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2017年08月15日

JH Audio初のハイブリッドIEM、LOLAレビュー

LOLA(ローラ)は、Jerry HarveyのJH Audioが初めて開発したハイブリッドIEMで、シリーズとしてはPerformanceシリーズとなります。調整できる低域ノブなど、Sirenシリーズの特徴も兼ね備えています。ちなみにLolaはKinksの曲名です。
LOLAはカスタムとユニバーサルの二つのタイプがあり、本記事はユニバーサル版のレビューです。
製品名はJH Audio社ユニバーサルフィットIEM 「LOLA HYBRID UNIVERSAL IEM」でミックスウェーブから2017年7月13日(木)より発売されています。

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特徴

通常ハイブリッドというと、中高域がBAで低域がダイナミックを採用するのが普通です。これはよく中高域が伸びて整ったBAドライバーと、迫力のある低域を再現するダイナミックの良いところどりをしたいという構図と言えます。
それに対してLOLAのアプローチは異なっていて、高域、中域、低域のうちの中域にダイナミックドライバーを採用し、高域と低域はBAを使用しています。また中域のダイナミックドライバーもD.O.M.E(ドーム)という独自技術を採用しています。これは人の声や楽器の多くの再現の基礎となる中音域に暖かみのあるダイナミックを用いるということです。またD.O.M.E.は2基のダイナミックドライバーが対向型で駆動するというもので、より広い振動版を採用したのと同じような効果があるということです
ドライバーのカバー領域は低域がBAの2ドライバーで10-200Hz、中域がダイナミックの2ドライバー(DOME)で200-3kHz、高域はBAが4ドライバーで3kHz-20kHzとなります。

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パッケージはなかなか豪華なもので、従来のSirenシリーズのような構成を取っています。ケーブルもSirenシリーズと同様のようですね。

音質

AK380でまず聴いてみました。低域調整ノブは2時で固定して聴きました。高域はシャープだが厚みがあって高級機であることを感じさせてくれます。中高域ではバロックバイオリンの倍音表現は見事なものがあります。またジェリーらしい低域にたっぷりとある低域がロックを心地よく聞かせてくれます。打撃感も強く、ドラムやベースのインパクトは気持ちよく楽しめます。LOLAは他のJHAのSirenシリーズのように低域ノブを調整することでまた異なる面も聴かせてくれます。
フラッグシップらしい堂々たるスケール感や豊富な情報量、JH Audioらしい音の濃さとたっぷりしたベース、またプロデューサー向きともいえるような客観的な音つくりはLAYLA2とよく似ていると思います。その点でアグレッシブなRoxanneとLOLAは異なるタイプと言えます。

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LAYLAとLOLAの違いをアカペラヴォーカル(Rajaton)で比べてみると、LOLAの方が中域をはじめ全体に音に厚みや豊かさがあります。反面でLAYLA2の方がBAらしい精緻ですっきりした感はあるので、違いというのは好みの要素も働くでしょう。LAYLA2とは性能の差ではなく個性の差だと行ったほうが良いかもしれません。
ただしLOLAは、いわゆる古風なダイナミックドライバーでありがちな厚みがあるけど緩い音とは違って、よく整って引き締まった音ですのでいままでのハイブリッドとは異なって、ちょっと聴くとダイナミックっぽい感じではないと思います。これはDOMEの効果というのもあるかもしれません。

AK380からSP1000SSに変えると、音性能が上がるだけでなくカッコ良く鳴りますね。よりジェリー作品らしい感じです。この辺はAK70の遺伝子をもったSP1000の良さをうまく引き出しているように思います。

まとめと考察

LOLAは細かいところでの違いはありますが、LAYLA2に似た高度な音再現レベルであり、異なったテイストを持っています。両者の差は好みの問題になるかもしれません。

Lolaで、なぜ中域のみダイナミックかということについては、春のヘッドフォン祭で私が司会をしたジェリー・ハービーのインタビューにおいて少し聞いてみました。
まず完璧なマルチドライバーイヤフォンを開発したいというところからはじまったということで、いままでの試行錯誤から、ダイアフラムスピーカー(ダイナミック)のスイートスポットが高域でも低域でもなく、200hz - 3000hzの中域にあるということがわかったということです。
なぜ一基ではなく二基かというと、まずインピーダンスを下げて感度を上げたかったそうで、向かい合わせにしてその間の空気を調整することで求めるハイミッドの周波数特性が得られたということです。二基の4.9mmドライバーで9.8mm相当のドライバーにすることができるからということもあります。これによりひずみが起きる前に求める出力をえることができるからということ。
なおクロスオーバーは、ガンズのギターを正確に再現できるように変えていった。中域重視の設定になっているとのことです。

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このインタビューでジェリーは自社ブランドで一番気に入っている製品は、LAYLAとLOLAのどちらかだけれども、いまは中域の音質が気に入っているからLOLAがよいと思うとのこと。
LOLAは設計するときの音つくりにおいて、おそらくジェリー自身も気に入っているLAYLAをリファレンスにして作ったのだと思いますが、新開発のD.O.M.E.もダイナミックをよりBAのような整った音に近づけるように使われているように思います。ダイナミックとしての暖かみとかインパクトの特色を出すよりも、むしろBAと融合させてより自然な音にするということですね。

LAYLAがある意味でJHAイヤモニの完成形のようなものなので、この音質レベルで別なアプローチがしてみたいとジェリーは思ったのではないでしょうか、そしてこの独特の中音域ハイブリッドという形式に至ったのではないかと思います。
今後JH Audioがこの形式を継承していくのか、今作限りなのか、そこも注目してみたいと思います。
posted by ささき at 08:44| __→ JH13, JH16 カスタムIEM | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする