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2016年10月27日

Apple純正3.5mmヘッドフォンアダプタの実力とは

Apple純正の完全ワイヤレスイヤフォンであるAirPodsはどうやら予定よりも遅れるらしいというニュースが流れてきました。それならばiPhone7のポスト3.5mm端子の選択はライトニングで、という選択でもっとも手軽なものはこれです。Apple純正のDAC内蔵型ポータブルヘッドフォンアンプ、Lightning-3.5mmヘッドフォンジャックアダプタ、900円なりです。

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これはiPhone7でヘッドフォン端子がなくなったことにより、iPhone7/plusには付属でついてくるものですが、別売でも購入できます。以前30ピン端子がライトニングに変わったときについてきた30ピンアダプタはやはりDACが入ってました。このときはWolfson WM8533というDACチップが入っていました。これは今回のアダプタとは違ってADCが不要だからDACでよいわけです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/302004727.html

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このLightning-3.5mmヘッドフォンジャックアダプタについてはあまり音質的な期待はなかったんですが、使ってみると意外と音が良いと思います。前のiPhone5sでも使ってヘッドフォン端子とくらべてみましたが、解像感はそこそこですが、よりパンチがあって音のメリハリがあります。そこでヘッドフォン端子がついているiPad mini2を使う時でもわざわざこのアダプターを使うようになったのでほとんどポタアン状態です。iPadの場合には普通のサイズのDAC内蔵ポタアンは合わせにくいので便利です。

このアダプタについては下記のiPhoneの分解でおなじみiFixitに記事があります。
http://ifixit.org/blog/8448/apple-audio-adapter-teardown/
ここではX線で透視した写真が載っていますが、他の分解した人の写真から見ると使われているICはiPhone本体で使われているAudioCODECチップと同様なシーラスロジックのICであると考えられます。型番は検索できませんが、Appleくらいの出荷数ならカスタムICを使うのでカタログには載ってないでしょう。
AudioCODECはADCとDACをワンチップにしたものです。ライトニング端子はアナログが透過できないので、その手前でイヤフォン出力もマイク入力もデジタル/アナログ変換が必要になりますね。
ただこの記事でも書かれていますが、iPhoneと異なるのはCODEC(圧縮と伸張)がiPhoneの中のAudioCODECチップで行われるために不要なので、単にデジタル信号の入出力でよいということと、アダプタのチップにはアンプが内蔵されているのではないかということです。iPhone本体ではアンプは別チップになっています。

これだけだとこのアダプタの性能は良くわからないのですが、このLightning-3.5mmヘッドフォンジャックアダプタを測定したドイツの雑誌記事がこのリンクにあります。
https://www.heise.de/ct/artikel/iPhone-7-nachgemessen-Audio-Adapter-liefert-schlechteren-Sound-3325932.html
その結果を見るとダイナミックレンジはiPhone本体に劣りますが、出力インピーダンスが大きく改善されています。iPhone単体で出力インピーダンスが4.5オームだったものが、Lightning-3.5mmヘッドフォンジャックアダプタでは1オームを割って0.5オームくらいになっていますので、これはちょっとしたヘッドフォンアンプ並みと言ってよいでしょう。
Walkmanでも出力インピーダンスは3オーム前後だったと思うのですが、大きなメーカーはやはり安全基準のようなものがあってあまりマニアックメーカーほどは出力インピーダンスを下げないのが普通だと思います。そこでマニアックメーカーくらい低い出力インピーダンスを持っているLightning-3.5mmヘッドフォンジャックアダプタはちょっと面白い存在です。特にインピーダンスの低いイヤフォン向きと言えそうです。おそらくは本体ではなくアクセサリだから基準が適用されなかったのでしょうね。
またダイナミックレンジに関してはiFixitの記事にもありますが、測定値が99dB→97dBのように低下したとしても16bit音源の場合には理論限界の96dBよりも高いので問題ないと言えると思います。

*ちなみにハイレゾ(24bit)の場合は理論値が144dBで、人間の知覚限界が120dBと言われてますので、ダイナミックレンジはもっとあった方が良いということになりますね。本当の意味での「ハイレゾ対応かどうか」ってこういうことだと思いますが、こういう話が出ないのは不思議、不思議。

また雑誌のカメラマンでもあるHeadFiのネイサンが測定した結果もこちらに乗っています。ここでもダイナミックレンジはiPhone本体よりも低いのですが、イヤフォンをつけた負荷状態のTHDはわりと優れているということがうかがえます。
http://ohm-image.net/data/audio/apple-lightning-35-mm-headphone-jack-adapter-24-bit

これらの結果から考えるとLightning-3.5mmヘッドフォンジャックアダプタのDACはそこそこでも、アンプ部分はわりとよいのでCD音源であれば十分けっこう使えると思います。聴覚的にもiPhoneやiPadのイヤフォン端子よりもタイトでキレ良くインパクト感が出ていて楽しく聴くことができます。それとちょっと低域を強調させていて妙にチューニングした感があります。一見して安物おまけアクセサリーのように見えますが、実のところけっこう手が込んでるように思います。
いずれにせよ本格的なDAC内蔵ポータブルアンプにはおよばずとも、ちょっとバッグに入れておくには十分なアクセサリーだと思います。特にサイズ的にポータブルアンプと合わせにくいiPadには良いように思います。iPadだと1.5オーム前後とiPhoneよりは一般に出力インピーダンスが低いのですが、それでもこのアダプタ経由の方が良いように思います。

仮にiPhone7でヘッドフォン端子がついていても出力インピーダンスは4-5オームを踏襲して、それまでのiPhoneとさほど代わり映えのしない音質となったと思いますので、かえってこのアクセサリーが出てきて音が楽しめるようになったというのは意外なiPhone7の落し物というか拾い物という感じです。
posted by ささき at 21:52 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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