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2016年11月07日

Campfire Audioの新ラインナップ発売、VEGA、DORADO、LYRAIIレビュー

すでにヘッドフォン祭でも展示がありましたが、Campfire Audioから新しいラインナップであるVEGA、DORADO、LYRAIIの3機種が加わりました。

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左からVEGA、DRADO、LYRA II

国内ではミックスウェーブが本日からVEGA、LYRAUを販売開始、DRADOは後日販売開始と言うことです。価格はVEGAが税別146,100円、LYRAIIが税別78,900円だそうです。
http://www.mixwave.co.jp/c_audio/c_news/caudio_news161104_01.html

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VEGA(左)とLYRA II

本記事ではDRADOも含めて3機種をまとめて解説と音のレビューを行い、今回のラインナップのポイントやそれぞれの個性と買うポイントを紹介します。

* Campfire Audioとは

Campfire AudioはALOの創立者としてこの業界では広く知られるKen Ballが創設したイヤフォンのメーカーです。ベリリウムダイナミックドライバーのLYRA、チューブレスで最近大人気のANDROMEDA、シンプルで人気の高いORIONなど、もう新興メーカーとは言えないくらい地位を確立したと思います。
ブランドの特徴としては、シングルドライバーに重点をおいているようにシンプル・イズ・ベストの哲学に基づく設計、もちろんALOの高品質ケーブルの標準添付、そしてブランド名の由来でもある米国ポートランドでの製造などがあります。

Campfire AudioはKenさんの情熱とクラフトマンシップのたまものと言っても過言ではありません。なぜALOというすでに確立したブランドがあるのに、Campfire Audioという新しいブランドを作ったのかというと、kenさんはケーブルというのはやはり部品の一つでしかないので、もっと根本的に自分で一からヘッドフォンやIEMを設計・製作するという気持ちがあったからだそうです。
そしていまはたくさんのイヤフォンブランドがあるので、自分ならではの考え(statement)をそれに盛り込まねばなりません。Campfire Audioではこれまでもシングルダイナミックにこだわったベリリウムドライバーの採用や、BAの音質を向上させるためのチューブレス設計(現在のTAEC)など個性的な製品を世に出してきました。

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ヘッドフォン祭でのKen Ball(右端)

ブランドの名の由来は、もともとALOのあるポートランドの西海岸は自然に恵まれた土地でKenさん自身もアウトドア好きだそうです。このアウトドアのキャンプファイアの灯りとはぜる音の瞑想的な雰囲気を音楽に例えたわけです。
そしてこの西海岸の夜空を見上げた時、その美しさの中にあるひとつひとつの小さな星々がCampfire Audioの製品名になっています。

* VEGA、DORADO、LYRAII - ダイナミックの深化と新たな挑戦

Campfire Audioは最近のANDROMEDAの大ヒットによりマルチBAでも知られるようになりましたが、原点はシングルダイナミックのLYRAです。これはKenさん自身のダイナミックドライバーへのこだわりと、マルチBA全盛への疑問がベースにあるということです。
今作では3機種ともにダイナミックドライバーが採用されていて、VEGAとLYRAIIは得意のシングル・ダイナミック、また新たにDORADOではBAとダイナミックのハイブリッド形式を採用しています。このため3機種ともにTuned port(ベント穴)がついています。ベントはイヤフォン内の空気圧を抜くことでダイナミックドライバーをより効率的に動かすための仕組みです。

それぞれの製品のポイントは簡単にまとめると次のようなものです。

1. VEGAでのダイアモンド(ADLC)ドライバーの採用

2. DRADOでハイブリッド構成を初採用

3. 復活した人気モデル、LYRA II

また今回のラインナップの共通特徴は流体金属のハウジング(筐体)を採用していることです。
初代LYRAではさまざまな材質のプロトタイプを作成して聴き比べて材質を決めたというくらいCampfire Audioではドライバーと同じくらいにハウジング(筺体)にこだわっています。
今回の3製品ではシェルに独自の流体金属を採用しています。流体金属を筺体に採用する利点としては、
チタンよりも高い強度、硬くて傷に強く、独特の質感があり、耐腐食性・化学変化に強い。また人体に優しい・アレルギーになりにくい、ダンピング能力に優れているなどの長所があります。
見た目も金属らしい高級感がありスマート・コンパクトで、ANDROMEDAやJUPITERのやや大柄でごつい筺体とはかなり異なっています。初代LYRAに近いですね。ただ表面はつるつるの初代LYRAに比べると艶消しのマット的な質感です。

