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2018年06月13日

iFI Audio の新機軸、xDSDレビュー

iFI Audio xDSDはiFIポータブルアンプの最新機種であり、その一新された斬新なデザインが目を引きます。そのコンパクトさにも関わらずに従来の定評あるiFIの技術全部入りともいえる中身の濃い製品で、加えて話題のMQA対応も果たしています。

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iFI-Audioは新興のポータブルオーディオメーカーではありません。AMRというハイエンドオーディオでは歴史と定評があるメーカーの子会社であり、最新の技術とユーザー動向に敏感に対応するために作られたブランドがiFI Audioです。そのため深い技術力の蓄積があり、最新のPCオーディオ分野で話題のMQAにもいち早く対応しました。
xDSDは少し前に昨年秋のヘッドフォン祭でプロトタイプを見せてくれた時にはX-15と呼ばれていたんですが、トルステン博士は新たなデザイナーを連れていました。彼がこのXシリーズの斬新なデザインを手掛けているようです。

*xDSDの特徴とは

xDSDはデジタル入力のみのDAC内蔵ポータブルアンプで、コンパクトでスタイリッシュなボディの中にこれまでのiFI技術のほぼすべてが全部入りで詰め込まれているのは驚異的です。またxDSDはいままでのiFI Audioの集大成であると同時に、新たな技術を投入しています。

継承されているのは以下のようなものです

1. これまでのiFI技術のほぼすべてが全部入り、iPhoneとのCCK直結
2. BLで投入されたiFI独自オペアンプ(OV)、S-Balanced端子などの高音質技術


新たな試みは以下のようなものです

3. コンパクトでスタイリッシュな新デザイン
4. Bluetooth機能
5. 多色LEDを使用して操作性向上
6. デジタルエンコーダーでパワーマネージメントを統合、省電力、操作性向上に貢献(Cyber Drive)


xDSDではこの最後のCyber Driveという言葉がキーになってきます。これは単一機能というよりも設計コンセプトのようなものと言えるでしょう。これについてはトルステン博士に直接聞いてみました。

xDSDではボリュームが従来のアナログボリューム(いわゆるボリュームポッド)からデジタルエンコーダー方式でのアナログボリュームに変更されています。ダイヤルを回せばリモートコントロールで内蔵のアナログボリュームが変化するわけです。ボリュームの左右誤差を減らせるとともに、デジタルボリュームのようなビット落ちがありません。
しかしこれは珍しい方式ではありませんが、xDSDではこれをMCU(制御プロセッサ)と結びつけて高度な電流制御をしています。これを称してCyber Driveと言ってもよいかもしれません。

xDSDではIE Matchやecoなど従来のパワーモードがなくなったように見えますが、実のところCyberDriveはデジタル化されたボリュームとプロセッサが連動して最適な出力と電力消費を扱う機能であり、実質的にIE Matchやパワーモードが統合されたものでもあります。
トルステン博士によると以前のiDSDなどでもゲインコントロールとパワーサプライは常にMCUの制御下にあったのですが、ボリュームがマニュアルなのでスイッチが必要だったということです。しかしxDSDではボリュームが電子制御になったことにより、そうしたスイッチ類をボリュームにまとめることができたそうです。そのため、xDSDでは基本はecoモードにあって、ボリュームを回すだけパワーを取り出すことができるわけです。
これにより、小型化された筺体にたくさんのスイッチを付ける必要がなくなり、電池持ちの良い小型でかつ高機能なアンプが実現できたと言えます。つまり総合的な操作性も向上しています。
これもデジタル回路のみならず、ソフトウエアも含めたiFIの高い総合的な技術力の高さが可能にしたものです。

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xDSDとWestone ES80

* MQA対応

前出のようにiFI Audioが優れている隠れたポイントはファームウェア/ソフトウエアの設計能力です。これがわかるのがMQA対応です。
xDSDはMQA対応として「MQAレンダラー」を搭載しています。これは新製品のxDSDの新機能と言うだけではなく、現行製品もアップデートによってMQA対応が可能です。
この理由はiFI-AudioのポータブルDAC内蔵アンプのシリーズはすべてUSB入出力制御にXMOSを採用していますが、iFI-AudioのMQA対応はXMOS内部のソフトウエアによって行われています。このためラインナップの上下、新旧を問わずにMQA対応が可能となるわけです。XMOSは小型のコンピューターのようなICで、ソフトウエアの書き換えによって動作を変更できます(FPGAより容易です)。iFI-Audioはいち早く高レートのDSDネイティブ再生を可能にするなど、XMOSのソフトウエア制御に長けた会社であり、それがMQA対応でも発揮されているわけです。
ちなみに市場に出ているコンパクトオーディオ製品でMQA対応しているものは他にAudioQuestのDragonFlyがありますが、DragonFlyの開発者はUSB DACにハイレゾをもたらしたあのゴードン・ランキンですので、手早いMQA対応は技術志向のメーカーならではと言えるでしょう。

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xDSDとDita Fidelity

「MQAレンダラー」とはなにかというと、MQAのハードウエアデコーダーのことです。ただし「MQAフルデコーダー」とは異なり直接MQA音源を認証してデコードすることはできません。このため外部にMQAコアデコーダー(つまりソフトウエアデコーダー)が必要となります。これは「MQAレンダラー」が比較的プロセッサパワーの足りない小型機器で使うモジュールだからです。
またMQAコアデコーダーでは96kHzまでしか主力出来ませんが、MQAレンダラーは192kHz(またはそれ以上)の出力ができますので、「MQAコアデコーダー」と「MQAレンダラー」はお互いに補完関係にあるとも言えます。

