Music TO GO!

2015年11月12日

茶楽音人(音茶楽)の新機構A.I.R.採用の「ちょんまげ3号」

このユニークなネーミングのイヤフォンはTTR株式会社のブランドであり、音茶楽が技術提供した茶楽音人(サラウンド)の新作です。春のヘッドフォン祭でプロトタイプが展示されていたので覚えてる人も多いでしょう。

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「ちょんまげ3号」の特徴は「トルネード・ターボ・A.I.R.」機構を採用したことです。
「トルネード・ターボ」は高音域のきつさを抑えるトルネード・イコライザーと、低音域を向上させるアコースティック・ターボ方式の複合技術で、これは前作dunguriなどにすでに採用された技術です。
今回新しく採用されたのはA.I.R.という技術ですので本稿ではまずそこを解説します。

ダイナミック型ドライバーを効率的に動かすためには、完全な密閉にしないで適度な空気抜きのベントを設けて外気と通じさせるのがドライバーを動きやすくさせ高音質を得るためのキーであることは、最近のハイブリッド方式のカスタムIEMでもよく出てくる話題です。
実際にちょんまげ3号も完全な密閉に見えますが、この下のリングのところに空気抜きのベント穴があります(下図のMc)。

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ベントは外気と通じてるので、ドライバーが動きやすくなって高音質が得られるメリットと引き換えに、外からノイズとなる音が入ってくると同時に中の音楽が外に漏れてしまうというデメリットもあります。
そこで、ドライバーと外との空気の流れの経路に音響フィルターとなるチャンバー(気室)を設けてそのデメリットを軽減するのがこのA.I.R.技術です。

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上図を見てもらうとまずドライバーユニットの前後が音響抵抗Ma,Raで連結されることでユニットの動きが軽減されますが、さらにドライバーの背圧を逃す必要があります。単に外部にベントで出すと先のデメリットの問題があるので、A.I.R.ではまず第一のチャンバー(Cb)に逃げた空気がダクトMbを通って第二チャンバー(Cc)に逃げ、さらにベント穴のMcを通って外に出ます。
Mb,Mcはハイカットフィルターとして機能して外向きと内向きのノイズを低減します。これで低音域が伸びるということです。またドライバーがより自由に動けることで音場を改善できるそうです。
春のヘッドフォン祭でプロトタイプをいくつか出展してユーザーの意見を聴いていたのは、このチャンバーの形などをいろいろと変えて工夫していたということのようです。

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A.I.R.の応用で面白いのは今回同時にリリースされた「ちょんまげ君」です。これは語学学習に最適というイヤフォンですが、これはA.I.R.の特性を逆に利用してMb,Mcをふさぐことにより低音域を弱めているということ。さらに高域フィルターを使用して声の帯域に特化させているようです。

* 試聴

チップは好評のSpinfit大中小の3セットとコンプライが1セットはいっています。
中には金属ケースがあり、布に包まれてイヤフォン本体が入ってます。パッケージングは価格にすると丁寧な感じはしますね。

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音に関してはチップはSpinfitのほうが特徴ははっきり分かるように思います。
iPhoneで聞いてみましたが、「ちょんまげ3号」でまず感じるのは、音の鳴り方というか、音色がちょっと独特だということ。抜けが良いというかこもり感が少ない感があります。ダイナミックだと厚みがあるようで実は重く濁った感があることも多いんですが、これはすっきりとして雑味が少ないという感じです。
密閉型ヘッドフォンでこもる感じが嫌な人に良いと思いますし、この辺が独特の開放感があります。

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Spinfitでは帯域的にドンシャリっぽさは少なく洗練された帯域再現で、音茶楽さんらしいピーク低減の効果もあってか高音域のささり感も少ないですね。低音域は膨らみすぎず質の良いベースの音がします。低域は量感も結構ありますが、ワイドレンジというか超低域の低いほうの量が多い感じで中低域のベースの演出感は少ない方だと思います。音茶楽さんのイヤフォンに共通しますが、楽器の音色再現も自然でリアルだと思います
ただSpinfitだとロックポップでやや物足りない感はあります。
コンプライだとベースの量感もたっぷりにロックポップに向いてる感じで、ヴォーカルもコンプライの方が良いように思います。

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ちょんまげ3号

遮音性についてはたしかに電車で使ってると普通のカナルインイヤータイプのように周りの騒音が低くなるだけではなく、マイルドというか柔らかく優しく聞こえるように思います。特に高域の尖った感が少ないですね。ここもちょっと面白い特徴だと思います。

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ちょんまげ君

ちょんまげ君の方も試してみました。iPhoneに入っているTOEIC対策のリスニングアプリを使ってみました。すると英語の発音がとても明瞭にわかるようになり、理解度が上がります。低音域がなくなることで、音声にかからなくなって発音のごにょごにょしたところがすっきりする感覚です。
難易度が上がると噂の来年から始まる新新TOEIC向けにもちょんまげ君で学習しておくと言うのは良いかもしれません。また語学だけでなく、ラジオ聴いたりいろいろと応用ができると思います。

ユニークなネーミングのちょんまげ3号は音もなかなかユニークなところがありますので、ぜひ試してみてください。

   

posted by ささき at 22:21 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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