これによりHA-2ブラックモデルは販売終了しますが、日本限定モデルのCherry RedとSapphire Blueは継続販売されるということです。価格はオープンで実勢価格は4万円弱です。このことからHA2SEはHA2の正式な後継機であるということが言えます。
本稿ではHA2(初代)と比較しながらHA2SEの紹介をしていきます。
* HA2シリーズの特徴
まずHA2SEの解説の前に初代HA2の紹介をします。
Oppoは音質も良いBDプレーヤーで知られるようになり、ピュアオーディオ分野やポータブルオーディオ分野にも範囲を広げています。BDプレーヤーの頃の当初からESSのDAC ICを活用していたことで知られていて、ESSのDAC採用ではエキスパートともいえます。HA2ではやはりESSのポータブル向けのハイグレードDACであるES9018K2Mを採用しています。これで高音質とDSDネイティブ対応を実現しています。
もうひとつのHA2の大きな特徴はスマートフォン、特にiPhoneに向いているということです。iPhone 7では3.5mmヘッドフォン端子がなくなってしまいましたが、HA2はそれをカバーするうえでも有効なアクセサリーとなります。
なぜiPhoneに向いているかと言うと、まずデザイン的にスリムでiPhoneとあわせやすいということがあります。筺体はアルミ削り出しの高級感があり、iPhoneの質感にも劣りません。また手帳型ともいわれるように手帳風の革張りがされてるのでスマートフォンと背中合わせにしても傷の心配が少ない。また滑りにくく持ちやすいですね。
またHA2ではUSB入力としてUSB Micro Bの他にUSB Aタイプ(スイッチA)の端子を持っているので、いわゆる「iPodデジタル」タイプのデジタル接続が可能です。これはUSBアクセサリー接続というもので(詳細はこちらの記事参照)、Micro Bタイプに比較するといわゆるカメラコネクションキットが不要で、直接ライトニング端子に接続できることと、電力消費の心配が少ない点があります。また本体のボリュームとの連動など、スマートフォンとDACの接続としては安定感があります。
追記→確認したところ、HA2/HA2SEではスイッチA位置でもPCM384/24、DSD128に対応すると言うことです。
またHA2はモバイルバッテリーとしても機能するので、その点でもスマートフォンとはあわせやすいと言えます。接続するためのケーブルははじめから入っています。
* HA2とHA2SEの違い
赤が初代HA2、黒がHA2SE
HA2とHA2SEの外観の違いはSEのマーキング以外にはほぼありません。
HA2とHA2SEの違いは主に下記の4点です。
- ESSのES9028Q2Mを採用
HA2SEではESSのDACは最新のタイプであるES9028Q2Mに変更されました。ES9028Q2Mの採用はおそらくポータブル業界初のことで、この辺のESSに対しての機敏さはOPPOならではです。これにより384kHz/32bitまでのPCMデータおよび12.2 MHz (HA2では11.2MHzまでの保証だった)までのDSDデータの再生に対応しています。12.2はDSD256のクロックの系列による差です。
スペック的にも2dBほどですがダイナミックレンジが改善されていますが、内部的な違いは音質に現れるでしょう。
- アンプ回路の改良
ヘッドホンアンプ回路はICとディスクリート部品のトランジスタで構成されたAB級アンプ設計となっていて、ディスクリート部品のトランジスタで構成された出力段にはマッチドペアの選別品を使用するなど,出力品質へのこだわりが感じられます。また昨今のトレンドを踏まえた音質傾向にしたとのことです。
- ゲイン設定の見直し
高感度IEM向けの改良点としてLowゲインで高感度カスタムIEMにも対応したということで、これは主にユーザーの声だそうです。実際に海外ではポータブル機器にも大型ヘッドフォンを使うことも多く、ポータブルでも出力が追求される傾向にあります。そこでこうしたイヤフォン重視という日本としての要求を反映させることは大事であるし、また聴いてくれるというのは良いメーカーだと言えます。
-付属ケーブルの変更
これもユーザーの声からストレートからL字型に変更されました。これもやはり海外ではデスクにおいて使うことが多く考えられるために(iQubeなんかはそうですが)、ストレートでも良いのですが、バッグに入れて使いたいという日本ならではの要求をするのは大事なことです。また日本市場を重要視する姿勢が見られますね。
* 外観・操作感
旧HA2とは外観もパッケージもほぼ同じです。パッケージは海外マニアックメーカーと言うよりも国産メーカー的なしっかりしたものでこの辺からも製品の安心感を感じることでしょう。
筺体はなかなか高級感のあるもので、CNCマシンで削り出したアルミニウム合金の筐体を高品質な本革製カバーで覆った構造になっています。
旧HA2とは色違いのモデル以外はSEの刻印が異なるのみのように思います。
