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2016年03月30日

ラズベリーパイとポータブルアンプのアナログ接続 (piCorePlayer編)

ラズベリーパイのポータブルオーディオ運用日記です。
前の記事でポータブルアンプとラズベリーパイを組み合わせたポータブルオーディオの記事を書きましたが、ケーブルをライトアングルに変えたらスッキリと今までの2段重ねアンプっぽく収まって妙に実用的になってきました。ジャケットのポケットにもすっぽり入ります。

IMG_9691_filtered[1].jpg  IMG_9692_filtered[1].jpg  IMG_9689_filtered[1].jpg

ラズベリーパイだけ取り出すと下のような感じです。Raspberry PI2にHAT DACとしてHiFiBerry DAC+のPhono仕様を取りつけて、積層型のケースでガードしています。(このケースにはプロセッサの放熱フィンも付属しています)

IMG_9694_filtered[1].jpg  IMG_9695_filtered[1].jpg

こうしてラズベリーパイをポケットに突っ込んでる人もそういないでしょう。シールドしなくてよいのかと言うと、それほど影響はないように思います。微妙なノイズフロアへの影響は図れませんが、少なくともWiFiアクセスのたびにプチプチしたノイズが入ると言うことは全くありません。

IMG_9700_filtered[1].jpg

ポータブルアンプはあいかわらずPortaphile627を使用しています。理由はサイズ的な相性と、音性能の高さ、音の相性などでしょうか。

ソフトウエアも変えました。
こうしてDAPやスマートフォンではなくコンピューターをポータブルアンプにくくりつけるメリットのひとつはソフトウエアをごそっと基本ソフトウエアから入れ替えられることです。スマートフォンだとアプリを変えれる程度ですね。
たとえばVolumioやRune Audio、Moode Audioを好みに応じて入れ替えられますが、実のところこれらはいずれもMPDを使ったディストリビューション(Linuxのバリエーション)なので似たり寄ったりではあります。そこで今回は根本的に異なるものとしてpiCorePlayerを使ってみました。これのMPDに相当する部分はSqueezeliteとLMSというソフトウエアです。

* piCorePlayerとは

piCorePlayerはかつてあったSlim DevicesのSqueezeboxプレーヤーのソフトウエア版と言ってよいソフトウエアです。Squeezeboxは割と古いと言うか先駆的なネットワークオーディオシステムですが、Slim DevicesからLogitechに移った後に2012年に製造中止されています。その後は再生エンジンの部分がLinuxに移植されてSqueezeliteとなり、それを元にしたのがこのラズベリーパイ用のpiCorePlayerです。
ホームページは下記です。
https://sites.google.com/site/picoreplayer/home

piCorePlayerは現在では2.0がリリースされていてわりと活発に更新されてる方ではないかと思います。少し荒削りでマニアックに寄っていて、メニュー上でオーバークロック設定なんかもできます。出力デバイスもI2SのHAT DACが使えるのでHifiberryやiQAudioが使えます。もちろんUSB DACも使えます。
以下はコマンドを使ったりファイルを書き換えたりしませんが、全体の難易度はVolumioよりはやや難しいかもしれません。

Squeezeboxのシステム構成は基本的にはサーバーとプレーヤーから成り、サーバーが音源をプレーヤーにストリーミングしてプレーヤーが音楽を再生します。ただしプレーヤーは実際にはDLNAでいうところのレンダラー(音楽再生エンジン)とコントローラとに分離できます。このレンダラー部分がSqueezeliteつまりpiCorePlayerにあたります。
Squeezeliteは非常に軽量でRAM上に展開できるので、電源をぶち切りしてもよいという利点もあります。軽量と言う点からオーディオマニアなら、音質が良いのではないかと期待するでしょう。
これ(Squeezelite)単体では使えないので、他にLMS(Logitech Media Server)というサーバーが必要です。またコントローラ(リモート)も必要です。

このため、ポータブルで使うにはひとつ問題があります。それはさきに書いたようにサーバーであるLMSが必要であるということです。
普通のSqueezeboxシステムの使い方はLMSをPCにインストールしてpiCorePlayerをラズパイにインストールしてラズパイにDACを設置し、PC上のLMSとラズパイをネットワークでつなぐと言うのが一般的な使い方です。

しかしながら、この3/19にリリースされた2.03からLMSがpiCorePlayerと同一のラズパイにインストールできるようになりました。このため、
DLNAでいうとレンダラーとサーバーが同一筐体で動作しているようなもので、他のVolumioのようなMPDディストリビューションと変わりません。これでSqueezeboxシステムのポータブル運用(と言うか一体型運用)ができるようになりました。

