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2007年06月30日

iPhone発売記念企画 - Newtonの時代

米国時間のさきほど、東部から西海岸に向かって各地の現地時間18:00からiPhoneの発売が開始されました。アメリカではそれなりに盛り上がっていますが、日本は蚊帳の外に置かれています。
そこで問題は日本語版ですが、来年の「泳げる頃」までにはできるのでしょうか?

と、いうことで上の一文で笑っていただけた方は触れてはいけないAppleの過去をひとつ思い出していただけたと思います。
考えてみるとスマートフォンであるiPhoneはNewton以来のAppleとしてはひさびさのPDA製品でもあると言えるでしょう。しかし、PDAなら当たり前のスタイラスではなくマルチタッチというジャスチャーによるインターフェースを持っています。画面の写真を持って指を広げると拡大とか、なかなか興味深いものがあります。
一度確立したスタイラスによるUIのメタファーを捨てるといういさぎよさに私はかつてのAppleの持つ革新性を思い起こしました。

実のところ、わたしも以前はけっこうなAppleのエヴァンジェリストでした。So Far本はさすがに持ってませんがSo Farスタックは持ってましたし、アップルデザインは日本語版も英語版も持ってます。1984CMと若きジョブズのアジ演説をQuickTimeで編集したものを作ったりしてました。QuickTimeはいまでは動画のプラグインとして考えられているくらいですが、当時はワープロ上で動画を写真同様にカット&ペーストできるというところが新鮮でした。

Appleのいいところというのはとにかく感動させられる製品と技術を出すことだと思います。マックペイント、ハイパーカード、クイックタイム、そしてNewtonもその流れのひとつといえます。

newton1.jpg

そこでNewtonをわたしの押入れ博物館の中から取り出してきました。
もはや6色のAppleロゴはなつかしいですね。ちなみになぜ6色かというとAppleIIの発色可能な色が6色だったからです。これはウォズの才覚の賜物で、当時はそれでも画期的でした。

これはNewtonの最終版というべきMP2100(英語版)です。英語のみですがわたしの海外の知人のアドレス帳がいまでも入っています。当時Palmもあったと思いますが、手書きはグラフィティーのような簡易版でしたので筆記体も書けて認識力も高いNewtonはまさに別次元の存在でした。
Newtonの画期的なところはジェスチャーによるUIと高度な手書き認識能力、そして「知的な」ソフトウエアです。ソフトウエアは開発環境から高度に統一されていて、OSはそれらを統合しています。
たとえばスタイラスでノートに文章を作成したあと、"mail to John"と書き込んでアシスト(コマンド)をさせると自動的にアドレス帳ソフトからJohnのあて先を調べ、次にメールソフトを起動して文章をメールで送ります。すべてが人工知能のように高度なOSの上でシームレスにつながっています。

またAppleらしいところは、その遊び心だと思います。特に当時話題になったのはジャスチャーによるインターフェイスで書いたテキストを消去するときにペンをテキストの上でスクラブするとポンッと消えるところとか、メモ紙をゴミ箱に捨てるときにメモがくしゃくしゃになるアニメーションなどです。

Newtonはアクセサリーも何点か出ていて外付けでキーボードをつけることもできます。

newton2.jpg

日本語対応についてはエヌフォーから出ていた純正でないものしか出ることはなく、「泳げる頃までにはできる」という有名な言葉を残したまま、結局泳げる頃はきませんでした。
そうこうするうちにスカリー色の強いNewtonは(スカリーが追放した)ジョブズ王の帰還によって葬られてしまいました。しかしジョブズは当時Appleが導入にてこずっていた次世代OSの基盤となりえるNeXTをもって戻ってきましたが、そのNeXTのカーネルだったMachがこのiPhoneにもはいってますから、時代は回るというわけです。(ちなみに6GのiPodもMachベースになるかもしれません)

またNewton OSについてはeMateという派生版のほかに、他社にもライセンスが可能でした。Newtonは(OS)技術の総称でMessage Padというのがひとつの製品名です。
Newtonの手書き認識は単語のパターン認識を応用するため、日本語にそのまま流用するのはやや難を感じました。しかしシャープがライセンスを買って「ガリレオ」という名前で独自の日本語Newton OS機を企画していました。わたしはなにかのショウでこのプロトタイプをいじったことがあるのですが、森という漢字を入力するときに広い液晶画面に木を三つかいてもきちんと認識したので感動した覚えがあります(日本語版Newtonはマス目が必要)。
ただこれも結局ザウルスとの政治的な差別化からか発売されることはありませんでした。


