミングをするために必要なものはFLACをデコードするソフトとハイレゾ対応DACくらいで、これらはいまは普通ですので特別な機材は必要ありません。これはQobuzは標準的なFLACコーデックで配信されているからです。
* ハイレゾストリーミングに必要な通信速度
TIDALの場合はCD品質のストリーミングが可能な回線ならば、ハイレゾストリーミングは問題ありません。これはMQAコーデックによる圧縮の高さでCD品質で必要とされる約1.4Mbpsよりも低いレートでハイレゾの配信が可能だからです。
Qobuzの場合は基本的にFLACコーデック(ファイルではなく)でストリーミングしています。これはMQA配信に比べてより通信速度が必要となります。ただし非圧縮ではなくFLACコーデックにおいて圧縮されて配信されています。
具体的な例として176.4kHzを24bitで配信する場合を考えてみましょう。このとき非圧縮であれば必要な通信速度は計算すると約8.4Mbpsです。
MQAではこのときに約1.2Mbps(MQA社提供のデータ)で済みますのでほぼ1/8の帯域幅で済みます。これはハイレゾストリーミングがスマートフォンに拡大された場合にモバイルやセルラー回線で有利となります。
対してQobuzですが、圧縮していますので実測値で約4.8Mbpsということです(Qobuz社提供のデータ)。ですからQobuzでは1/2くらいの圧縮率で圧縮していると推測できます。この程度は通常の可逆圧縮で十分達成可能な値です。このためTIDALの8倍の通信速度が必要なわけではなく、だいたいTIDALの4倍程度の通信速度が必要となります。
ただしFLACの圧縮率は曲によっても大きく変わり、Qobuzでの実測だと4割程度も変わることがあるということなので注意は必要です。
目安としてQobuz社ではインターネットはストリーミングだけではないので、フルに196/24bitのハイレゾストリーミングを楽しむには20Mbps程度の接続速度が必要ではないかと言ってます。
さくっと手元のWiMaxでダウンロード速度を実測すると25Mbps程度出てますし、おそらくはこの程度の回線ならば問題ないし、光回線の人ならまったく大丈夫でしょう。
* まとめ
簡単に言うとTIDALではより通信速度は低く済みますが、フルに楽しむにはMQA対応機材が必要となります。Qobuzではより高い通信速度は必要ですが、機材は普通の機材で問題ありません。
またMQAではエンコード時に独自のデジタルフィルターが適用されているので、音質的な違いも出るでしょう。
総じてモバイルでのハイレゾストリーミングではTIDALのほうが向いていると言えるかもしれません。また機材においてはESSが主にモバイル向けのMQA対応チップを発表していますので、MQA関連はこれらの普及待ちという面もあります。家では十分な通信速度が得られるので機材の柔軟なQobuzが向いているかもしれません。
ただ重要なのはハイレゾストリーミングというよりは聴きたい楽曲がどちらのサービスに多いかということになるとは思います。