ながらくかかりましたが、Kickstarterで頼んだ64 Audio ADELシリーズのKickstarterモデルが届きました。これは一般販売はされないと思いますが、X2と言うモデルです。
X2はKickstarterのダイナミック型であるControlがポシャってその代替の2ドライバーモデルです。その切り替えに時間がかかって到着が遅れました。
もともとControlの代替にはU1というモデルを作る予定だったのですが、ユーザーフィードバックでより小さいシェルで、耳掛けではなくストレートイン可能な手軽なものという要望にこたえて、Uシリーズとは別にX2が作られました。作りは3Dプリントという感じでちょっとチープです。
しかし音質は素晴らしくKickstarter価格ではありますが、$100という点からは想像つかないくらい高い音質でADELの音の可能性が感じられます。独特の透明感と立体的な音の広がり方がADELの特徴ですね。
リケーブルできないのが惜しいくらい音が良いので、独特な音の魅力があって1964 earsがADELよりになる理由もわかります。
このX2を用いてADELモジュールを変えたことによる音質の違いと言うのを調べてみたのが本稿の趣旨です。
* ADELモジュールと音質の変化
この64 Audio ADELシリーズの中核をなすADELモジュールについてはKickstarterで登場した時に紹介しました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/408595702.html
ADELモジュールは「第二の鼓膜」というキャッチフレーズから聴覚保護のための機構とよくとらえられています。それは正しいことではありますが、すべてでもありません。それはこのADELモジュールにより音質を向上させることができ、さらにモジュールを交換することで音質傾向を変えることができるからです。
ADELモジュールによる音質の向上についてはホームページに説明がありますが、ADELモジュールで音の信号とは別に音の空気圧(pneumatic pressure)を抜くことで位相的によりよい音質が得られ、音が立体的になるとともに、楽器の分離が優れたものになると言うことです。またモジュールを交換することによって音質傾向が変えられるのは小技ということではなく、はじめからメーカーによって設定された仕様です。
現在64 AudioのADELシリーズを購入すると付属しているシルバーのADELモジュールはS1と呼ばれます。メーカーが初期のころから公言している他のモジュールにはMAM(マニュアルモジュール)があります。そして最近出たのがブラックのB1です。S1とB1は色だけではなく音質が異なります。S1とB1はMAMに対してAutoモジュールと呼ばれますが、実際はプリセットモジュールといったほうが正しいと思います。S1とB1はADELモジュールのベントとしての外気への開度がことなります。S1がもっとも閉じた状態に近く、B1はもっとも開いた状態に近いのですがフルオープンではありません。このためS1とB1では音質傾向と遮音性に違いがあります。(遮音性についてS1は-18dB、B1は-10dB)
64 Audioでは将来的には出荷時にS1かB1を選ぶようにするようですが、これはまだ分かりません。ちなみにS1がシルバーのみで、B1がブラックのみなのはそれぞれ2種類のカラーを用意すると手間がかかると言うことのようです。ちなみにB1モジュールはミックスウェーブでも国内取り扱い予定だそうです。
B1モジュールは上のような小さなケースに入ってきます。これはスペアを入れておくにも好都合です。
まずS1を付けたままのX2の音質ですが、AK380とAMPで聴きました。まず高い透明感と立体感のある独特の音の広がり方に圧倒されます。実際にこの二点がADELの音質的な特徴ともいえると思います。聴覚保護というとなんとなくまったりとした甘い音を考えるかもしれませんが、X2の音はかなり明瞭で解像力も高いものを感じます。
$100とは到底思えないほど音質はかなり高いです。$100はKickstarter価格ではあり等価と思われるU2となるとそれなりの値段になりますが、それでも同価格帯の中ではかなり秀でているでしょう。低域はかなり豊かです。
ADELモジュールは爪をかけてぐいっと引くと外れます。引き出すと第二の鼓膜の振動板がわかると思います。
B1に変えると低音が抑えられてヴォーカルがよりクリアに聞こえるようになります。周波数特性的にはS1よりもフラットに近くなっていると感じます。音も全体に整った感じがします。またドラムのアタックがより鋭くなったように聞こえます。ただしB1だと低域が物足りないと思う人も多いかもしれません。
ふたたびS1に戻すとダブルベースとヴォーカルがごちゃっとして混濁しているようにも感じます。B1は全体にもっとすっきりとしています。パーカッションやダブルベースのピチカートはB1に比べるとやや鈍く感じます。ただ低音がたっぷりあるのでジャンルによってはS1の方が好ましいことも多いと思います。
ちなみにどちらもつけずにベント穴をフルオープンで聴いても音楽は再生できますが、かなり気が抜けた音になってしまうので実用にたえません。ADELベントはそれなりになにかしているということですね。
このようにどっちもよい点があるので、その開度を手動で調整可能なMAM(マニュアルモジュール)も発売が待たれるところです。
またADELではS1やB1をイヤチップに直接装着して耳栓にするアクセサリーがあるようですが未発売です(海外でも)。
このように私がADELに注目していることはBAドライバーとベントの関係です。
昨年ハイブリッドが隆盛を極めたおかげでイヤフォンとベントの関係について焦点が集まりました。FitEar Airのようにベントレスの道を歩むものもあります。
もちろんエアフローはイヤフォンでは重要なテーマではあるし、これらのベントは主に従来からあるようなダイナミックドライバーに関するもので、一般的にはダイアフラムのPET素材の脆弱性についての対策です。しかしながら、最近ではこの64 ADELのようにBAドライバーなのにベントを持ったものも出てきました。他にもWestoneのAM Proなどがあります。
AM Proの場合は主に外の音を聴くという目的がありADELとは異なりますが、音質もまたちょっと個性的なので気にはなっています。外の音を聴くと言うアンビエント機能のためにベントを開けると言うのはUE11時代などのカスタムにもあったのでいままでにBAでベントと言うのがなかったわけではないのですが、UE11アンビエントモデルなどはこんな複雑ではなかったと思います。
いずれにせよADELモジュールを変えて音質が変わると言うことは、BAでもベント次第で音質が変わると言うことです。これは(うちのブログで取り上げる他の話題と同様に)まだよくわからないことの一つではあるが気になるもので、ちょっと興味あるテーマではあります。
Music TO GO!
2016年05月06日
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