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2017年03月16日

Hugo 2とChord固有技術 パルスアレイDACの仕組みと利点

本日アユートのChord製品発表会で私がロバートワッツをまじえてHugo2とChord社の独自技術の解説をしました。

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Chord社の主要技術であるパルスアレイDACについては詳しく解説する機会はあまりなかったと思いますので、ここでまとめてみます。

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一般的なDACではESSやバーブラウンなどのように市場に売られている汎用品のDACチップICを買ってきてそれを使います。
ChordではFPGAを中心に据えたより洗練されたものでパルスアレイDACと呼ばれます。これはFPGAが独自のプログラミングができるカスタムICであるから可能なことです。
FPGAではWTAフィルターやボリューム・クロスフィードなどデジタルドメインの処理を担当します。処理の細かさであるタップ数はHugoの26368タップから、ほぼ倍の49,152タップに向上しています。またWTAフィルターは二段階になっているのですが、Hugoでは初段が8FS(CDの8倍)、二段目が16FSだったところが、Hugo2では初段が16FS、二段目が256FSとさらに細分化、高性能化されています。
ちなみに二段目の256FSフィルターはDAVEに使われているものと同じだそうです。このようにHugo2には先行していたDAVEゆずりの技術がいくつも採用されています。
またFPGAはMojoと同じシリーズ7のザイリンクスのFPGAですが、電源の関係でその性能を十分な発揮できなかったMojoに対して、より電源に余裕のあるHugo2では100%その力を発揮できたということです。

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そしてFPGAでフィルタリングされたデジタル信号はフリップ・フロップ回路(IC)に送られてアナログ信号に変換されます。一個のパルスアレイは上の図のFPGAの横にあるフリップフロップICと抵抗のペアで、上の図では4組見えています(回路図はMojoのものです)。
よくChordのパルスアレイDACはFPGAをベースにしているということでFPGAチップでDA変換がおこなわれているようにも言われることがありますが、実際にはFPGAではなく、そこから出たデジタル信号をこのフリップ・フロップ回路と抵抗の組み合わせでアナログに変換します。
ただしフリップ・フロップ回路に送られるパルスアレイ信号はFPGAによって作られるため、FPGAとフリップ・フロップ回路は分離できず、ハード的には双方を合わせてパルスアレイDACと呼ぶのが正しいでしょう。

このフリップ・フロップ回路と抵抗のペアをパルスアレイエレメント(要素)と呼び、Hugo2では片チャンネル10個のパルスアレイ・エレメントで構成されます。HugoとMojoでは4個、DAVEでは20個。ロバートによると、パルスアレイエレメントが4つの場合はどうしても妥協があるということです。

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パルスアレイDACはスイッチング動作によってデジタル信号をアナログにします。上の図はHugo2の10個のパルスアレイの様子です。
この10個のパルスアレイ・エレメントでパルス信号を10列の並列的にスイッチング動作させてアナログに変換します。そのためパルスのアレイ(列)と言います。
横に見ていくと、7のときは7個のパルスアレイエレメントがオンとなり、8のときは8個オンとなります。

パルスアレイDACのポイントはスイッチング動作が入力信号と無関係で一定だということです。
ここは分かりにくいと思いますが、たとえば4本の指が4つのパルスDACエレメントと思ってください。一本の指がひと組のフリップフロップICと抵抗に相当します。
4本の指をすべて上にあげると最大音量です。すべてさげると最小音量です。中間の音量はどの指が上で、どの指が下かの組み合わせになります。実際に上げ下げしてみるとパルスアレイの様子がわかりやすいと思います。
このとき一本の指だけに着目すると、信号の大小にかかわらずやっているのは一定の上げ下げだけだということが分かるでしょう。上げ下げはスイッチング動作ですから、スイッチング動作は信号の大小にかかわらず一定というのはそういう意味です。
(さきに書いたように4エレメントの場合は妥協があるので本当はもっと複雑ということです)

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またこのときに一本を上げて、もう一本を下げると動きが相殺されるのが分かると思います。これでスイッチング時のノイズが相殺されます。実際は図のように少しずれて動作が行われるため、横から見ると互いの立ち上がりと立下りが重なることで、その悪影響をキャンセルできるということです。

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左が普通のDACのノイズフロア変動、右はChord DAC

このことはノイズフロア変動による歪に関係します。
ノイズフロア変動というのはDACの残留ノイズであるノイズフロアが、信号が入ることで変動してしまうということによって生じます。本来ノイズフロアは一定のはずですが、それが信号入力で揺れてしまうという現象で、音質の悪さとして働きます。(信号のハーモニクスと非同期になるから)
これはちょっと困ったことで、上の図のように一般のDACはかなりの量のノイズフロア変動があります。ChordのDACの場合にはさきほどの説明のようにパルスアレイの原理的にほとんどそれが生じませんし、出たとしてもわずかでスムーズなため音質にあまり悪影響を及ぼしません。

この辺がパルスアレイDACの優れた点です。もちろんChord DACではこのほかにも優れた部品や電源などさまざまな工夫をして最高の音質に仕上げています。ロバートワッツによれば、Hugo2の仕上がりにはかなり満足しているということです。

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実際に聴いてみても前Hugoからの音質向上は顕著で、シャープだけれどもきつく感じられることがあった前Hugoにくらべると、まるでDAVEを聴いているかのようなスムーズで自然な高品質の音はDACのあるべき姿を聴いているかのようです。
posted by ささき at 23:52 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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