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SpinFitチップを装着したDRADO、VEGA

また今回のラインナップからSpinFitチップの添付がなされました。標準以外のイヤチップは前まではComplyがついていましたが、今回から人気のSpintFitに変わっています。

これらに加えて、ANDROMEDA/NOVAから採用されたより優れた標準ケーブルも大きなポイントです。
初代LYRAからCampfire AudioはALO母体を生かして高品質ケーブルをつけていましたが、前ラインのANDROMEDA/NOVAからはさらに音質が良くなったと思います(ANDROMEDAの記事参照)。今回もその新しいケーブルが標準でついています。

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AK380, LYRA II

以降は機種別にレビューを書いて、最後にクロスレビュー的に今回のラインナップのとまとめと買いのポイントを書いていきます。

以下の試聴はすべて標準チップと標準ケーブルで行いました。これは条件を標準で聞くというのもあるけれども、Campfire Audioの場合は標準で十分以上に音質が良く、標準がよく音に会うというのがあります。ケーブルは言うに及ばず、標準のフォームチップも良いと思います。ただイヤチップは個人差があるのでこれは新しいSpinFitがあう人もいるでしょう。すべてたっぷりエージングしてから聴いています。

プレーヤーは基本的にはAK380を使用しました。はじめに結論を言うようでなんですが、これらをAK380で聴くとちょっとすごいです。特にVEGA。

-- Campfire Audio 「VEGA」レビュー  ダイアモンド(ADLC)ドライバーの採用

今回のラインナップの目玉ともいえるVEGAは、初のADLC(ダイアモンド・ライク・カーボン)を振動版に採用した、8.5mmシングルドライバーのダイナミック型イヤフォンです。いわばダイヤモンド振動版を採用したダイナミック型イヤフォンとも言えます。

名前はCampfire Audioらしく、こと座のもっとも明るい星であるベガから取っています。これは同じダイナミックドライバーのLYRA(こと座)と関係するということでしょう。ダイナミックドライバーの中でもひときわ輝くというような意味かもしれません。

* ダイヤモンド振動版を採用

VEGAの特徴はまずこの新開発のダイヤモンド振動版です。
好評だったLYRAでは高い硬度のベリリウムのドライバーを採用したことが高音質のキーでしたが、VEGAではさらに高い硬度を持つダイアモンドを採用したわけです。つまりLYRAのベリリウムのさらに上をいきます。B&Wのダイアモンドツィーターなんかもこの部類に入ります。

LYRAも振動版すべてがベリリウムではないのですが、VEGAも正確に言うと振動版がダイアモンドの単結晶で出来ているわけではなく、ADLC(Amorphous Diamon-like Carbon)、つまりダイアモンドとグラファイトの複合材(アモルファス)であるダイアモンド・ライク・カーボンという非結晶体の硬質の薄膜でコートされています。ADLCはダイアモンドの性質をかなり継承しているということです。

なぜ振動版にADLCを採用すると良いかと言うと、いくつか理由があります。

*ADLCはとても高いヤング率が特徴です。簡単に言うととても硬いということで、つまり伸びにくい・変形しにくいです。ヤング率はチタンが1.1なのにたいし、ベリリウムは2.8、ADLCは3.3と大変硬いのがわかります。このため振動版の端まで正しく信号が伝わり分割振動(場所による振動の差)が少なくなります。不要な偽信号を排除して、結果的に高音域をより上に伸ばし、低音域においてはひずみを減らすことができます。これはB&Wでツイーターに使われる理由と同じでしょうね。
これで高域も歪なしに伸びてワイドレンジと低い歪を確保できるというわけです。

*次にADLCは硬さと低密度の比が良く(つまり軽くて硬い)、これによりレスポンスの速さ、ダイナミクスの再現がとても良いということです。また軽いだけでなく硬いので、しっかりしたピストン運動ができます。これで原音に忠実な音再現が可能になります。

*またADLCの振動版は音の伝搬速度が速く、高域特性の向上がはかれます。さらに熱伝導率も高いので音を出すパワー効率が改善されます。

簡単にまとめるとADLCは硬くて軽く、音の伝搬が速く、熱伝導率が高いなど振動版として優れた特性を持っているというわけです。
音的にはワイドレンジで低ひずみ、クリーンで色付けがなく自然な音再現が可能となるということです。

* 外観

これは今回のラインナップの3点共通していますが、ケースに入ったイヤフォンはたがいにこすれて傷がつかないように小さな袋に左右別々に入っています。なかなか細やかな配慮です。