またリモートコントロールはVolumioのようなWebUIも使えますが、Squeezeboxの良さは優れたリモートクライアントアプリが出ていることです。私はiPengというiPhoneの有料アプリを買いました。MPD系で使うMPodに比べるとかなり使い勝手は向上します。


* インストール手順

ラズパイ2にpiCorePlayerをLMS込みでインストールし、無線LANの設定をする方法を書きます。

0. mysqeeze.comでアカウント作成しておきます。無料です。これはLMSを使うために必要です(ステップ17)。

1. 下記サイトからpiCorePlayerの最新版イメージをダウンロードします。
https://sites.google.com/site/picoreplayer/home/download
download 最新(2.0.3以降)
いったんインストールすると以後の更新は設定ページからできるようになります。

2.イメージをWin32 disk imagerなどでMicroSDに書きます。(8GBもあれば十分かと思います)

3. ラズパイ2にMicroSDを入れます

4. ラズパイ2に有線LANを接続します

5. 電源投入します

6. ここがまず難かもしれませんが、
htt://(ラズパイのローカルアドレス)
でpiCorePlayer設定ページを開きます。
本来はhttp://picoreplayer.localで開くはずですが、Rune audio 0.3と同様に名前解決にやや難があるようで、これで開かないかもしれません。ただ自分のローカルアドレス(192.168.xx.xx)はだいたい同じで2つか3つ振れる程度なので、見当がつくと思います。確実にはモニタとキーボードを付けてuser:tc, passwd:piCoreでログインしてipconfigして確認してください。
あとで実用に使うときはクライアントからは自動検出なのでipアドレスの確認は不要です。

以後の設定ページでの操作はボタンを押してすぐに適用される時もあれば、ボタンを押してからインストールが始まって少し待つこともあります。
挙動と言うか画面表示を少し見て慣れてください。

screen1.png
piCorePlayer設定画面

7. 設定ページが出たら中段のSqueezelite settingsタブをクリックしてI2S設定からDAC+やDigi+を設定する。
(これが間違っているとSqueezeliteが停止します)

8. ここがポイントなのですが、一番下のタブに行って、betaをクリックする。
すると選択肢が大幅に増えます。

9. Main Pageタブをクリックする。

10. Expand FSをAutoのままで実行する。(FSはファイルシステムのことでしょう)
これはLMSをインストールする領域を確保するためです。これをしないでinstall LMSとしても領域不足ではねられます。
LMSを一緒にインストールすればポータブルで使えると言うのはすぐ気付いたんですが、このExpand FSのことが分かるまでちょっと悩みました。これでMicroSDカードいっぱいまで領域が大きくなります。
数分かかります。

11. LMSタブをクリック

lms.png
LMS設定画面

12. Install LMSを実行します。
多少時間がかかります。
ボタン押してリブートします。これでレンダラーとメディアサーバーが両方ラズパイ上で動いている状態になります。

13. WiFi Settingsタブをクリック
SSIDとパスワード入力します。

14. ここはオプションですが、Tweaksタブをクリック
Tweaksは小技とか言う意味です。この辺に魅惑の設定がたくさんあってわくわくします 笑
オススメは次の二点です。

screen2.png
Tweaks設定画面

14-1 Overclockオプション
この辺はまたあとで書きます。Advanced overclockというオプションもありますが、別ボタンになっていて、動かなくなったときの回避方が書いてあるのが恐怖をそそります 笑

14-2 Shairport-syncオプション
これでAirPlayが使えるようになります。これをオン(enable)にするとモジュールがダウンロードされます。
なおたまにこれやってもAirPlayがオンにならない場合がありますので、次の14-3でShairportがオンにならなかったら、この設定をいったんオフにしてリブート、もう一度オンにしてリブートしてください。

14-3 Mainタブをクリックして、
squeezelite、LMS、Shairport(AirPlay)が動作していること(緑のチェック)を確認する

なるべくひとつの機能をオンにしたらリブートして、これを繰り返した方が無難です。

* ALACとWMAを再生するためにはMain PageタブのSelect and update Squeezeliteの項目でffmpeg versionをインストールしてください(ただしSqueezeliteのサイズが大きくなります)

