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2016年02月23日

Qables iQube V5レビュー

久々にiQubeのレビューをします。新しいV5のレビューです。

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iQube V5

V5においては外観はV3とほとんど変更ないのですが、中身は回路再設計やバッテリー変更で大きく変わっています。あえてV4をスキップしたのはV3からの差が大きいということを強調したいからだそうです。
すでにタイムロードはiQubeの国内代理店を終了していますが、本記事ではQables直販でのV5への優待アップグレードの情報と共にこのV5の紹介をします。

* iQubeのこれまで

さて、iQubeもTriFiやWestone30同様に、解説の前にまずは昔話から始めましょう。
2006年はTriple.fi、Westone 3、E500とハイエンドイヤフォンの革新が見られましたが、その翌年2007年は今度はポータブルアンプの当たり年でした。
4月にはポータブルアンプとして初めて真空管が使われたMillet Hybridが発売されました。
6月はおなじみMeier Audioのアナログ傑作機Moveが登場し、8月にはポータブルアンプと同軸/光/USBをサポートしたポータブルDACの一体型機、iBasso D1が出ました。このDAC内蔵分野は老舗のHeadroomもMicroで追いすがります。

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左からMillet Hybrid, CORDA Move, iBasso D1

こうしてポータブルアンプに真空管が乗ったり、DACが内蔵されて進化していく中、10月にはポータブルアンプにクラスDアンプが搭載されるという記事が載りました。HeadFiではなく当時iPod Studioっていうフォーラムがあって、そこも活発だったんですがそこにひっそりとオランダのQablesというメーカーが案内を出し、海外分は20個という割り当てがされました。私はポータブルでのデジタルアンプということで飛びついたのですが、実のところ海外分は半分の10個程度が売れたのみでした。のちに人気を博することになるiQubeも始まりはこのようなものでした。

2007年は他にもなつかしのXinの最後の作Reference、ド級アンプの先駆けLISA IIIの登場なんかもありました。いまから思うと2007年はおそらく前年に登場したハイエンドイヤフォンに刺激されたことで、まるでカンブリア紀の爆発のように多種さまざまな種がポータブルアンプの世界に登場したわけです。いまに続くポータブルのソース機材とイヤフォンとの良い依存関係がこの頃に始まったと言えるかもしれません。
そのころ日本ではまだまだヘッドフォンオーディオは発展途上であり、ヘッドフォン祭の前身であるハイエンドヘッドフォンショウを中野ブロードウェイの会議室でこじんまりとやっていた時代でしたが、それはまた別の話です。

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当時のiQube V1とSR71

はじめは細々としたスタートを切ったiQubeですが、後にベストセラーのように人気を博したのはやはり性能の高さでしょう。
iQubeの売りは元フィリップスにいたD級アンプ(デジタルアンプ)設計の第一人者のBruno Putzeysが設計した本格的なデジタルアンプが採用されたポータブルアンプであると言うことです。PutzeysはいまではHypexなどで有名ですし、Mola Molaを知っている人もいるかもしれません。
デジタルアンプは出力インピーダンスが非常に低い(スピーカーで言うダンピングファクターが高い)という点が特徴でヘッドフォンをがっしりと制御する力に長けていると言えます。またiQubeのデジタルアンプならではの歪みのなさはすっきりと端整な音に現れているでしょう。そしてもちろん効率の良さからくる消費電力の少なさです。

Brunoがこうしたポータブル製品に参加してくれたのは、初めてデジタルアンプをポータブルで採用すると言う興味からだったろうとQablesのハンスさんは語ってくれました。QablesのハンスさんがBruno PutzeysやGuide Tentといったオランダのオーディオオールスターズのような豪華チームをそろえてこのiQubeという製品をプロデュースしたわけですが、ハンスさんはAppleの"Look&Feel"によくマッチするような優れたオーディオ製品を作りたかったというのが動機だったそうです。デザイン的にはレトロとモダンの調和を図ったということでした。たしかにiQubeは性能だけではなくデザインも優れていますね。