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VEGAはとてもコンパクトでメタリック、がっしりとした感触を受けます。VEGAはその明るい恒星のイメージのようにシルバーで光り輝いているように思えます。

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ALO製の標準ケーブルと高い強度のMMCX端子もこれまで通りの長所です。

* VEGAの音質

まずVEGAでは鮮烈なほどの透明感と音の明瞭さに驚きます。これってシングルドライバーか、これってダイナミックか、と思うような驚きの鮮烈な音質です。はじめは本当に一度スペックを再確認したくらいです。

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前に記事を書いたようにLYRAをはじめてきいた時もダイナミックというよりBAの先鋭さだと思ったんですが、VEGAはいっそう透明感が高くシャープです。またBAドライバーとも違ったシャープさを感じます。高域は録音が荒くなければそうきつくはなく、にごりがなくすっきりと鮮明感があるという言う印象です。楽器音はピュアで明瞭感を感じます。シングルながらスケール感があり、音の広がりが豊かです(ここはシングルゆえの位相的な音のフォーカスの良さもあるでしょう)。低音域も深みを感じるほど低い音が出る。シングルとは思えないほど、とても帯域的にワイドレンジです。
低域はタイトに引き締まり、中域は美しく、高域は繊細でひたすら上に伸びていきます。総じて言うと音の印象はモニター的、リファレンス的な音でニュートラルです。低域は十分ありますがLYRAIIよりも抑えられています。

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またBAとはやや異なりダイナミックドライバーらしい躍動感を感じますが、暖かみは後に書くLYRAIIよりも控えめで、色付けが少なくニュートラルです。
中域から低域のパンチ、アタックはダイナミックらしいところです。ダイナミックとしてもかなり鋭い方でしょう。全体に音がクリーンで低音はダイナミックのパンチとBAのすっきり感が両立されています。この低音域の感覚に一番近いのはマベリックのように思います。

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解像力がとても高く、音が並はずれてリアルです。たとえばワールドミュージックで土俗的な太鼓をたたく音では、太鼓の革の素材が分かるように音が響いてきます。ちょっと初めて聞くと気持ち悪いくらいです。また生楽器だけではなく、エレクトロ系でもプログラムされた電子的な唸りはリアルっていうと変だけれども、実在感があります。
またスピードが速くテンポの刻みが気持ちよく、音の切れが良いです。音の立ち上がり・下がりの遷移が速いと言う感じです。

シングルドライバーゆえに高音から低音まで均質であり、楽器の音のピントもぴったりフォーカスが合う感じです。音が左右に移動する際には気持ち悪いくらいの立体感があります。

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AK380があったまるにつれて音が良くなるのが分かるような感じで、たぶん手持ちの高性能DAPがより楽しめると思います。
VEGAの素晴らしさはAK380 copperでさらに引き出されます。音はさらにピュアで美しく、(測定的にはともかく)聴覚的にはワイドレンジ感もいっそう感じられます。
ニュートラルで無着色だけれども、音に美しさが感じられるのが魅力で、透明で忍野八海の湧水のように純粋に美しい感じです。

VEGAは従来のダイナミックドライバーに一石を投じたようなインパクトのある製品だと思います。

-- Campfire Audio 「LYRAII」レビュー  復活した人気モデル

LYRAIIはLYRAで好評だった8.5mmのベリリウムPVDダイナミック型ドライバーを採用しています。ドライバーは初代LYRAと同じものだそうです。新たに新素材の流体金属をハウジングに採用している。LYRAの正統な後継機という位置付けだと思います。

名称は前モデル同様に、こと座(リラ・ライラ)から取られています。

* 外観

外観はコンパクトで前モデルとは色は違うがよく似ています。良く見ると旧LYRAのセラミックっぽいつるっとした艶のある外観ではなく、マットの艶消し質感だけれど質感的にはあまり変わらないように思います。サイズもほぼ同じです。違いは標準ケーブルも新しいタイプだということがあげられます。

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オリジナルはセラミック素材という特殊な筺体材質を採用することで音質アップも狙っていました(実際に比較用に製作したアクリル筺体のプロトタイプよりも音が良かったそうです)。この流体金属とセラミック素材ではそれほどの差はないということなので、同様な音質的な向上もはかれるということのようです。

* LYRAIIの音質

音質はダイナミックらしい有機的な音で、たっぷりとしたソリッドな低音域と鮮明で歪のないLYRAらしいピュアな中高域が魅力的です。前にも増して有機的な音がしますね。ヴォーカルが暖かみがあって艶っぽくて良いです。
また前よりすっきりして抜けが良いように思います。上の伸びが鮮烈で美しく伸びる感覚があります。

