Music TO GO!

2007年06月07日

mSEED Labsのポータブルアンプ Spirit

これはmSEED LabsのSpiritという新型ポータブルアンプです。この会社は以前Faithというアンプを出していますので二作目になるようです。最近ALOのサイトで見るようになったので、気になっていた人もいると思います。

sprit1.jpg      

ぱっと見るとGV6風のシャーシで$150アンプというちょっと食傷気味のパッケージなので読み飛ばすところでしたが、音楽性を強調しているところがちょっと気になって細かく見てみるといろいろと気になる点があります。
最近はいろんなポータブルアンプがある中でなぜこれに興味を持ったかということを整理すると、

1. unity gainがある

ユニティ・ゲインは入力と出力が同じということで、簡単に言うとx1倍(0dB利得)のゲインということになります。TomahawkはIEMむけに1倍のLow gainを持っていますがこれがunity gainです。
アンプ設計においてunity gainは長短あるようですが、少なくともTomahawkにおいてはIEMとの組み合わせで良い結果が得られていたのでここでもIEM用としていいのではないかと興味を持ったわけです。

ここでちょっと面白い考察は、unity gainで使うときにはゲインがない(音量がソースと同じで大きくならない)のだからポータブルアンプというよりポータブルバッファと呼んだほうがより適切なのではないかということです。
こうして対象をより単純化するとよく見えてくることがあります。よくiPodにポータブルアンプを加えると音量が取れるだけでなく音質もよくなるのですか?という質問がありますが、これがひとつの答えにはなると思います。
たとえばiPodのラインアウトの品質はヘッドホン出力に比べるとかなり高いのですが、ヘッドホン出力に比べるとラインアウトの出力インピーダンスは100Ω近辺とかなり高くなっているようです。しかしSpiritを介することでそれを2Ω以下と小さくできます。つまりiPodとヘッドホンの間にSpiritを挟むことでインピーダンスのロー出しハイ受けができることになり、歪みを減らしてクリーンな音が得られるわけです。その代わり電流は増えなければなりませんので、ハイカレントのポータブルアンプがiPodとは別の電源を持ったバッファとして存在する意味があるということが言えると思います。
また逆にバッファだけに割り切ったコンセプトの機器というのも面白いような気がしますね。たとえば鬼才ネルソン・パスの新作のFirst Watt F4はパワーアンプですがPower Bufferというコンセプトで、たとえば小出力の真空管アンプの後ろにつけてスピーカーの駆動力を上げる役割を果たします。

ちょっと話がそれましたが、Spiritにおいてゲインは電池ベイ内のディップスイッチで切り替えて、Hi-gainでは15dBゲインになります。これだと、TomahawkのHi-gainとほぼ同じくらいだと思うので普通のヘッドホンはこちらで大丈夫でしょう。
ただドライバーが必要なのでちょっと設定しづらいとはいえます。

2. 音楽的な鳴りを強調している

アンプというとニュートラルで色付けがないことを強調するものが多いんですが、音楽的であるとはじめから言っているものは個人的には好感が持てます。こういう風にはっきりとテーマを持って作っているというのは使うほうにも分かりやすいし、こうしたポータブルアンプの多様化の流れの中では居場所を見つけやすいでしょうね。

3. BlackGateとかWimaのcapなどの良いパーツを使い、JFETなどのユニークなデバイスを使っている

JFETはMOSFETの一種ですが、ここでは出力段ではなく入力段に対して使っているようです。ここはメールで説明を聞いてもよくわかりませんでしたが、これによりかなりスムーズな音になるとのこと。