2008年には日本でタイムロードさんがiQubeを輸入販売して当時はベストセラーになるほどの売れ行きとなりました。
2009年には簡易的なUSB DACがついたV2が発売されました。オリジナルではバッテリー交換が面白かったんで、ちょっと残念かとも思いましたが、V2ではバッテリーが内蔵型となりました。
そして2012年にV3が登場します。v2とv3は光とSPDIFのデジタル入力が可能となったことが大きな特徴です。
仕様はUSBが48kHz/16bitまで、SPDIF/光入力は192/24までとなります。SPDIFは4ピンのミニ端子の入力で、RCAメス->ミニ端子のケーブルが付属しています。こちらのレビューも参考に。いまならAK100などを使う光出力ソースが当時はでかいQLS QA-350というところが泣かせます。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/246334145.html

* V5の特徴

そして昨年、先に書いたようにV4はスキップされ大幅に改良がくわえられたV5が登場しました。

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iQube V5

まず目玉のD級アンプの回路は御大Bruno Putzeysの手によって、再設計されました。主な眼目は能率の低いヘッドフォンに適合するためのパワーの増大です。また以前よりも効率がさらに良くなっているようです。
また残りの回路はBrunoの片腕であるBart van der Laanによって再設計されています。基盤も再設計されて4層のメディカルグレードとなってフロアノイズの低減がなされています。Bartによる再設計の目玉は新しい電源回路です。これによってより安定した電源供給が可能となっり、アンプのパワー増大にも貢献しています。
またバッテリーはそれまでのNiMHからリチウムに変更されています。これも大きい変更で、たとえば以前はデジタルアンプでバッテリーの持ちが良いと言っても一日に数時間使ってしばらくほおっておくと自然放電でかなり低下しますので、実質のバッテリーの持ちは意外とよくなかったのですが、リチウムならばデジタルアンプの効率の良さを生かせます。ちなみにV5ではアナログのみで40時間、DAC込みで12時間使えるということです。

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またV5ではハイレゾ再生能力が高くなり、USBは192/24対応となりました。DSDは5.6MHzまでネイティブ再生(DoP)で対応します。(ただしUSBポートがミニのままなのが残念なところ)。
そして操作系がROM搭載となり、より詳細なLEDによる状態表示ができるようになっています。
細かいところではゲインがそれまでの低2/高7から、低0/高6に低められています。これは高感度IEM対応にも良いかもしれません。

このようにV5では外観は変わりないのですが、中身は「唯一変わったのはその全て」というどこぞのキャッチそのままで別物というくらいに変わっています。

* V5の音と使用感

パッケージはいままでと同様に缶ケースに入っています。同梱はケーブル類で、USBケーブル(mini)の長短二本のほかに、SPDIF同軸デジタルケーブルのRCA/miniアダプタケーブルが入っています。

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取り回しはほとんどV3と同じです。USBプラグがminiのままなのはポータブル使用では難かもしれませんが、据え置きで使う分にはもしかすると高品質USBケーブルの選択ではUSB mini端子もいぜん多いかもしれません。
使用形態はV3と同様に光デジタル、同軸デジタル(専用アダプターがついています)、USB(mini)、アナログ入力があります。ここでは光デジタルでDAC一体型アンプ、アナログ入力で普通のヘッドフォンアンプとして二通りで試してみました。

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AK100+光デジタル+V5

まずAK100IIと光デジタルでiQubeをDAC+アンプとして聴きました。ケーブルはSys-conceptの以前のV3用に作ったのがそのまま使えます。タイムロード/アユートの光ケーブルでも良いです。主にマベカスとBeat Signalを使いましたが、やはり高性能イヤフォンだけではなくケーブルもSignalクラスのケーブルが欲しいほどの高音質です。
音は整っていてデジタルアンプらしく正確さを感じます。SNが高く音の形の明瞭感がくっきりとし、透明感も非常に優れていますね。楽器の音の歯切れの良さは鋭いのですが、きつさはさほど感じません。躍動感があって、ジャズトリオなんかはシンプルな音の際立つ正確さやくっきりとした明瞭感、パワフルな躍動感にちょっと感動すると思う。
やはりパワーアップしたせいかもしれないけれど、アンプ部分はかなり性能向上されたように思います。V1の当時からすると、周りに優れたアンプが増えたんですが、今日の水準と比してもトップレベルだと思います。