15. LMSタブをクリック(中段ではなく最上段のタブ)

17. LMSタブでログイン画面を出してMySqueezeboxのアカウントを入力
一番下のNextまたは「次」を押す

19. 音源はいっているフォルダを指定する(選択する)
一番下のNextまたは「次」を押す

20. プレイリスト作るフォルダを指定
一番下のNextまたは「次」を押す

21. Finishで終わり。

これ以降は右下のSettingでLMSの設定を変更します。するとLMS設定の別画面が出てきます。

lms-admin.png
LMS設定画面

* 操作方法

piCorePlayerの操作はWebUIによる方法と、アプリによる方法があります。WebUIはVolumioやRuneaudioとは少し違います。設定画面でも基本的な操作は可能ですか、実際に使うにはLMS側の画面(一番上のタブで切り替え)を使うことになります。これはスマートフォン対応がなくやりにくいのでアプリをお勧めします。

lms-play.png
LMSのWebUI操作画面

WebUIはPCだと使いやすいので動作確認時か家で使う時がよいでしょう。
実際このpiCorePlayerを使う大きなメリットが優れたリモートアプリを使えると言うことです。お勧めは定番のiPengで、これはMPDにおけるMPoDとは接続安定性、操作性、機能性のすべてでレベルが違います。iPengはClassicと最新の9がありますが、私はiPeng 9(1000円)を使っています。後でふれますが、iPhoneをLMSのレンダラーにできるオプション(600円)があります。

音源はUSBメモリに入れておきます(LMSが現在USBメモリしか読めません)。

立ち上げはラズパイにバッテリー電源をつなぐとスイッチオンです。立ち上げからWiFiに認識されるまでにはたぶん数分かかります。Squeezeliteは10-15秒で立ち上がるそうですが、LMSとネットでの認識が時間がかかってると思います。

IMG_2704.PNG
iPengプレーヤー画面

iPeng(私はipeng9)を立ち上げるとしばしして自動的にpiCorePlayerを見つけてきます。数分程度かかります。
このプレーヤー画面では最上段のpiCorePlayerがLMS(サーバー)のことで、中段のpiCorePlayerはレンダラーであるSqueezeliteのことです。この状態で単体プレーヤーとして機能しています。下段のiPhoneはiPengをレンダラーとして使う場合にここを選択してスイッチします。このときはLMS(ラズパイ)の音源をiPhoneでストリーミング再生できます。

WiFi接続もVolumioにMPodを使っていると外でよくフリーズしたり動かなくなりますが、iPengはかなり安定して接続しています。まるでiPhoneの単体音楽再生アプリのように使えます。これは高いアプリだけありますね。

IMG_2699.PNG  IMG_2701.PNG
iPeng操作画面

iPeng(piCorePlayer)の接続が確立したら操作画面に移ります。piCorePlayerと書かれた上下のバーで画面切り替えをします。
再生画面は3枚の画面があって、フリックで切り替えます。真中は再生画面、左は歌詞画面、右は曲リスト(キュー)です。歌詞はメタデータではなくサーバーから取ってきているようです。詳細は省きますが、使えない場合はLMS設定でプラグインが足りない場合があります。
再生画面ではアルバムアートを長押しするとコンテキストメニューと言うか別画面に行ってお気に入り登録などができます。

IMG_2703.PNG  IMG_2702.PNG
iPnegアルバム、アーティスト選択画面

再生から<"で戻ると上のようにアルバムやアーティスト、ランダム再生やフォルダー再生などができます。すべて説明しませんが、ポイントはアルバムの曲リストを開いているとき、右上の再生マークアイコンをクリックで切り替えることでモードが切り替えられます。これでMPD系で言うところのPlay nextやClear&Play Nextの使い分けができます。すぐ再生したい場合はアルバム表示のモードで再生モードにし、追加モードにするとキューにたまります。

IMG_2708.PNG  IMG_2709.PNG
iPengでは日本語表示はできますが、文字化けすることもありここが難点ではあります

iPengの有料オプションでiPhoneがレンダラーになれるものがあります。EXtrasからたどれます。この場合はラズパイは単なるサーバーとなり、iPengでの再生はiPhoneから出力されます。これもけっこう音が良いので試してみるとよいと思います。
これはこれでラズパイをポータブルミュージックサーバーに使用して、iPhoneで再生ができますので応用は広がります。

iPengはあくまでSqueezeboxのプレーヤーなので、piCorePlayerの設定はできません。
piCorePlayerの設定はさきに書いた設定画面、またはLMSの設定画面になります。つまり設定はpiCorePlayer画面とLMS画面では別々になります(もともとは別のソフトなので)。
LMS側の操作(管理)は次のようなものです。
 USBメモリの音源の指定、プレイリストの格納場所、ライブラリの再スキャン、プラグインのインストール
これらの音源関係の管理はLMS設定で行います。

シャットダウンは正式にはラズパイのpiCorePlayer設定WebUIからShutdownを選択します。piCorePlayerはメモリ展開なので電源ぶちきりでも良いと言いますが、LMSがあるので本来はShutdownした方がよいと思います。シャットダウン時にアクセスランプがつくのでなにかライトバックして同期してます。
ただいちいち設定UIにつなぐのも面倒なのでたいていはアクセスランプがついてないのを見て電源をぬいちゃってます。