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VEGAに似た透明感・高い明瞭感を持っていますが、VEGAの方がよりワイドレンジでフラット、ニュートラル基調です。LYRAIIはより重心が低く、ややウォーム感があり音楽的というと音楽的です。モニター的傾向はVEGAよりは薄まっています。VEGAよりも音楽的で、より躍動感と有機的な味を感じられます。
またLYRAIIの解像力はかなり高いのですが、やはりVEGAには譲ります。たとえば上にあげた太鼓の音の音質についてはVEGAの方がはっきりと革の材質がわかる感じがします。

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VEGA同様にシングルゆえの音の均一性はかなり良く、高域と低域はハイブリッドのように違う音ということはありません。

次にLYRA初代と比較しみました。
LYRA IIとLYRA初代を比較してみると外観はほぼ同じですが、外観の質感はセラミックと流体金属の違いがあります。初代はつるつるで艶がありLYRA IIはマット(艶消し)です。

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初代LYRAとLYRA II

旧LYRA2とドライバーは同じで似た感じの音ですが、(ケーブルが初代LYRAから変わったから)同じケーブルで両者を比較してみると、より音の抜け・すっきりさが向上して全体に音の均一性が増して音質がより高くなっているように思います。
念のためにケーブルだけでなく、イヤチップも新しいものに変えて同一条件にしたけれども、それでもやはりLYRA IIの方がより良いように感じます。
ただ機構的にはTuned portは基本的に前作と同じもので、ドライバーも同じなのでまったく違う音と言うわけではありません。

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LYRAIIは LYRAの正統な後継機で、単にハウジングが変わっただけではなく音質もLYRAの特徴を引き継ぎながらより向上しているように思います。実際この音質の高さを考えると価格も手ごろなものになっていると思います。

-- Campfire Audio 「DRADO」 レビュー  ハイブリッド構成を初採用

DORADOはLYRAに採用されたベリリウムPVDのダイナミック型ドライバーと、BA型ドライバー2基のハイブリッド設計が特徴です。

名前ははじめは黄金郷の意味のエルドラドから取ったのかと思ったのですが、実はこれもやはり天文名シリーズで、DRADO(ドーレイドウ)とは南天の星座の名前です。日本語だと「かじき座」ですね。日本からは見られないのであまりなじみないように思いますが、実はこれ、日本人にはおなじみのあの「大マゼラン星雲」を含んだ星座です。つまり距離は天文マニアでなくても分かる14万8千光年のかなたです。

* 初のハイブリッド構成

DRADOはCampfire Audioでははじめてのハイブリッド構成を採用しています。
高域側がBAで、低域側がダイナミックです。BA部分はANDROMEDAと同じドライバーとクロスオーバーを採用しています。ダイナミックドライバーはLYRAと同じだそうですので、いままでのCampfire Audioラインナップのハイブリッドです。

BAドライバーはJUPITERやANDROMEDAと同じチューブレス設計でアコースティックチャンバーをも採用しています。Campfire Audioではこの機構をTAECと呼んでいます。TAECとは"Tuned Acoustic Expansion Chamber"の略で、いままでアコースティックチャンバー(音響室)と書いてたものです。
これはBAドライバーの出力穴のところに置いた音響空間で、大きさと形を工夫することで高音域を伸ばし、不快なピーク部分を減らす働きがあります。つまり音響フィルターが不要なので音質もよりクリアになるというわけです。
DARKOの記事ではKenさんがDarkoにTAECとは"高域ドライバーのスーパーチャージャーだ"と語ってますね。

* 外観

ハイブリッドとしてはかなりコンパクトで取り回しがしやすい感じです。

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LYRAに似ていますが、よりメタリックな外観です。ハイブリッドにしてはコンパクトで、ダイナミックなのでベント(tuned port)があります。

* DRADOの音質

VEGAがモニター的、リファレンス的な音ならこれは個性派といえます。音の一貫性・つながりはシングルのVEGAの方が良いけれども、DRADOではBAらしい細やかさの中高域とダイナミックっぽいパンチの低域の両方でハイブリッドらしい魅力を楽しめます。