こうしてみると10年以上むかしの方が進歩的という意味でわくわくするものがあったのは気のせいだけではないように思えます。
わたしは結局まじめに使っていたのはQudra700までで、記念に(安くなった後の)スパルタカスを買ってMacからは足を洗ってしまいました。いまWindowsを使っているのは慣れたということもあるけど、あまりMacにそうしたわくわくするものが少なくなったという気もします。
Mac OSもパンター、ティーガーそしてレオパルト(読みが強引か)と進歩して、たしかにVistaよりは多少見栄えがよくて多少使いやすいかもしれません。ただ、わたしの知っているAppleの優位点はそうしたレベルのものではなかったように思います。

Appleのいいところは革新性と遊び心と書きましたが、もう少し書くとそれを文化に結び付けて昇華したという点かもしれません。ハイパーカードもそうしたムーブメントがありましたし、iPodも単なるオーディオプレーヤーというより文化といえます。
それはAppleの提供するそうしたわくわく感にみなが共鳴した結果のことです。ユーザーのみならず作り手側のスカリーも「一生砂糖水を売るより世界を変えてみないか?」という有名なジョブズのヘッドハントの言葉に惹かれてペプシからAppleへと移り、自分自身もそのわくわくとした感覚をNewtonという形で夢を結実させました。Appleにはそうした魅力があったと思います。

iPhoneも携帯という枠を超えてそうしたものを受け継いでいって欲しいと思いますね。
posted by ささき at 10:32| Comment(8) | TrackBack(0) | __→ iPod, iPhone, iPad | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ん〜、アップル社の下克上を見ているようで(笑)
Newtonは良いアイテムでしたね。
日本語圏においてはもひとつでしたが。(−−;
NeXTも今ひとつ伸びなかったのは残念でした。デザインも含めて良いOSだったのですが。

ちょっと未来を先取りしたものがあるとワクワクしますよね。昔のSONYもそういうところが好きでした。

あ、SONYとAppleは・・・爆弾繋がり・・d( ̄  ̄;)☆\(ーー
Posted by rabbitmoon at 2007年06月30日 12:27
たしかにかつては爆弾->リブートというとMacの代名詞のようなもんでしたけど、最近のTV CMではすっかりWindowsに押し付けてしまいました(^^
Macユーザーには爆弾より怖いサッドマックというのがありますが、わたしは幸い出ることはありませんでした。

ちなみにわたしNeXTもしばらく使ってたことがありました。やっと時代が追いついてきたマルチスレッド環境とかNeXTとMachについてはまた、iPodのMach化記念のときに書こうかと思ってます(笑)
Posted by ささき at 2007年06月30日 20:49
Macから離れて、大分経ってしまいました。
サッドマックが出るときの音も遊び心だったんでしょうね。'ガラガラガッチャン'みたいな音を初めて聞いたときは目を剥いてしまいました。後が大変でしたが(笑)
Posted by Sulcata at 2007年07月01日 07:22
Sulcataさん、どもども、なるほど、そんな音がしたのか。。
わたしも意外とハードの引きは悪くないようで、MacもPCもハードの問題というのはあんまりなかったですね。

なんかMacの話をしてたら128Kほしい熱が再び。。(笑)
Posted by ささき at 2007年07月01日 11:28
iPhoneは確かにNewtonデバイスやOSを彷彿と
させてくれますね。
でも、JobsはNewtonを嫌っていたので二度と復活は
ありえないでしょう。
自分を追い出したスカリーの製品と技術ですからね。

Newtonは随分お金を掛けていた気がします。
2100は本当に早かった...でかいけれど、小さい
画面ではまともな事は出来ないという事を
思い知らされた製品です。

NeXTはOSとハードを商売で扱っていたので
これまた親近感がありますが、高すぎでした。
後日リースアップした中古機なんかもメンテ
して販売してたりしましたが、既にワークステーションの時代は終わっていた頃でしたね。

そうだな、もうロマンを感じる機器とかOSって
少ないですね。Beも面白かったんだけど...
Posted by zorotto at 2007年07月01日 20:32
そういえばBeもありましたね。
スカリーがNewtonに託したものをガセーはBeに託した、という感じでしょうか。
BeBOXも魅力的でしたね。。
Posted by ささき at 2007年07月01日 21:38
Newtonですか。
当時使ってみたかったですが、MACが高かったので手が出せなかったです。やっと手にしたのは知人に安価に譲って貰ったColorMACでしたね。(^^;
iPhoneは、日本のキャリアで使えるようになったら、買ってしまうでしょうね。
Posted by rx78 at 2007年07月01日 22:32
rx78さん、どもども。
たしかにMacといえば高いというイメージでしたね。

わたしもiPhoneは買いたいんですが、日本で使えるようになるまでにまずイヤホンジャックを直してもらわないと..

http://japanese.engadget.com/2007/06/30/iphone-headphone-jack/

(ただアダプタのようなものはサードパーティーアクセサリーで用意されているようです)
Posted by ささき at 2007年07月02日 00:05
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