今年も最後の記事になりましたので、うちの記事から今年のトレンドを振り返り、来年のオーディオトレンドを考えてみたいと思います。
ちなみに昨年の暮れに書いた2017年の振り返り記事は下記リンクです。
→「2017年振り返り」
http://vaiopocket.seesaa.net/article/455867697.html
イヤフォン、ヘッドフォンについてはCampfire Audio SolarisやFAudio Majorなどチャンバー方式を生かしたハイエンドイヤフォンが良かったと思いますし、新機軸の静電型ドライバーを搭載したFitEar ESTは単に目新しいということだけではなくきちんと高い音質にまとめたのはベテランならではの手腕といえるでしょう。
昔からうちのブログで書いてきた海外メーカーでも代理店がアユートさんに変わったフェンダー(ex Aurisonics)も高い音質を示してくれ、AKG K3003以来のひさびさのAKG N5005もなかなか良かったですね。ヘッドフォンはやはりCampfire AudioのCASCADEがあのHD25以来のポータブルヘッドフォンらしいカタチで、価格を超越した音質で実現してくれたのが印象に残りました。
DAP、アンプでは中堅クラスのiFI xDSDやA&K SR15などが良かったように思います。もちろんA&K SP1000MやSE100、PAW Gold Touchなどハイエンドクラスも充実していました。
→「Campfire Audioのヘッドフォン、CASCADEレビュー」
http://vaiopocket.seesaa.net/article/455862470.html
→ 人気の「ANDROMEDA」を超える集大成モデル、Campfire Audioの旗艦イヤホン「SOLARIS」レビュー(Phileweb)
https://www.phileweb.com/review/article/201812/13/3305.html
→「FitEarの意欲作、静電型ツィーター搭載のFitEar EST UIEMレビュー」
http://vaiopocket.seesaa.net/article/460502169.html
→「ユニークで高音質なダイナミック、FAudio Majorレビュー」
http://vaiopocket.seesaa.net/article/462838214.html
→「参入3年目、これから「Fenderのイヤホン」が向かう場所とは?」(Phileweb)
https://www.phileweb.com/interview/article/201811/16/598.html
→「Astell&Kernの新DAP、SE100とSR15の発表会」
http://vaiopocket.seesaa.net/article/459701054.html
→「iFI Audio の新機軸、xDSDレビュー」
http://vaiopocket.seesaa.net/article/459955768.html
→「AKG N5005レビュー」
http://vaiopocket.seesaa.net/article/458917061.htm
2018年の技術トレンドとしてはMQAの進展とBluetoothの進化というところに注目しました。これらの進展は音源がストリーミングに移行している時期であるということとも符合しています。つまりはBluetoothはもちろんのこと、MQAがポータブルでもキー技術となりうるということだと思います。
まずMQAについてはxDSDなどのiFI製品、Astell & KernのDAPもMQA対応を果たしています。MQAは使い方がまだわからないという人も多いと思いますが、iFI製品を主としてMQAの詳細な使い方の記事も書いていますので参考にどうぞ。
→「iFi audioも対応で盛り上がるMQA、その再生のための基礎を徹底解説」(Phileweb)
https://www.phileweb.com/sp/review/article/201805/24/3042.html
→「Aster & KernもMQA対応」
http://vaiopocket.seesaa.net/article/462050929.html
MQAがポータブルも視野に入れているということはボブスチュアートが来日した際にも直接話をうかがって確認しました。
→「MQAのポータブルオーディオ最前線についてボブスチュアート氏の話」
http://vaiopocket.seesaa.net/article/460037162.html
これを裏付けるようにAndroidの定番ハイレゾ再生アプリのUAPPでもMQAソフトでコード対応されています。
→「UAPPアプリでMQAのソフトデコード対応」
http://vaiopocket.seesaa.net/article/463293040.html
またMQAが本来強みとするストリーミングはTIDALだけではなく、ライブ中継でも効果をはっきするということを示したのは、オーディオというよりもこれからの音楽のありかたの一つの形を提示してくれたとも言えるでしょう。
→「MQAライブストリーミング in InterBee」
http://vaiopocket.seesaa.net/article/462754288.html
ストリーミングが音源の中心になるということは、ストリーミングに適したデバイス、つまりスマートフォンが核になってくることを示唆してもいます。そのときにキーとなる技術はやはりBluetoothです。Bluetoothはオーディオという場合には音質という点がネックになるのですが、今年はAptX Adaptive、HWA、LDACのようなハイレゾ再生をBluetoothでも可能とする技術(コーデック)も目立ちました。