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中高域のすっきり加減はチューブレスっぽいように思います。ただANDROMEDAやJUPITERに比較すると、全体に重心が低くてより中低域にポイントが置かれた音になっています。また一方でLYRAIIに比べると暖かみは控えめでBAらしいシャープでニュートラルな感じでもあります。
低音はあえてたっぷりと強調感があるように思いますが、全体的なダイナミックの厚みも加えて今回のラインナップでは一番ロック・ポップ向きだと思います。ただし中低域と全体の厚みが印象的ですが、ヴォーカルはマスクされてる感はなく、むしろ女性ヴォーカルが良い印象です。この辺は初のハイブリッドにしてはうまくまとめていると思います。違和感の少ないわりと自然な音表現で音の広がりも悪くありません。

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DRADOは重みがあって濃い音で、すっきりとした感覚のあるCampfireのこれまでよりもJH Audioをちょっと思わせます。低音はLYRAよりもさらに迫力があります。この辺はVEGAだとすっきりと透明感が高い低音表現です。濃くて厚みのある音が好みの人はDRADOが良いかもしれません。
例えば太鼓の音はVEGAの方が革の質感が分かるほどのリアルさだけどすっきりしていて、パンチとインパクトはDRADOの方ががんがんとある感じです。

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次にANDOROMEDAと比較してみます。
ANDROMEDAと比較してみるとDRADOのコンパクトさがよくわかります。またDRADOの方にはダイナミックドライバー内蔵らしくベント孔がついています。

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音質をANDROMEDAと比べてみると中高域がピュアな点は似ていますが、全体の音はANDROMEDAが上に伸びる中高域よりなのに対して、DRADOは重心が低く中低域よりになっているので、音の個性は異なります。ヘビーなロックにはよりDRADOの方が向いた感じです。
またANDROMEDAはとても感度が高いのですが、DRADOはわりと感度は普通から低めになっているので扱いやすくなっています。

* 今回の新ラインナップのまとめ

全体に今回の流体金属化とVEGAの新ドライバー採用やDRADOのハイブリッドでの厚みのある音など、ラインナップが一新された感があります。ステップアップもされた感じです。
すべてコンパクトで特にDRADOがハイブリッドのマルチドライバーなのにかなりコンパクトです。この辺も流体金属効果でしょうか。前はシングルBAのORIONでもやや大柄だったので進歩を感じさせます。

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LYRA II

各機種を比較すると、それぞれアンプやDAPの相性もあります。AK380にはVEGAやLYRAIIがあっていて、iQubeV5などアンプシステムにはDRADOがあっているように思います。AK380持ってる人にはVEGAはおすすめです。マルチBAカスタム使ってる人でも、AK380ってこんなすごかったとまた見直すと思います。

VEGAとLYRAIIは相性という観点からはほぼ同じですが、音の個性が異なります。
際立った透明感・明瞭さとニュートラル・リファレンス的な音の性格で、端的に言うとVEGAはシングルダイナミック版のKatanaという感じ。新鮮さを覚えるほどすごい音の高みを感じますね。

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VEGA

LYRA IIはやはり高い透明感はあるが、もっと低域よりでやや温かみがあり音楽的に楽しめるタイプの音。VEGAとは音の好みで選択するとよいと思う。たとえば旧LYRAファンの人ならば、LYRAにダイナミックを超えるような音性能の高さに惹かれたならばVEGAに行くのが良いと思うし、LYRAの持つなめらかで音楽的な美しさに惹かれた場合にはLYRA IIが良いと思います。

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DRADO

DRADOはハイブリッドということでこの二者とは立ち位置が違いますが、Campfireの今回のラインナップとしての共通した音の魅力もかねそなえています。
VEGAが聴いたことない音再現だとすると、こちらは馴染みの音。BAとダイナミックを使ってるのだな、と分かります。VEGAは予備知識なしだと、どういうドライバーなんだと思ってしまいそうです。
ラインナップ的にはシングルのVEGAがあって、ハイブリッドのDRADOが映える感じでもあります。やはりVEGAの透明感の高さ・明瞭さには惹かれるけれども、全体にもっと厚みや濃さがほしいという時にはDRADOがぴったりです。

ざくっとしたジャンル的にいうとジャズ・クラシック・良録音系はVEGAで、ロックポップ・エレクトロ系はLYRA2、またはDRADOがよいと思います。

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LYRA II

またマルチドライバーモデルと言っても、ANDROMEDAはDRADOとも音の個性は異なるので、これも今回のラインナップとともに選択に加わると思います。
これでCampfire Audioの製品が洗練されたとともにますますラインナップの幅が増えて充実しました。これで名実ともにCampfire Audioが新興メーカーから中堅メーカーに移行できたと言えるのではないかと思います。
posted by ささき at 22:25 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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