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2016年02月03日

Astell & Kern 第三世代のスタンダード機、AK320レビュー

Astell & Kernから第三世代のスタンダード機ともいうべきAK320が発売されました。

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アユートの製品ページはこちらです。
http://www.iriver.jp/products/product_117.php

AK320はAK380の提供する素晴らしい音質をより多くのユーザーに届けると言う方針のもとに開発されたと言います。AK320は単なる廉価版の枠を超えて、最上位機種のAK380の音質的なキーポイントであるDACやクロックをそのまま採用しているところがポイントです。ただし細かい相違点もあります。
本記事ではAK380との共通機能については詳しくは解説しませんが、主にその違いについてみていくことにします。共通機能についての詳細はAK380のレビューをご覧ください。

* AK320とAK380の主な共通点

- AKM DACチップ、VCXOクロックなど音の主要部品が同じである。
このことからAK320は音質という点でAK380にかなり肉薄していることがうかがえます。

- 周辺機器が共通で、AK380AMPが使用可能(CDリッパーやクレイドルも共通)。
AK380はいわばAK500をばらばらにして、分散したようなシステム的な側面も持ちます。その点ではこうした周辺機器の存在が大きいのですが、AK320ではほとんどAK380用のものを使うことができます。拡張性が高いというわけですね。

- ソフトウエア的にほぼ同等(AK connect機能も使えます)。
AK380は優れたネットワークプレーヤーとしての素質も持ち、スマートフォンから操作ができるなど、音質の高さだけではなく優れた機能を持っています。AK320ではそれもほとんどそのまま使うことができます。

* AK320とAK380のおもな違い

前述のようにAK320は主要なAK380の長所をそのまま引き継いでいて、かつ価格をほぼ半分にした優れたコストパフォーマンスを持っています。しかしながらやはり相違点もいくつかあります。

内蔵メモリ容量

AK320 128GB
AK380 256GB

ここは大容量の必要なハイレゾ時代に残念なところですが、前にAK240のときも内蔵256GBというのはなかなか実現が難しいというのを聞いたことがあるので、コストを低減するには仕方ないトレードオフかもしれません。

DSD再生能力

AK320 PCM変換(上限DSD128)
AK380 ネイティブ再生可能(上限DSD256)

これはXMOSが省略されているというゆえだと思います。前に書いたようにDACチップがDSDをサポートしていても、デジタルの搬送自体がDSDに対応していないとネイティブ再生はできません。そのためにはXMOSなどが必要です。AK380では11.2MHzまで最近ネイティブ再生可能になったのでAK380の大きな差別ポイントではありますね。考慮点としてはここはDSD音源を良く使うかどうかというところだと思います。

PCM再生能力

AK320 上限192/24 (384/32までダウンコンバート再生可能)
AK380 上限384/32

これは現実的にハイレゾと言っても192kHzが最大のものが多いので大きな問題にはならないようにも思います。

筺体

AK320: アルミニウム、ガンメタル色、約217g
AK380: 航空機グレードアルミ(ジュラルミン)、メテオリックチタン色、約230g

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AK380の方がやはり全体的な質感が優れていて、ここも差別化にはなりますね。質実剛健に音質のみ聴ければよい、というのであればAK320がクローズアップされてきます。

背面

AK320: アルミ
AK380: カーボン

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AK380の背面はAK240から伝統のカーボンで、AK320の背面はAK120IIに似たアルミと表面加工がなされています。

ボリューム位置

AK320:背面(AK Jrタイプ)、
AK380:側面(従来AKタイプ)、

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Astell & kernのAK240以降の特徴的な「光と影デザイン」は左手で持ちやすかったと思います。AK380もそうですが、この場合は左手で持って右手でボリューム操作することが前提だったと思います。
AK320は右手で片手持ちして親指でのボリューム操作がしやすく、この点でも多少変わったと感じます。

付属ケース

AK320 : Conceria WALPIERのレザーケース・ブラック
Ak380 : INCASのサイドカーフチュドール・ブラウン

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これも質感の差があります。やはりAK380のケースの方が高級感を感じるところです。
ただしAK320のケースもAK120IIと比べると高級感があります。

* AK320とAK380の音質と使用感の差について

ボックスはAstell & Kernのスタンダードで外箱と内箱の組み合わされた立派なものです。内箱にはきれいにAK320が格納されています。

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実際に持ち運んで比べると、スペック以上にAK320のほうが多少小さく感じます。また使っていて気がついた点ですが、AK320のボリューム操作は右手で片手で持った時に親指で操作しやすい感じです。

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またAK320では右上の出っ張りがないので持ちやすく感じます。

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AK380とAK320はDACが共通であるということから音質的にも似ていることが想定されますが、DSDネイティブ再生がないという点から回路も異なると思われます。XMOSがないということから、よりシンプルになっているかもしれません。またAK240とAK120IIに見られたような音のチューニングの違いもあるでしょう。AK240ではクラシック向けに味付けされ、AK120IIではジャズ向けと聞きました。