またこのほかにもRoonからもSqueezeboxがゾーンとして認識できるので、Squeezeboxゾーンで見えるはずですが、いまのところうまく見えていません。

* 音質

かなりワイドレンジで、超低域も高域も驚くほど出ます。音像はキッチリしてシャープです。特に感じるのは平面的ではない音の深みと言うか立体感で、これは前にVolumioで聴いてた時とも共通してます。価格以上の音質で、まず文句はでないでしょう。Volumioとくらべてもこちらの方がよりよいように感じられます。
透明感も高く、背景も静粛な方だと思います。ノイズだらけと言われるコンピュータをそのまま入れてますが、そう問題があるようには思えないですね。知覚できるようなプチノイズはもちろんないし、微妙なノイズでノイズフロアが上がってSNが下がるという感じでもないです。
音質はもちろんPortaphile627の高音質込みだけれど、Portaphile627やLayla UFのように最高レベルで聴いてても十分負けない音をDAC+とラズパイが出している点に驚かされます。

このソフトのよいところはオーバークロックが簡単にできる点です。オーバークロックすると音がより先鋭に変わります。
mildでエッジがキリッとして、moderateでさらにアタックも強くなりますが、ちょっとガチャガチャ聞こえる感もあるかもしれません。好みもあるかもしれません。また予想通り電池消費は増えてMildでも2500mAhの電池は3時間弱程度しか持ちません。まだ見ていませんが、VolumioよりもpiCorePlayerとLMSの組み合わせ自体が電池消費が激しいのかもしれません。二つ違うものを動作させていますからね。
またこのオーバークロック設定を見てみると、raspi-configでの設定と似ているので、もしかするとラズパイ2では実はアンダークロックで動いているのかもしれませんが(mildでarm_frq=800だから)、この辺はまた調べてみます。いずれにせよ音質は標準状態から変わりますので試してみると面白いと思います。

音質を変えると言う点では、設定ページでのMainタブにふた通りのpiCorePlayerのビルドバージョンが用意されていて、これを変えても微妙に音質が変わるので変えてみても面白いと思います。

* まとめ

まとめると、piCorePlayerを使用してできることは以下の4点です。

1. USBメモリの音源を呼んで再生する
2. AirPlayでiPhoneから音楽を再生する
3. USBメモリの音源をiPhoneにストリーミングする
4. Roonからストリーミング再生する(未確認)


piCorePlayerを使う利点はと言うと、音質が良い(好みもありますが)とSqueezeboxの資産としてクライアントが充実しているので使いやすいと言う点だと思います。iPengだけではなく、他にもいろいろとあります。
RAM上にすべて展開するので電源ぶち切りできると言う利点はこの形態ではLMSと同居させているのであまり言えないかもしれません。(ぶち切りしていますが)
SqueezeliteとLMSの併用は便利ではありますが、ブート速度やぶち切り可能などSqueezeboxの家電的な有利さをちょっと損なってはいるかもしれません。
またVolumioなどのMPDディストリビューション系に比べると設定などでマニアックな追い込みもできます。(MPD系もファイルを手でいじればできますが)
もちろんポータブルだけではないので、今までMPD系のVolumioなどを使ってた方も試してみてください。
ラズベリーパイを使うというと、いままではDIY系の人が多かったと思いますが、ここに書いてきたことははんだごては必要ありませんので誰にでも試してみることができます。

それと今回Squeezboxのことをまじめに調べてみて、かなり優れたコンセプトだったということに改めて気がつかされました。使ってみるとそのコンセプトやユーザビリティ、音質などかなり優れていると思います。LMSからiPhoneにストリーミングできるところもSqueezeboxらしい良さで、これだけでポータブルアンプ無しで運用するのもアリだと思います。
Squeezeboxは時代に早すぎたと思いますね。いまのストリーミング時代ならちょうどよいかもしれません。また操作性に関しても、iPnegのような高度なクライアントアプリでの操作はVolumioやRune AudioのWebUIやMPoDとは別次元の快適さです。この辺は一度は商品として世に出ていたシステムのことはあります。
ちょっとこのSqueezeboxエコシステムの中で少し使ってみようと思ってます。

IMG_2692[1].jpg

このラズパイ使ったポータブルアンプのシステムもなかなかまじめに使えるようになりました。操作はiPhoneで快適にでき、電源落とすときに難がありますが、音質も価格にしてはかなり良いですね。
ポケットにコンピュータいれてポータブルアンプで、サーバー設定変えながらリブートを繰り返し、あーでもないこーでもないと音質のチューニングやってるとあっという間に駅に着きますので、乗り過ごしにご注意を。(実際やりました。。)

      
posted by ささき at 22:42 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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