ちなみにこれらの説明をする際によく「ハイレゾ級」という言葉を使うのですが、ハイレゾというのはそもそも音の良し悪しではなく、44k/16bitを超えるフォーマットという規格ですので、あえて「級」をつけるのはおかしいと思います。ハイレゾかハイレゾでないかの二択しかないはずですし、そこにハイレゾっぽいという言い方はおかしいですね。
これらのコーデックで96kHz/24bitのデータが搬送できるのであれば、それは中身の音質は関係なく、「ハイレゾ」と言えるでしょう。この辺は逆にハイレゾに対するメーカーとユーザーの考えがまだあいまいである証拠でもあると思います。
→「AptX Adaptive体験試聴会、AptX Adaptiveとはなにか」2013/6記事
http://vaiopocket.seesaa.net/article/461921871.html
それはともかく、個人的にはいままでに何回か書いているようにSBCでも十分に高音質で搬送できると思いますし、Bluetoothデバイスの音質のキーはコーデックではなくBTレシーバーの設計だと思います。その点ではShureのBT2は良いと思います。この点については5年も前に書いた記事ですが、Myst PortaDAC 1866の記事をご覧ください。特にSBCのBitpool値のあたりや、MystのBTチップとDACの分離のところです。
振り返るとUSBも音が悪いと言われていたのですが、PCオーディオの転換点はもともとUSBコントローラのおまけ機能だったPCM270xの内臓DAC機能をバイパスして外部の高音質DACとつなげたということだったと思います。結果としてAyre QB9を嚆矢としていまではハイエンドクラスでもUSB DACが全盛となっています。
→「ワイヤレスポータブルアンプの探求、Myst PortaDAC 1866など」
http://vaiopocket.seesaa.net/article/367782187.html
また、Bluetoothの問題点(時代遅れな点)はコーデックというよりもプロファイルにあると思います。つまりA2DPの制限である1:nの通信ができないということです。これは今年は流行を見せた完全ワイヤレスイヤフォンでも問題となります。この点についてもTempowのような取り組みがありますし、クアルコムもQualcomm TrueWireless Stereo Plusで取り組みを見せています。
→「Bluetoothのマルチキャストオーディオ技術、Tempow Audio Profile」
http://vaiopocket.seesaa.net/article/460813992.html
さて、それらを踏まえての来年のトレンドを考えてみます。
うちのブログでは過去に「DSDネイティブ再生」とか、「完全ワイヤレス」など先進的な話題を取り上げてきましたが、その始めの頃はそもそもそうした言葉自体がありませんでしたので、これを記事の日本語でどう呼ぶべきか、と悩んでいろいろと考えつつ「DSDネイティブ再生」とか「完全ワイヤレス」と呼んだわけです。
いまもなにか、こういうものが来ているけれども、はっきりとした呼び方はないというものがあります。今の製品でいうと、iFI xDSD、HIFIMAN R2R2000などにその萌芽がみられます。詳しくは書けないところもありますが、来年はもっと明確な形となるでしょう。
それはおそらく「高音質Bluetoothレシーバー」とか「ハイエンドBluetoothレシーバー」と呼ばれるようなものです。SureのBT2はよいところを突いていると思いますが、ここで言いたいのはもっとずっとハイエンドのBluetoothレシーバーのようなデバイスです。あるいはDAPにたいして「ストリーミング・オーディオ・プレーヤー」というべきものかもしれません。たかがアクセサリーのBTレシーバーに10万も20万もだすか、せいぜい2-3万だろうというかもしれません。しかし、その言葉は10年ほど前に「BTレシーバー」を「ヘッドフォン」と入れ替えて散々言われていたように思います。
現状ではR2R2000が一番良い例なのですが、聞いたところ高価なR2R2000も実のところDAPというよりも購入者のほとんどがHWA対応のBTレシーバーとして使用しているそうです。もちろんこれは中国でファーウエイのシェアが大きくHWAの浸透度も高いということも関連しているかもしれません。しかしながら中国でストリーミングの普及率が日本よりもはるかに高いということも関係しているでしょう。そういう意味ではいまや中国は日本の明日でもあります。
これに高音質BTコーデック(LDAC、Aptx HD/Adaptive、HWA)やMQA対応も加わってくるでしょう。ロッシーコーデックでハイレゾかと言われるかもしれませんが、書いたようにハイレゾであるかどうかと音質は別の話です。MQAもWiFiならともかくBTのロッシーではデコードできないはずですが、それは問題というよりは課題というべきでしょう。
Bluetooth元年というといつの話だよ、と言われるかもしれませんがそれはコンシューマオーディオにおける話です。PCオーディオと呼ばれる前もUSB DACはありましたが、HiFiオーディオを志向したものではありませんでした。
もしかすると来年こそが本当にHiFIオーディオあるいはポータブルオーディオにおけるBluetooth元年となるのかもしれません。
いずれにせよ今年も本ブログの購読ありがとうございました。来年もよろしくお願いします。