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2017年06月28日

シングルダイナミックの到達点、Dita Audio Dreamレビュー

DreamはAnswerで日本、そして世界へデビューしたシンガポールのオーディオメーカーであるDita Audioの最新作にしてフラッグシップです。Answerもデビュー作にしてはなかなか練られて時間をかけて作られていましたが、Dreamではいっそうの作りこみがなされています。
参考としての直販価格は¥219,980 円(税込)とAnswerよりも上になりましたが、ダイナミック型シングルドライバーイヤホンの究極といってもよいでしょう。しばらく使いこんでみてそう思います。ダイナミックだけではなく、マルチBAのフラッグシップクラスとも比肩できるレベルと言えると思います。

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下記は代理店アユートさんの製品ページです。
http://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_2103.php

Answerに比べると全面的に刷新されたまったく新しいデザインを採用しています。
なかでも特徴的なのはAwesomeプラグというプラグ交換システムです。Awesomeというのは「すごい」という意味ですが、これはプラグが交換可能になっていて、プラグを交換することで3.5mmアンバランスや2.5mmバランス、4.4mmバランスにも対応できるというものです。ケーブル線材は引き続きVan den Hulが担当して、シルバータイプの線材が標準で使われています。
Answerでは接触面をできる限り減らしたいというオーディオファイルらしい要求からあえてケーブル交換可能な形にはしなかったのですが、Dreamでは2ピンによりケーブル交換が可能になっています。
これもCEOのダニー氏に言わせるとどちらかというと断線した時の保証のようなものということです。実のところ標準でついているVan den Hulのケーブルの品質の高さを考えると交換する必要はあまりないかもしれません。しかしながらバランスにも対応は必要であるという点からプラグ交換という仕組みに行きついたわけです。
実際使って見ると、ケーブル交換するよりも簡単に3.5mmと2.5mmバランスの交換ができますし、音自体は変化しないのでこの仕組みはなかなかよくできています。AKプレーヤーとMojoの使い分けなんかでも簡単です。

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このほかにも全面的に新設計となり、ハウジングは精巧な技術を有する日本で加工される高精度のチタン製のシャーシです。これはエアフローの最適化とダンピング制御の向上にも貢献しているとのこと。音響工学に基づき設計したチタンシャーシ内の形状を、精度高く切削するだけでなく、全ての接触面を限りなく平面に研磨する為に、精巧な技術を有する日本でシャーシ加工を行うという凝りようが再びここでも発揮されています。
新開発の10mm 径ダイナミック型ドライバーはカーボンコーティングを施したマルチコート・マイラー振動板の採用、そして 高純度 OFC によるボイスコイル、高磁力のリングマグネットとポールピースの 搭載など、Dita Audioの哲学でもある「気品あるシンプリズムにより純度を限りなく高く」という目標のもとに、広帯域に渡りレスポンスに優れた自然で正確なサウンドを提供するとされていますが、まさに息をのむような音性能の高さには圧倒されます。
またドライバーの左右差が極限に近く少ないのも特徴で、これによって位相のそろった立体感の良い音再現が可能になります。

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ボックスは豪華なもので、なかなか洒落たイヤフォンケースが付属してきます。付属品としては音の違うイヤチップが3種類ずつ、S/M/Lとついているのでそれで音を自分のの好みでチューニングすることができます。
またT400くらいのサイズのチューブなのでわりとさまざまな市販イヤチップを使うこともできます。

デザイン

Dreamのハウジングはチタンで成形され、頑強さと軽さを兼ね備えています。特徴のひとつはAwesomeプラグ(awesomeはすごいの意)です。Awesomeケーブル/プラグについてはまた別記事で詳しく書く予定ですが、ケーブル交換ではなくプラグ交換と言うのは3.5mmと2.5mmをよく取り変える場合にたしかに便利だと思います。線心自体は4本で根元まで来ていますので、3.5mmでも立体感は高くなっています。
ケーブルプラグは2ピン仕様で、新バージョンではかなり硬くて抜けにくくなっています。
チタン製のハウジングは装甲か鎧のようで、Awesomeプラグのプラグのネジなんかとも合わせていかにも精密感とメカメカしい感じがカッコよいと思います。

音質について

Dreamの最大のポイントはなんといっても音質の良さです。ダイナミックではトップクラスと言ってよいでしょう。いや、ダイナミックでは、と断る必要もないかもしれません。
まずAK380単体の3.5mmで聴きましたが、驚くほど音が良いという感じで、あのDitaのAnswer truthよりも格段に良くなっています。
音の個性はAnswerをさらに進化させたように、基本はがっちりとしたクリアではっきりとした音の輪郭を持っていて音の切れ味がするどさを聴かせてくれます。
以下で音の特徴をポイントごとに述べていきます。

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「ダイナミックらしくない圧倒的な解像力と切れ味の鋭さ、ダイナミックらしい迫力と躍動感」

