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2016年01月24日

RoonとuPnP(DLNA)の違い、Roonの優位性、RAATの必然性

Roonをネットワークに発展させたいときは、DLNAとの違いがわかればシステムをどう組むかが分かりやすいでしょう。
前記事でRoon開発者はuPnP(DLNA)機器に批判的と書きましたが、そこに注目するとDLNAとの違い、それに対してのRoonの良いところも分かってくると思います。

* uPnPとRoonの違い

その理由はまずuPnPではエンドポイント(DLNAレンダラー)で音源の読み込み(ファイルのデコード)が必要であることです。このためレンダラーに開発も含めて負担がかかるわけです。
RoonではHQ Playerのシグナルパスを見てもわかるようにCoreが音源の読み込みを一括で行い、ゾーン(エンドポイント)へはデジタルストリームとして渡されます。つまりはFLACだのMP3だのはすべてRoonが扱ってくれます。
ですからRoonReady/RoonSpeakersのプロトコルであるRAATにおいてはサポートするフォーマットという項目はありません。Roon(Core)がDRMや独自形式なども含めてすべてデコードすることを前提にしているからです。これはオーディオ機器側のファームアップデートも最小にし、特許問題なども負担がかかりにくいことになります。
またuPnPではストリーミングの独自形式の対応に弱いことも、Roonでは上と同様にCoreで統合して扱うことができます(たとえばTidal)。
またこのCoreでRadioや信号処理などを統括して提供することができます。

そしてRoon開発者はuPnPに批判的な大きな理由として、uPnPはユーザーにとって優しくない(ユーザーエクスペリエンスが良くない)と言う点をあげています。ユーザーエクスペリエンスというのはユーザーから見た使い勝手、操作しやすさ・快適性のようなことです。ちなみにこれは専門用語というわけでもなく、かつてのWindows XPのXPはエクスペリエンス(が良い)という意味です。
なぜかというと、uPnP(DLNA)はユーザーエクスペリエンスのクリエイターによるものではなく、エンドポイントメーカー(ネットワークオーディオ機器メーカー)による、メーカーのためのものであるからということで、彼らが言うには今まで良いものは見たことがなく、売る側もそう思っていながらメーカーに押し付けられたものを扱わざるを得ないとまで言ってますね。DLNAに対してはなかなか強い調子で批判しています。表面的に飾ってもブレイン(つまりCore)がなければ根本的に変わらないと言うのが彼らの主張のようです。

* AirPlayの長所短所、ユーザーエクスペリエンス本位とは

OpenHomeも仕組みが同じようなものであるので同じ問題があるが、AirPlayに対しては好意的のようです。これは設計がAppleというユーザーエクスペリエンスクリエイターだからと言いたいのでしょう。
ただしAirPlayはユーザーエクスペリエンスが優れている反面で、DSDが扱えなかったり、クロックが送り手(コンピュータ側)に委ねられる点など、オーディオという観点では弱いと指摘しています。その点についてはクロックが一番優れているオーディオ機器側が主導するべきというわけです。

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AirPlayではシグナルパス品質はLosslessではなくHigh Qualityとなります

* RoonSpeakersとRAAT

ここで出てくるのがRoonSpeakersです。そしてそのベースとなるRAATプロトコルがキーとなります。Roonチームは前に書いたようにすでに経験ある人たちなのでRAATもぽっと出てきたわけではありません。RAATではさきに書いたハイエンドオーディオとしてのクロックの取り扱いやマルチルームでの同期、ユーザーエクスペリエンスを阻害するレイテンシーなどももちろん考慮されています。
そして先に書いたようにCoreが音源を読み込むため、オーディオ機器側が音源に煩わされなくてすむという利点があります。
(ただこれにMQAが加わるかは現時点では明確ではありません)

思うにこのRoonの利点は裏返すとDLNAの利点ともいえるように思います。なぜかというとDLNAのメディアサーバーとレンダラーの間にはクロックの依存関係というのはなく、レンダラーという箱の中でクロックという厄介な問題を閉じ込められます。しかしRoonの場合にはCoreとEndpointの間ではクロックの関係ができてしまいます。ここもCore=DLNAメディアサーバー、Endpoint=DLNAレンダラーと簡単に例えられないところです。
そのためRoonにおいてはネットワークケーブルもUSBケーブルに近いものとなると思います。

実際にRoonではEndpoint(DAC)のクロックをCore(PC)にフィードバックしてできるだけ近くするようにネットワークパケットを使って調整するという手段を使ってるようです。
クロックが送り手と受け手で合わないとサンプル数にズレが生じるので、送り手(PCなど)が勝手に送る限りは受け手のクロックが良くても無駄・音質ロスが生じてしまいます。(送り手が正確に1秒に44000サンプルちょうど送らないから)
そこでRoonSpeakersでは受け手のクロックを送り手にフィードバックすることで、このロスを少なくします。アシンクロナスUSBのフローコントロールをネットワークでやってる感じでしょうか。実際にRoon certified USB DACの場合にはDACからのフィードバックを受けてCoreに反映するようです。
またユーザーにとってはRoonにおいてRAATが前の記事に書いたシグナルパス上で表示されるので、どこで問題が起きてるのか目で見て分かりやすいという利点もあります。これはオーディオ品質でも、トラブルでもそうです。

いわばオーディオ機器メーカー主導のDLNAに対して、ユーザーエクスペリエンス側が提供するのがRoonSpeakersであり、それはAirPlayのようにオーディオ的側面をないがしろにせず、かつ使うユーザー本位のものと言えます。
CESのビデオでもRoonReady(RoonSpeakers)はハイエンドオーディオ向けのAirPlayだと語っていたのはこの辺からなのでしょう。つまりはユーザーエクスペリエンスとオーディオ品質の両立です。

RoonSpeakersを使えばリモートのPrivate zoneでも他から見えるようになるはずですので、Roon自体の制限も緩和できます。
ただしPrivate zoneもただ不便なだけではなく、例えば仕事中に子供に曲を変えられたくない場合はPrivate zoneのあるリモートのPCやタブレットで音楽を聴けばよいわけです。そこはユーザーにとっての使いようですね。

オーディオメーカーから見れば、DLNA対応をするか、Roon対応(Roon Ready)にするか、両方かというのが2016年の選択になると思います。
DLNA対応にするならuPnPを実装することになりますし、Roon対応ならRAAT/RoonSpeakersを実装するということになります。
DAPでもAndroid系ならRoon Readyは可能でしょうし、おそらくはRoon開発者の言うようにラズベリーパイを使ったプラットフォームでも可能になるでしょう。(ラズベリーパイ2をターゲットに考えているようです)


ちなみにRoon ReadyというとDLNAというアライアンスの言葉に近く、RoonSpeakers/RAATというとuPnPに相当する技術的用語に近いと思います。
ソフトウェアを言う時はRoonSpeakers、対応機器(とアライアンス)を言う時はRoonReadyということになると思います。RoonSpeakersはいま名称変更を検討中ということです。
名前というと、"Roon"の名称はいわゆる魔法のルーン文字のルーン(Rune)ではなく開発者がOOと並び文字が好きなので命名したということです。もともとの製品もSooloosでした。

Roonはここに書いたような細かいことを知らなくても、アーティスト情報をクリックで辿ったり、ラジオでながら聞きをしたりと簡単に使えるのですが、こうした細かいところを見ていくと、長所短所も含めてRoonの姿というのがよりよく見えてくるのではないかと思います。それはこれからのネットワークオーディオのあり方を変えていくものかもしれません。
posted by ささき at 22:58 | TrackBack(0) | __→ PCオーディオ・ソフト編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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