このまま光デジタルでV3とV5を比べると、V5ではかなり透明感が上がって、よりクリアになるとともに音場も開けたように感じられるようになります。V5ではひとつひとつの楽器の音もより先鋭で、ヴォーカルの発声も明瞭感が上がっています。音の一つ一つの歪のなさもより少なくなって明確な形ですね。V5では周波数的にも低いほうと高いほうの限界がより広がったように、高い音はより伸びて、低い音は沈み込む感じです。ただしV3とV5では全体のニュートラルでよく整ったiQubeとしての音の個性はほぼ変わらないで、全体的に鮮明さが大きく上がったという印象ですね。
V5からV3に戻すと音がだるく感じられ、鮮明さが後退して濁った感じになります。もちろんV3の音もよかったわけですが、V5と比較すると大きな差があると思います。

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RWAK120+アナログ+V5

次にアナログ接続を試してみましたが、V3のアナログ入力の具合が悪くV5とV3のアンプ自体の差の比較はできませんでした。アナログケーブルはDirigent Red(Crystal Cable Micro)です。イヤフォンは同じくマベカスとSignalを使いました。
V5で試すと、アナログ接続でのiQubeの音の良さに久々に感銘しました。DACなしでコンパクトにアナログアンプだけでも良かったのではないかと思いますね。全体的な音の整った感じはやはりデジタル入力のほうが良いかもしれませんが、このグッと力感がみなぎる感じはいかにもアンプを付けたというアナログ入力ならではの魅力があります。アナログソースのDAPの魅力を生かしたい人には好適です。
はじめはAK100IIのアナログ出力で試していましたが、これはすごいというのでRWAK120(AK120のWM8741x2に改造したラインアウト専用版)に変えたところRed Wineらしい暖かい有機的で高精細な音と、iQube V5の正確で歪みなくワイドレンジの高性能さのマッチングが素晴らしいですね。RWAK120のラインアウトのみっていう潔さがよく似合います。
RWAK120とアナログ入力での組み合わせは濃くて有機的で分厚い感じ、力感と重みがよく乗っています。細かい表現でもWM8741のフラッグシップDACらしさがよく伝わってきます。AK380をアナログ入力してもAK380のよくま整った音の感じが伝わりかなり高レベルの音です。
AK380でも使ってみましたが、同じように力強さと厚みが感じられるのでこれはiQube由来の良さでしょう。AK100IIと光接続で内蔵DACを使ってもよい音ですが、少し軽めに感じられます。
iQubeのアンプは上品なイメージでしたが、V5ではパワーアップしたことで力感が加わってよりアンプっぽくなったと思います。デジタルアンプっていうと硬いイメージだけど、悪い意味での硬さはないですね。強靭という意味なら当たってます。アタック感は鋭く強靭です。

* まとめ

V5のDACも悪くはないけれど、アナログ入力でのアンプの音を聞くとやはりiQube V5はALOのContineltal Dual MonoのようにアンプメインのDAC内蔵型かなととらえたほうがよいように思います。RAWK120(WM8741x2)のような優れたアナログソースプレーヤーと組み合わせたiQube V5は素晴らしいオーディオらしい音、豊かで力強く整っていて躍動感がある、を再生してくれます。もちろんDAC部分も悪くはありませんが、いまはAKプレーヤーのように良いアナログソースが増えましたからね。
V5で生まれ変わったiQubeは音質レベルの高さも現行のトップクラスに比肩できるくらいのレベルがあると思います。

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マーベリックカスタム/Signal

AK380とかRAWK120のように優れたアナログソースを持っている人はアナログ接続、AK100などを活用したい人はDAC一体型として使用、などの使い分けができると思います。iQube再訪というのもよいのではないでしょうか。

* アップグレード情報

最後に既存のiQubeユーザーへのハンスさんからの優待アップグレード情報です。タイムロードさんは関与いたしませんので、Qablesと直接に取引をお願いします。(私も関与いたしませんのであしからず)
現在ヨーロッパにおいては稼働状態のV3を返品することで、200ユーロ引き(税抜き)でV5を販売しているということです。購入者が行きの送料を負担して、Qablesが帰りの送料を負担するそうです。これはヨーロッパでの話しで米国でも考慮中だがまだ開始していないとのことです。
日本でもQablesと直接にやり取りをすることで、ヨーロッパ同様のディスカウントを考えてくれるそうです。ただしコンディションがあるので、直接QablesのHansさんにメールして、ケースバイケースで判断すると言うことです。またV1においても考慮するとのことなので、興味のある方はQablesのHans Oosterwaalさん(sales@qables.com)にメールしてください。
QablesのiQubeページはこちらです。
http://www.qables.com/iqube
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