Dreamは全体にマルチBA機と比べると重みがあってダイナミックらしい迫力を感じます。ダイナミック機の中でも音に重みや厚みが高く感じられる方だと思います。
一方でダイナミックの甘さは少なく、極限までだぶついた贅肉がないとても先鋭な音再現を聴かせてくれます。

DreamはBAのような切れ味と解像感、ダイナミックの音の厚みを持ってると言っても良いでしょう。
特にアコースティック楽器は圧巻で、たぶん売ってるイヤフォンの中でも最強レベルと言ってよいかもしれません。楽器の音の再現力、ヤニが飛ぶようなリアルさと解像力、シャープな切れ味がためいきものです。
私が思ったのは切れ味の良さでNobleのKatanaに似てる感じですね。躍動感と言う意味ではK10 encoreのダイナミック版といっても良いかもしれません。K10でいえばこの極限的なクリアさ透明感はオリジナルではなくencoreの方です。それをダイナミックにした感じでしょうか。
ひずみ感が少なく音がすっきりピュアで、引き締まって贅肉もない。それでダイナミックだからドラムやベースのアタックも鋭いと感じられます。

解像力が高く、細かな音の粒子を積み上げて、音鳴りのリアルさを再現するのは圧巻です。
普通シャープなイヤホンは乾いて人工的な音になりがちですが、Dreamは音の生々しさとか自然さという点でも今まで聴いた中でトップクラスです。これはチューニングの妙もあると思います。前のAnswerのように鮮明で切れ味の良さも感じられますが、厚みとか豊かさも増して、自然でリアルな表現に進化してます。
ピアノの音の歯切れがよく、ただのソロピアノでも気持ち良く、存在感が高まります。バロックヴァイオリンの弦の鳴りの倍音が豊かでリアルさを高めます。
細かい音がよく聞こえ、AK380のクロックの正確さや改造力など、そのポテンシャルを引き出してると思うし、AK380がさらに一段と高音質に感じられます。

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Ditaの提供するジャズ音源を聴くと驚くくらいの生々しさを感じられます。音の鮮明さがよくわかり、楽器の音の忠実な再現、ヴォーカルの息遣いの生々しさがよく伝わって来ます。アーティストが、録音エンジニアが、伝えたかったものがよく伝わって来ます。ダイナミックとしての躍動感もひときわ高く感じられます。
例えばオールドロック懐古的で録音も良いトレバーホーンのThe Producersだと今まで聴いた中で一番良い再現を聴かせてくれます。
スピード感もあり、ノリも良く、ドラムやベースの切れも良い。ドライブ感やパワーも感じます。

ただし録音や曲によっては高域がきついと感じることもあります。しかしながらこれはDreamのせいというよりもむしろ録音のせい、特にPCMのデジタルっぽさに由来するところが大きいともいえます。こういうように顕微鏡のように音のささいな凹凸もあぶり出すようなイヤフォンこそ、DSDネイティヴ再生で聴いてほしいと思います。たとえばRyu MihoのDSD11.2Mhz音源をAK380で聴いてみてください。これが本当のDreamの実力であり、今まで一番DSDネイティヴの良さを生かせるイヤフォンと感じられます。DSDネイティブとPCM再生の差がいままでのイヤフォンではそれほど大きな問題と感じなかったということですね。
とはいえ現実にはPCM音源できつい録音を聴くことも多いわけですから、そのときはチップで少し工夫するということはできると思います。

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* Dreamのチップ選び
ユニバーサルイヤフォンのポイントの一つはイヤチップが大事で、かつ音を変えることもできるということです。いくつか種類があるときには装着性とともに音の好みも大きい要素となってきます。Dreamの場合には標準で3種類のチップがついてきます。これらは開口部の大きさで違いがあり、大きいものほど高域が強くなる傾向があります。もしきつさを和らげるという点では青いチップが一番良いと思います。
またDreamはステムの太さが適度なので、わりといろいろと社外品のイヤチップが使えます。コンプライのフォームチップはT400が使えます。高域を和らげて低域を増やすという点では良いのですが、もともと低域の量感はフォームでなくても十分確保できていることと、Dreamの良さである歯切れの良さが少し減退するようにも思います。フォームチップだとCampfire Audioのフォームだと歯切れの良さはそれほど減らないのでフォームを使いたい場合にはお勧めですが、
社外品のイヤチップではやはりスピンフィットが装着性と音質のバランスで最も良いと思います。まずクリアさと解像感は半端ないですね。