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実際にAK320を数日エージングして聞いてみましたが、AK320とAK380の音質差はたしかにあると思います。音質と言っても音傾向が違うと言う感じで、全体的な音質レベル・性能とで言うとかなり近しいので、差は好みの部分かもしれません。その点ではやはりAK320のお買い得感はあると思います。
音の差に関してはケーブルで違いを楽しむ人ならば差ははっきりわかるくらいあると思います。

細かいAK320とAk380の音の差ですが、Layla UF、マベカスさん、FitEar Air、Dita Answerなどの高性能イヤフォンでくらべてみました。だいたい傾向の違いは同じに感じ取れます。
AK320はAK380とくらべるとより高い方が強く感じられ、ヴァイオリンの高いあたり、中高域が刺激的に感じられます。きついというくらいではなく、AK380より少し強めに感じます。
また感じられるのは、全体にAK380のほうがややキー低めに聞こえます。同じ女性ヴォーカルで比べてもAK320は少し若く聞こえる感じです。
低域表現では、いわゆる重低音の部分はAK380のほうが量感があり、通常の低音ではAK320のほうがやや強く鋭く聞こえるように思います。AK320のほうがドラムのインパクトに少し鋭さ硬さがあります。パーカッションの打撃感、インパクトはAK320のほうが鋭いようで打ち付ける感覚がわかりやすいですね。逆に言うとAK380は誇張感が少なく感じます。

情報量とか厚みという点ではAK380のほうがあるように思います。弦の鳴りとか、ヴォーカルの表情とか細かいところで豊かというか倍音が載ってる感じがします。AK320はちょっとドライにでる感じでしょうか。ただ細かい音のチッとかピンって音の明瞭感はAK320のほうが鋭く聴き取りやすい気はします。
音場はAK380がやや広いように思いますが、大きな差ではないと思います。

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誇張して言うとAK380はややアナログっぽい暖かみが少しあり、しかし強調感のなさ、味付けの少なさはAK380です。そういう意味ではむしろAK380の方がニュートラルだと思います。AK380の方がややリッチで深みがある音に思えます。
AK320の方は全体にやや細身でシャープな感じ、より若い感じの音で元気の良さも感じます。ただ少しドライに思えます。高域も低域もAK320の方が強調感があり、低域のインパクトもAK320の方が強く感じます。

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DSDネイティブに関してですが、AK320とAK380にそれぞれBlue Coastの同じ曲の96K PCM版とDSD64版を入れて聴いてみました。
AK320ではたしかにどちらも区別ができませんが、AK380ではやはりDSDの方がデジタルっぽい音のエッジのきつさが緩和されてDSDらしい再現にはなるので違いはあると思います。

AK320ではAK380専用アンプも使用ができます。色が異なり多少形は異なるためやや一体感がなくなりますが、あまり問題はないと思います。ボリュームも問題なく使えます。
AK380AMPを加えると音はよりいっそう洗練されて上下が伸びるようになり、音の厚みも加わります。やはりAK380と同じアクセサリーが使えるというのは大きいと思います。

* まとめ

実質的にAK320とAK380の関係はAK240とAK120IIに似ています。メモリ容量や筺体デザインもそうですが、音質の差も似ています。またAK320の背面パターンはAK120IIを感じさせます。個人的にはAK120IIの音質に関してのコストパフォーマンスは優れていたと思いますが、カタチ的にAK240との差が大きかったことで見た目で損をしていたマシンかなと思います。その点ではAK320はAK380にそう格差を感じさせずに、かえって改良された点もあると思います。ただAK380の方がやはり全体的な質感などはケースも含めて高いとは言えます。
AK380は音の素材感の良さと音の相性からAK380AMP付けっぱなしにして音質をさらに上げて使いたいDAPで、AK320はちょっと強調された音再現から単体で楽しみたいDAPだと思います。

AK320とAK240とはシリアスに比べてはいませんが、おそらく音質レベル・性能的にはAK320の方が上ですが、やはりシーラスの音はそれなりに魅力的なのでここも好みのところが大きいかもしれません。またAK240はAK320や380とくらべるとなんと言ってもコンパクトさが魅力です。

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聴き比べから離れて、単純に音楽を聞いた感じでは、個人的な好みではありますがAK320ではマベカス+シグナルとの相性が抜群だと感じました。AK380だとlayla UFを選ぶと思います。その辺もあるので、音で選びたい人は試聴してみるとよいかもしれません。

ただ音質のレベルという点で言うとAK380とAK320ではそう大きな差はないと思います。コストパフォーマンスで言うとAK320はかなりお勧めです。AK320とAk380の差をわかりやすく書くためにやや誇張気味に書いたところもあるかもしれませんが、AK320とAK380の差よりもAK320/380と他の機種の差の方がずっと大きいと言えます。たとえばAK380とくらべるとAK320の質感は落ちると書きましたが、他のDAPに比べると質感は高くトップクラスだと思います。
そうした点ではAK320はAstell & Kern第三世代のスタンダードモデルの名にふさわしい優れたDAPであるといえるでしょう。
posted by ささき at 10:24 | TrackBack(0) | __→ AK100、AK120、AK240 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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