Apollo 7のErato Audioからクラウドファンディング(indieGoGo)にてMuse 5とRio 3という新しい完全ワイヤレスイヤフォンが発売されました。Muse 5については国内導入されるようです。Eratoは台湾系のオーディオメーカーでnuForceとも関連があります。
Muse 5
Muse 5はApolloの兄弟ともいえるもので、小口径ドライバーを採用しています。ただし独自の特徴があり、イヤチップのほかに独自の装着性をよくする外耳用のスリープが採用され、3Dサウンドとして音場を広げる回路を内蔵しています。チャージャーもついていますがコストダウンされた感じで、Apolloよりも低価格です。
Rio 3
Rio 3は大口径ドライバー採用です。耳フックが付いているのでスポーツモデルに見えますが、音質もかなり良いです。Museより低コストでチャージャーがついていません。大柄でボタンも片側3つついています。
以下はiPhone 7 Plusで聴いています。
* ドライバー
Muse 5のドライバーは5.5mmの小口径ダイナミックドライバーを採用しています。Rio 3のドライバーは14.2mmの大口径ダイナミックドライバーを採用しています。
この違いはそのまま音質に現れてきます。最近ShureやSennheiserが小口径ダイナミックを採用しているように、大きいから良いとも限りません。ただし大きいドライバーにはそれなりの良さがあります。(後述)
両者は音質の差というよりも音の個性の差が大きいと感じます。
* スマホとの接続、左右ユニット接続
スマートフォンとの接続はBluetoothを採用、左右ユニット間の通信方式は明記がありませんが通常のBluetoothだと思います。
Muse5の場合、左右の音切れはかなり少なく優秀です。一日使っていて数回あるかないかというレベルです。最近は完全ワイヤレスも増えてきて、左右音切れを防止するためにNFMIを採用するモデルも増えてきましたが、BTでもこのくらいのレベルになると十分であるようには思います。
音切れ確認テストとして、ためしに両手で両耳を覆うと左(親機)は切れませんが、右の子機は切れます。iPhoneをポケットに入れていても親機との接続は切れません。電車の中のようにWiFiの濃い環境でも特に問題ありません。
ただし、たまに音が切れたまましばらく戻らないことがありますが、リスタートすると直りますのでおそらく電波的なものではなくソフトウエアの問題だと思います。
Rio3は左右の音切れはややあります。ただしEarinやW800BTよりはずっと少なくて、Aria Oneと同等かやや良いくらいです。なぜMuse 5と違うのか分かりませんがファームウエアは違うところに出しているのかもしれません。
両方ともペアリングは同じで、まず書かれた手順により左右をペアリングします。そのあとでいったん電源切って親機である左をスマートフォンとペアリングします。そしてふたたび右を立ち上げて左右を接続します。このときに音声ガイドがあり、左右接続の時は"True Wireless connected"、スマートフォンとつながったときは"Phone connected"としゃべります。
この辺はやや煩雑で、AirPodsとは差が出るかもしれません。
両方とも日本語マニュアルがあります(クラウドファンディングモデルでも)。ただしやや分かりにくいです。
* 対応CODEC
Muse 5、RIO 3ともにAptX,AAC,SBCに対応しています。またRio3ではどのコーデックで受信しているかの確認がLEDでできます。これは珍しいですね。
* チャージングステーション
Muse 5はApollo 7 同様にチャージャーがついています。ただしApolloの金属製のチャージャーに比べるとプラスチックでやや安くなっています。これは全体的なコストダウン(Apolloの約半額)を考えると仕方ないでしょう。
Muse 5チャージャーケース
実用的にはあまり問題ありませんが、独特のイヤチップのおかげでややはめ込みにくくなっています。ラフにはめ込んで軽く左右にひねると入りやすくなります。ユニットに赤いランプがつくと充電&電源オフとなります。完全ワイヤレスでありがちな、片側だけの充電もこのランプで防止できます。Muse 5はApolloよりも長く4時間持ちます(実測)。
Rio 3はチャージャーがなく、その分長く6時間電池が使えます。充電は各ユニットごとにマイクロUSBの口があるのでそれで充電します。同梱で二股のUSBケーブルがついてきます。
* ユニット側での操作
Muse 5はワンボタンでApollo 7と同様な操作ができます。ボタンが大きくなったのでやや操作感は向上しています。
Rio 3は3つの独立したボタンがあり、多様な機能がありますが、指探りで引っかかりがないのでどのボタン触ってるかがわかりにくいのが難点です。デザイン性はともかく、独立のポッチにした方がよかったと思いますね。
いずれにせよどちらも再生のポーズは簡単なので、ちょっと音楽を止めて外の音を聴きたいと言う時には役に立ちます。