「シングルダイナミックらしくない帯域再現、シングルダイナミックらしい立体感」

Dreamは上から下まで均質性が高く、高域表現の鋭さ、豊かな低域、明瞭感の高い中域など、シングルダイナミックとは思えないくらいのワイドレンジです。
高域はきれいに淀みなく伸び、高域のベルの音が気持ち良く感じられます。
低域はやや多めで、ダイナミックらしい重みがあります。ロックではこの重みが気持ち良いです。Answerでも低域をすこし増していたのですが、今回も期待通りにだっぷりした低域を堪能できてダイナミックドライバーの魅力を伝えてくれます。
中音域のヴォーカルは肉感豊かで艶っぽさがあります。立体感の良さと相まってくっきりと浮き出るようにヴォーカルが聴こえるのもDreamの魅力です。これはあとで書くようにチューニングの完成度が高いこともあります。
ヴォーカルは適度な湿り気があって無機質にならないのはダイナミックならではの魅力を両立させています。BAにありがちな無機的ではありませんが、着色感があるというほどには音に色はありません。

Dreamの特徴のひとつは立体感が際立って良いことです。特にAK380のようにDACの優れた再生機で聴くと3.5mmでは聴いたことないレベルの立体感が味わえて圧巻です。音の重なりという意味だけではなく、左右の広さと言う点でもすべてのイヤフォンの中でもかなり広い方だと思います。
これはマルチBAに対してはシングルドライバーと言う位相の優位さもあるでしょう。むしろシングルダイナミックだから達成できたものかもしれません。またこれは左右ドライバーの性能マッチがうまくいっているというチューニングの要素もあると思います。

クラシックでも迫力があってスケール感を感じられます。低音がたっぷりあってピラミッドバランスがあり、シングルの位相の良さで音場も良いと思います。
3.5mmシングルエンドでも音の広がりが良く、これはケーブルの良さもあると思います。ロックでもダイナミックらしく線が細くならずに太めのパワフルな気持ちよいインパクトを聴かせてくれます。
バランスに変えるとさらに音が回りこむように広がります。これもまた魅力的です。

「完成度の高いチューニング」

実のところDreamの良さの基礎を支えるのは、かなり完璧なチューニングだと思います。
長く開発に時間がかかっただけあって、高いところから低い音まで見事にチューニングされています。ここに来るまでにDreamにはいくつかのプロトタイプがあり、ひとつ前は中域の低域かぶりがあって少しヴォーカルが曇ってた(それでも他機種ならオーケーレベル)んですが、この製品版では見事にスッキリと晴れ上がっています。ヴォーカルの聴き取りやすさはイヤフォンでもトップクラスでしょう。
十分なほどの低音の量感があって、音楽全体の豊かさを増してるが、中域が曇るほどではありません。
CEOのダニーは音作りにおいて完全主義者で交換ケーブルも拒否してましたが、今回はそこはゆずって音のチューニングで完全を求めた感じですね。

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まとめ

DreamはAnswerの良さは引き継いでさらに進化したものと言えます。
変わらないものは音質と機械工作的なこだわりです。
いわばダイナミックらしくない切れ味の良さ、ダイナミックらしい音の豊かさと厚み暖かみを有しているのがこのDreamです。

ここでいままでのサブタイトルを再掲することでまとめとします。

1. 「ダイナミックらしくない、圧倒的な解像力と切れ味の鋭さ
ダイナミックらしい迫力と躍動感」

2. 「シングルダイナミックらしくない帯域再現
シングルダイナミックらしい立体感」

3. 「完成度の高いチューニング」

感度はちょっと低めですが、AKプレーヤーでも音量は取れます。iQuve V5のように強力なアンプを使って鳴らしてあげると立体感などがさらに際立って良くなります。

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いままでダイナミックドライバのイヤフォンを選ぶ場合には絶対的な音性能の高さではなく、暖かみや躍動感と言ったポイントで選ぶことが多かったと思います。たとえば、音質の最高レベルを目指すならばマルチBAのカスタム、でも暖かみのあるダイナミックも良いかな、という感じでしょうか。
Dreamは音性能の高さで純粋に選ぶこともできるダイナミックドライバー機であり、高いレベルでイヤフォンの音の魅力を両立しています。

Ditaのはじまりはヘッドフォン祭でした。青山だった時ですが、シンガポールのメーカーでイヤフォンを作ろうとしているところがあるのでちょっと見てもらえないかと言うことで、呼ばれてアンダーテーブルで彼らに初めて会いました。それはいまのAnswerのプロトタイプで、これはハイエンドだと言い想定価格もかなり高めだったのですが、音を聴いてみたらこれはかなり良いのでいけると思いました。まず日本市場で認めてほしいということだったのですが、その年の秋のヘッドフォン祭では持ってきたAnswerがすべて売れたということでまずはよかったと思いました。そしてDreamが構想され、長い時間がかかりましたが、ここに結実したと思います。彼らの情熱が"Dream"を実現したと言えます。
このようにDreamは現在最高のイヤフォンの一つであり、シングルダイナミックとしてはひとつの到達点といえるでしょう。
posted by ささき at 22:21 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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