XinもSolid Tubeで真空管っぽい半導体を模索していますが、Spiritの方がかなり徹底して「真空管の音を実現する半導体アンプ」を目指しているように見られます。Millett Hybridもハイブリッドという形態で双方のよさを追及していますが、Spiritはまた別の解法といえるでしょう。

sprit2.jpg

さっそくiModとtriple.fiで聴いてみました。iModとTomahawkは組み合わせるのに難がありますが、こちらはほどよく重なります。電池はアルカリ9Vがおまけでついてきますが、Maha 9.6Vに替えました。230mAHで持ちは約14時間ということです。
またAC電源用のアダプタが裏フタ交換でついてきますが、ACアダプタ自体はついてきません。また充電機能もないようです。

sprit3.jpg      sprit4.jpg

だいたいはじめの10時間くらいの感想です。
音はたしかにスムーズで柔らかい感じがしますが、同時に意外とくっきりとしてかなり普通に性能がいいという感じです。楽器の音色がきれいで、triple.fiの低音も豊かでパワフル、かつタイトです。この辺はハイカレントの効果でしょうか。
ただ音場の広がりはそれほどでもありません。Hi gainにするとよりパワー感が出る感じでHD25にもよく合いそうです。
もう少しバーンインしてからまたコメントします。(と、記事をひっぱる)


購入はeBayでも可能でそちらの方が$20ほど安価ですが、こちらはアメリカ国内価格です。またALOのサイトでも販売しています。わたしは聞きたいこともあったのでmSEEDにメールしたところ、mSEEDのサイトから購入すれば$149で海外送料は無料にしてくれるということで手を打ちました。普通のエアメールですが、きちんと出荷通知をくれてわりとすぐつきました。

ちなみにメーカー名のmSEEDとは"Mustard Seed"の略でPaypal上ではMustard Seedという社名になっています。Mustard Seedは「マスタード(からし)の種」という意味です。
これはホームページのaboutに書いてありますが、直接的にはマタイの福音書の一説(17章20節)から取られています。

17:20
"イエスは彼らに言われた「もしあなたがたにひとつぶの小さなからし種ほどの信仰があるならば、この山に「動け」と命令すれば動くだろう、そしてあなたがたに不可能はなくなるのだ」"


日本人には分かりにくいのですが、調べてみるとからしの種というのはとても小さいもののたとえに使われるそうです。また上記の一節が有名なので、キリスト教的信仰を象徴的に表すものとしての意味もあります。そのためポケットに入る豆聖書のことを俗に"Mustard Seed"とも呼ぶようです。このことからポータブルアンプを隠喩していると思われます。実際にこのアンプの利益のいくぶんかは寄付に使われるようです。
mSEEDのアンプの名前も第一弾がFAITH(信仰)で力のある音、第二段がSpirit(精神・魂)で感性的な音、ということでよく考えられていますね。
posted by ささき at 22:35| Comment(6) | TrackBack(0) | __→ GSP Voyager, mSeed Spirit | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
聖書のくだり、ためになりますね。(^^;
仏教用語で何か作ろうかな?とも考えましたが、
本職の人が何人も見ている中では辛いですね。(−−;
Posted by rabbitmoon at 2007年06月08日 01:29
まあ日本だったらApple Seedで行くというのはどうでしょう? なんかサイバーな感じで(^^
Posted by ささき at 2007年06月08日 08:22
ALOに掲載されていたので注目したのですが、
製品の作りに目が行ってしまいました。
底蓋とかちょっと作りがアレっぽい...
聖書をひっぱってくるところから、ストイックさを
連想すべきでしたかね〜

150$位なので試してみようかしら
Posted by Zorotto at 2007年06月11日 14:58
たしかにボリュームとか電池ふたのノブとか、かなりチープではあります。しかし中身はなかなかにいいと思います。XOともまたちがって良いような気がしますね。
Posted by ささき at 2007年06月11日 22:15
こんにちは。いつもいろいろ参考にさしていただいています!これまでポータブルアンプを持とうとはまったく思っていませんでしたが、ポータブルでも奥が深いのですね!!このmSEEDのSpirit良さそうです!グッときました!ちなみに、私はノーマルのIPODNANOを使っているのですが、普通につなぐ事はできるのでしょうか?
Posted by やすだ at 2007年06月12日 17:56
ほかのアンプと同じです。
下記リンクで買うと接続用のドック・ケーブルといっしょに買えます。
http://www.aloaudio.com/
買い方は一般的な海外通販同様ですので検索して調べてください。
Posted by ささき at 2007年06月12日 23:20
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