こうしたBTで左右独立タイプの場合は子機側に操作系があると子機側を手で覆ってしまい途切れることがあるので、操作系は親機側においたほうがよいと思います。NFMIだともっと柔軟性があるかもしれません。
* 通話機能
Muse 5もRio 3もマイク内蔵で通話が可能です。またSiriなどの操作にも使用できます。
* 外観と使用感
Muse 5
Rio 3
両方とも箱・パッケージはよくできています。パッケージデザインは共通です。Rio 3にはチャージャーケースがないのでジップポーチがついています。
Muse 5
Muse 5の大きな特徴はフィットスリープという外耳用のスリープがついていて、セミカスタムのようにフィットの適用範囲が大きいということです。これはいままでのイヤフォンにはなかった特徴です。つまり従来通りのシリコンイヤチップのS/M/L、フィットスリープのS/M/Lの3x3の組み合わせでフィットできることになります。
Muse 5のイヤチップとフィットスリーブ
このフィットスリープは実際かなり有効です。特に外耳のフィットスリープは向きが重要なので、少し回転させながらポイントを探すと良いと思います。装着感はすべてのユニバーサルの中でもかなり上位と言えます。
Rio 3
RIO 3はやや大柄でフックにかけるタイプのためにやや装着に違和感はあります。耳掛けは柔軟で痛さはあまりありません。イヤチップは普通のIEMのようにラバーシリコンのイヤチップを使います。
Rio 3は装着性、遮音性に関しては標準的というくらいです。
* レイテンシー
Muse 5はHuluで映画を見るときはまあ悪くない程度だと思います。ゲームではちょっと使えないですね。Rio 3はもう少し遅れます。ちょっと映画でもつらいかもしれません。ただどちらもW800BTよりはかなり良いです。
* 音質
Muse 5の音質はかなり上質です。Apollo同等かそれ以上で私が聞いた中では完全ワイヤレスでいまのところ一番音が良いですね。
だいたいApollo 7と同じような音ですが、遮音性がより高いのと3D機能(後述)があるので実質はMuse 5の方がよいと思います。
シャープで歯切れが良く、スピードがあってノリが良い感じです。ベースの打撃感が鋭くパンチがあります。低音の量はほどほどですが深みが感じられます。全体にわりとワイドレンジ感もあります。ダイナミックだからはじめ音は甘いので、最低3-4時間はエージングして聞いた方が良いですね。
Muse 5
Muse5の売りの一つの3D機能ですが、標準で聴く分にはわりと自然で常用できます。感じとしてはサラウンドというよりは上質なクロスフィードだと思います。
メールによる製品説明によると、右側ユニットに仮想的に左側の音が聞こえるように、という説明なのでDSPを使用して左右チャンネルを混ぜるような仕組みであり、やはりクロスフィードの一種と言えると思います。ただこの仕組みにHead Related Transfer Function (HRTF)というノンリニアで周波数に応じた仕組みを採用しているところがみそのようです。
Rio 3
Rio 3も音質はかなり優れています。Muse 5とくらべると第一印象はRio3の方が音がいいかもとも思います。まあまあクリアというところですが、迫力がかなりあってパワフル。スケール感もあります。さすが大口径でダイアフラムでかい(15mm)だけありますね。低域がイヤフォン離れして、ヘッドホンみたいな余裕のある音が出ます。
なめらかで、思ったより低音出っ張ってる感はなくて、くらべるとAria Oneの方がドンシャリっぽい感じです。低音出るっていうよりも、迫力があってスケール感もあると言えます。また素直できれいな音色も良いです。
ただしよく聴きこむと、ワイドレンジ感とか音の細かさはMuse5やApolloの方が良いと思います。くらべてみるとMuse5の方が端正な音ではあります。どっちかというとオーディオファイル向けですね。ただしぱっと聞きはRio3が良いと言う人も多いでしょう。Rio3はより一般向けで、ロック系はRio3の方が好ましいと思います。
いずれにせよ小口径と大口径のダイナミックドライバー競演というか、それぞれのよいところがうまく生かされているのはEratoさすがだと思います。
* まとめ
簡単にまとめると、Muse 5は端的に完全ワイヤレスで私が見たなかで一番良いです。欠点も少なく、音質も良いですね。電池も十分持ちます。ただし全体にApollo7よりは低コストにした感があってチープではあります。またチャージャーの収納性と取り出してすぐ電源オンに関してはEarinの方がよいですね。それとペアリングはなんとかしてほしいところ。
Rio3は音質が独特で高得点ですが、操作性が良くないとか左右音切れがややあるなど欠点もあります。まずMuse 5を買って、お金に余裕があれば違う音質を楽しむためにRio 3も買うのがお勧めです。(わたしはRio3は70$くらいだったので)
Music TO GO!
2017年02月13日
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