これについては現在では主にTIDALプレーヤー、Audirvana Plus 3やRoon 1.5のMQAコアデコーダー機能を使うことになります。
こちらについてはPhilewebとiFI Audioのサイトに詳しく書きましたので下記リンクを参照してください。

https://www.phileweb.com/review/article/201805/24/3042.html
http://ifi-audio-jp.blogspot.com/2018/05/mqa.html


* xDSDの使い方と音質

xDSDはデジタル入力のみのポータブルアンプです。使い方としては主に次の二つです。
ボリューム中央ボタンの長押しで切り替えます。

1. USB接続でスマートフォンやDAP、またはPCと接続する
2. SPDIF接続でPCやDAPと接続する 
2. BluetoothでスマートフォンやDAPと接続する


xDSDの音の真価はやはりSPDIFかUSB経由です。

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xDSD背面の入力端子

試聴はUSBで聞いてみますが、電源オン時に中央ボタンが緑になるのを確認します。それ以後はボリュームの大きさで中央LEDの色が変わります。このようにLEDの色でさまざまな情報を知らせるのもxDSDの特徴の一つです。

USBではコンパクトサイズにもかかわらず、micro iDSDで採用されたiPhoneのCCKを直結できるUSB Aオス端子を使っているため、アダプターを間に入れるロスがありません。
microUSBを使用するUSB デジタル出力機能をもったAK70のようなDAPにはAudioQuestのDragonTail(Android用)が使えます。
SPDIFの場合にはさまざまなアダプターが同梱されています。

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xDSDの同梱品

音質はまずWestoneのES80で聞いてみましたが、このくらいのハイエンドイヤフォンが使いたくなるような高い音質レベルを感じさせます。
はじめにiPhoneと組み合わせてみると音の鮮烈さに驚くほどです。透明感がとても高いのが印象的で、音空間には深みがあって立体的です。解像感もひときわ高く、音の細かい粒子を数えられるように感じられます。

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iPhone XとxDSD

AK70等とはAudioQuestのDragonTailがおすすめです。
透明感と音空間の深みは一段と向上し、さらにiPhoneとCCKでは線材のせいか粗探しをするとやや薄さと荒さを感じましたが、音に厚みと豊かさが加わります。ポータブルリスニングでは最高レベルのひとつと言って良いでしょう。
音のキレはよく打楽器のアタック感の気持ちよさはひとしおです。

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AK70とxDSD、AQ DragonTail使用

デジタルフィルターは今まではAMRの設定を受け継いだMPフィルターなどでしたが、今回からMesureとListenに分かれて音の硬さが変えられます。トルステン博士は普段はListenでいいよ、と言ってたように思いましたがListenだと音が柔らかめで、Mesureだとよりシャープ傾向があると思います。
これは組み合わせるイヤフォンによって、きつめならListenにするとか、より先鋭的に聞きたいときにはMesureにするとか好みで変えられると思います。


xDSDの特筆すべき長所はBluetoothでも極めて音が良いことです。
Bluetoothに切り替えるときはいったん電源を切ってから、電源オンの長押しを長めに押し続けると緑から青に変わるので指を離します。

BluetoothはiPhoneがイヤフォン端子を排したことで注目が集まっていますが、xDSDを使えばワイヤレスでも高い音質で楽しむことができます。Bluetoothの音質が悪いというのは多くのBTイヤフォンやアダプターが音の悪いBTチップ組み込みのDACをそのまま使うからですが、xDSDならばRetro Stereo50ベースの高品質なDA変換を行うとともに、高精度のクロック・システムもBluetoothに使用されて抜かりがありません。
実のところxDSDではBluetoothの音質が際立って高いのが特徴です。比べればやはりiPhoneとはUSB接続の方が音質は高いのですが、少し劣るくらいと言ってもよいような音質の高さには脱帽します。スマートフォンとの組み合わせではよりBluetoothを使いたくなることでしょう。

xDSDは音が良いのでさまざまなイヤフォンを使って試してみたくなります。

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xDSDとMaverick II カスタム

xDSDでは音の切れ味が鋭く、アタック感もよいのでUM Maverick IIカスタムとの相性も抜群です。

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xDSDとHeir TZAR 350/Beat Signal

xDSDのパワーと音の純度の高さをインピーダンス350オームとSignalのレアメタル線材で生かそうという組み合わせです。Tzar350で音が綺麗に伸び上がっていく感じは他で得られない気持ち良さがあります。

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xDSDとCampfire Lyra2/Dita cable

引き締まった歪み少ない音でかつパンチがある音というとこの組み合わせもなかなか魅力的でした。


* まとめ

xDSDは音質、機能、電池の持続時間、操作性、小型軽量のすべてを妥協なく実現した優れた機種と言えます。それらすべてを高度に統合したのが、トルステン博士率いるiFI Audioの技術力の高さともいえるでしょう。
スマートフォンをよく使いストリーミングを良い音で聴きたい人、ハイエンドの音がほしいが小型のポータブル機器がほしい人、先進のMQAをさっそく試してみたい人など進んだポータブルオーディオユーザーにお勧めです。

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xDSDとWestone ES80
posted by ささき at 09:18| ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする