ER-4Sは解像力においては定評のあるEtymoticsのカナルタイプのヘッドフォンです。ER-4Pはポータブル用途に4Sを改良したものでインピーダンスを下げてポータブル機の貧弱なアンプでも音量を確保できるようにし、音の特性もポータブルに合わせたものです。またケーブルも改良されています。とはいえポータブルでも4Sを好む人も多いようです。
ER-4SとER-4Pでは基本的にトランスデューサー(発音体)は同じです。そこでER4Pは純正の特性変換ケーブル(4P-24)をつけて4Sと同じ音質にすることができます。わたしが買ったのはこのケーブルとER-4Pのセットです。そのため以下4Sと書いたときは変換ケーブルをつけたER-4Pのことです。とくにP/Sをつけないときは共通の特徴です
音の解像力、ひとつひとつの音の素早い立ち方、また音の収束の速さから来るシャープさはE5cをも超えると思う。ひとつひとつの音がはっきりと区切られているので他のヘッドフォンに比べると一線を画したクリアさを感じます。たとえていうと矩形波を再現したときに他のヘッドフォンだとどうしても台形になってしまうけれどもER-4だときりっとした長方形になっているという感じでしょうか。
解像感が好きな人はこういうクリアさが欲しかったんだと言う気持ちよさを味わえると思います。ただそのせいか全体的に温かみのあるShureと比べるとやや無機的にも聞こえる気もします。たとえば鐘を叩いたときにER4だと金属の音がするけれども、Shureは楽器としての音がする、と言う感じです。
この辺が楽器関連メーカーのShureと補聴器を製品として研究しているEtymoticの違いと言えるかもしれません。あくまで音楽としての鳴り方の美しさを追及するShureと、ひとつの音の波形の正確な再現と完全な聞き取りを目的とするEtyの姿勢の違いといえるでしょう。そうした意味ではどちらが上というよりShureとEtyの個性の違いを比べて聴くのも面白いと思います。
よく低音が出ないという問題点が指摘されますが、低音が出ないわけではなくきちんと再現されていると思います。ただ重低音は出ないということです。ER4の性能限界というよりも、もともとそうした音は音の正確性からは外れているのでEtyはそうした味付けはしなかったというべきでしょう。この事情はER4SだけではなくER4Pでも基本的には同じです。
E5cだと音のダイナミックレンジが広く、高音と低音が等しいバランスで聞こえているので低い音の中から高い音が解像されてると、はっとする点もあるがER4の場合はこうした立体感はやや劣るといえるかもしれません。
ピアノソロやジャズのようにアコースティック楽器を単独に楽しむタイプの音楽にはER4はとてもむいていると思います。とくにジャズ演奏にはお勧めです。驚くほどのリアル感を感じることが出来るでしょう。
ただポップに向かないかと言うとそうではなく、女性のボーカルがくっきりと聞こえるのでJポップにも意外と向いているかもしれません。この場合は軽く低音増強にイコライザーを足せばよいとも思いますが、後述するように4Pなら4P、4Sなら4Sで完成された音域のバランスがあるのでやはりプリセットイコライザーやベースブーストなどで低音増強をすると違和感も残ると思います。この辺は普通のヘッドフォンなら深く考えずに低音増強するので、高性能ヘッドフォンならではの贅沢な悩みでしょう。
また音の解像感の高さからクラシックに向いていないわけではないけれども、スピーカーを思わせるような音域の広いE5cを聴いてしまうと音の広がりと厚みの表現にいまひとつの物足りなさを感じてしまいます。
固定ノイズはかなり小さくあまり気にならないレベルですが、反面で4Sはそれなりにボリュームを上げないといけません。
装着感はわたしはトリプルフランジはちょっとむいてないようなのでER4では黒フォームを使っています。ただしフォームの芯に細いパイプが通っていて、これが耳を擦ると少し不快感があります。
ケーブルについても4Pベースはそう悪くはないと思います。またケーブルクリップは良いと思う。
またわたしが購入したのは比較的新しいパッケージのせいか、ケースはいかにもこの手のものに付属するような黒字に赤でetyのURLがプリントされているしゃれたミニポーチになっています。
Music TO GO!
2004年08月10日
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