筺体の大きさはiPhone 6/7(無印)とほぼ同じです。iPhone5ではやや小さく、iPhone 6/7 plusではやや大きくなります。実際にiPhone 7 plusと組み合わせてみましたが、手に持って見てHA2SEが薄いので特に問題なく持って使えるように思います。
iPhone6(左)とiPhone 7 Plus(右)
使い方はA/B/Cの底面入力スイッチで使いわけをすることになりますが、アナログ入力(C)、USB Aによるデジタル入力(A)、USB micro B(B)によるデジタル入力があります。やはりHA2ならではの使い方をするならば、AまたはB位置でデジタル入力で使うのがお勧めで、強力なESS DACの恩恵を受けられます。
AとBの使い分けは上でも書きましたが、iPhoneとはAを使うのがお勧めで、AK70/AK300またはWalkmanなどと組み合わせるにはBを使います。またiPhoneでもハイレゾを出したいときにはBを使うことになりますが、この場合にはカメラキットか同等のケーブルが必要です。
ここでは主にA位置を使ってiPhoneと組みあわせて使いましたが、スムーズに使うことができました。AK70のmicro USBでもiPhoneのAでもとにかく簡単でスイッチを変えるだけです。とても扱いやすいと思います。
* HA2(初代)/HA2SEの音質
リファレンスIEMのKatanaユニバーサルを使用して主にiPhone 7 plusを使ってA位置(USB A)で試聴しました。
まずHA2(初代)の方を聴くと初代でかなり音質は良く、ESSらしくSNが高くとてもクリアで透明感、明瞭感がとても優れた音です。解像力が高く音数が多いと感じ、帯域的な音バランスはかなりフラットで良好、切れが良いのでアタック感があります。音の個性はよく整っていてニュートラル、色つけが少ないのですが、ちょっとドライな感じがする点もESS的な特徴です。総じて音性能はかなり高く、価格を考えるととてもコストパフォーマンスが良いと思います。
次にHA2SEを同じソースで聴いてみました。音の印象はまずHA2よりもやや厚み・暖かみがあってESS的なドライさが少ないと感じられます。ノイズが少ないというよりも音の個性がやや違っていて、少しだけれども暖かくESSっぽいドライさが(良い方へ)減ってより聴きやすいと感じられます。
帯域的な高低により広がって、ファルセットの伸びもより高く伸びているように思います。またウッドベースのピチカートでSEの方がより切れ味が良く、明瞭感が高いと思います。ここはDACの効果かもしれませんが、たぶん駆動力の向上はここにも効いてると思います。ドライブ感のあるロックでもSEの方がスピード感と強いアタック・インパクトを感じられます。より音の厚みがあるのもそこにプラスにはたらしいています。SEの後でHA2(初代)を聴くとやや薄味に感じられます。
新型DACに目が行きがちですが、アンプの違いが大きいという印象があります。
私はApple MusicとかBandcampでよくストリーミングを使うのですが、iPhoneでストリーミングを高音質で聴くにはうってつけのアンプです。それらが圧縮音源だということは言われないと気がつかないと思いますね。
またもしこのクオリティでTidalストリーミングできれば、とも思います。(AK70/AK300の最新ファームアップと合わせるとできそうですが)
接続用のケーブルはiPhone用のライトニングも、AK70/300などと合わせるOTGも入っていて、すぐに使えると言う点もHA2の長所で、特にSEになってL字型になって利便性が良くなっていると思います。
* まとめ
透明感や解像感などはHA2(初代)でも十分すぎるほど良いけれども、SEの方が一段と音楽的により気持ちよく楽しく聴くことができます。見た目は同じだけど、中身はだいぶ進化していると思います。
iPhone 7からヘッドフォン端子がなくなり、ワイヤレス派とライトニング派に分かれてその後を模索していますが、ライトニング派は高音質を重視すると思いますのでぜひお勧めしたいところですね。
最近はApple MusicやSpotifyの参入などでストリーミングの需要も増えていますが、これならばかなり高音質で聴くことができます。ストリーミングは音質が落ちるので安く提供できるという考えもあるかもしれませんが、Apple Musicとかこの音質で聴かれたら反則じゃないかと思います。
また今回の改良はユーザーの声を聴いたということで、そうして声を吸い上げてくれるメーカーは良いですね。なにしろこのヘッドフォンオーディオの世界はボトムアップで進歩してきましたから。
OPPOデジタルジャパンはヘッドフォン祭に出展しますのでそちらでHA2SEを試聴することができます。またRMAFで展示されたSonica DAC(ネットワークオーディオプレーヤー機能付DAC)も展示されるということです。
また隣のエミライブースではMrSpeakersとResonessene Labs、exaSound、そしてHeadFiで人気のあのCavalliのヘッドホンアンプも展示予定だそうです。これ私も期待してましたのでかなり楽しみです!