AK380が登場した時に発表となっていた待望のAK380専用アンプがいよいよ発売されます。名称は「Astell&Kern AK380 アンプ メテオリックチタン」です。本稿では以降AK380アンプ、または単にアンプと書きます。
予約は本日から開始、発売は9月18日からです。価格はオープンですが、参考としては直販が99,980円(税込)です。
* AK380アンプの特徴
このアンプの特徴はAK380専用の設計をして使い勝手と音質の両立を実現していることです。
そのポイントの一つはボリュームです。下の図を見てもらうとわかりますが、AK380アンプ側にもボリュームがあります。このAK380アンプのボリュームは確認したところ実はアナログボリュームです。しかしアンプの外にはボリュームノブらしきものはありません。このアンプのアナログボリュームはAK380本体のボリュームからUSB経由でコントロールされるのです。
Astell&kernのデジタルプレーヤーは伝統的にDAC内のデジタルボリュームを使用してきました。これはかさばるボリューム回路がないのでプレーヤーをコンパクトに作ることができます。
しかし反面でデジタルボリュームは計算誤差によりビット落ちをしてしまう可能性があり、それが音質低下を引き起こしてしまいがちです。それをふせぐために取られる手法の一つはアナログボリュームを使うことです。
そこでAK380アンプでは、余裕のあるアンプ側にアナログボリュームを設けて、AK380側ではデジタルボリュームを切って(Maxにして)出力します。またAK380とAK380アンプの間は音質の劣化するミニプラグではなく、専用の4ピンプラグでバランス伝送で信号が渡されます。
AK380アンプのボリュームはAK380本体のボリュームノブの動きを信号として受けてUSB経由でAK380アンプに変化量が渡されます。USBはボリューム情報を渡すことができますので、これでAK380アンプ内のボリュームをリモート制御して動かします。
(ちなみにUSB信号でアナログボリュームをリモートコントロールするというのははAudioQuestのDragonflyでも取られた手法です)
これによって、一体型としての利便性を確保したうえで、音質の上では有利なアナログボリュームをAK380で使用することができるというわけです。
そのほかのスペックを簡単に書くと、バッテリー容量は3400mahで本体と同じです。実際の持ちは出力のモードにより異なり、アンバランス出力で9時間ということです。出力は高ゲインでは8.1Vrmsと低ゲインの2.1Vrmsよりかなり高くなっています。
* 簡単な使い方
1.まずAK380の肩にある背面のねじを外します。
2.次にAK380とAK380アンプを合体させます。USBと4ピンでアンプと本体が接合されます。
3.そしてAK380アンプ側のねじでさきほど外したねじの箇所を留めます。
4.イヤフォンをAK380アンプのバランス、またはアンバランスに装着します。バランスは本体と同じく自動検知されます。
5.AK380の電源をオンにします。(アンプ側と電源は連動しています)
6.AK380のメニューを引き出して、AMPのボタンをオンにします。すると自動で音量が落ちます(耳を保護するため)
7.設定ボタンを押して、アンプの項目から高ゲイン、または低ゲインを選びます。低ゲインであればAK380本体と音量はさほど変わりません。高ゲインでは音量が高くなります。
8.音量をあげます。(イヤフォンを抜くとまた音量が自動で下がります)
充電はアンプのUSBポートを使うだけで本体もアンプも充電されます。またアンプ側のUSBポート経由でデータの転送も可能ですが、アンプを使用しているときにはUSB DACは使えません。
使用中はかなり熱くなりますので多少注意してください。
* AK380アンプの音質
おそらく一番気になるのはこの専用アンプをつけてどのくらい音質向上があるか、ということでしょう。
たぶん高ゲインでの音の差はすぐにわかると思います。力強さが一段と増して、ドラムのインパクトがパワフルになり、ギターのキレが一段とシャープさを増します。
ロックやエレクトロミュージックは一段とかっこよく、パワフルで元気よく鳴るようになります。音調というか音の個性はAK380のままでパワフルになるという感じでしょうか。イヤフォンとの組み合わせによってはちょっとクセになりそうな力強いパワー感が味わえます。
低ゲインでは音量が単体で聴くのとほぼ同じということもあり、はじめ差がわかりにくいかもしれませんがアコースティック音楽のハイレゾ音源など、高品質の音楽を聴いていると解像力が単体より高く、音の芯もより明瞭にかっちりとしていることがわかります。AK380の解像度がさらに上がるように感じられ、また音がより明瞭に深く表現されます。
完全なユニティゲイン(1:1)ではなく微妙に音圧は上がりますがそれ以上の変化があると思います。
ゆったりした音楽で高ゲインだと押しが強すぎるがシャープさは落としたくないというときも低ゲインが良いと思います。
また使用するイヤフォンや聴く音楽によって低ゲインと高ゲインは使い分けられるでしょう。
私なら低ゲインではJH AudioのLayla UF、高ゲインではCampfireのLyraがお気に入りです。
JHA Layla UFは性能が高すぎるゆえに、使用するシステムを選んでしまい、なかなかこれというのがありませんでしたが、このAK380アンプはバランスでLaylaの魔法のような音空間を堪能させて聴かせてくれます。Laylaをロックでこんなにかっこよくパワフルに鳴らし、オーケストラでは独特の立体的な音空間でスケール感豊かに、情報量豊かに鳴らします。
CampfireのLyraはさっそくAK380アンプの高ゲインで大活躍してくれます。スピード感がありベースはインパクト力強く鋭く、高音域は澄み切って透明感があります。
高ゲインではAKT5pもまたオススメです。AK380単体とは明らかに異なるレベルのインパクト感が得られます。またイヤフォンとは異なる空間の広がりも一層堪能できます。
他の外付けアンプとして、重量級のiQube V3と比較してみました。iQube V3へはアナログ入力で、高品質のCrystal CablesのMicro線材を使用したケーブル(Dirigent red label)を使用して、AK380からはLineoutモードでミニ端子から出力というかたちに組み合わせました。
同じ曲で聴き比べてみました。個性はやや違いますが、全体的な性能はAK380アンプが少し上と言ってよいのではないかと思います。やはり直付けの専用設計というところが効いているでしょう。またiQubeだとややドライなiQubeの音になりますのでそこも音調がAK380単体と合わせてあるAk380アンプはなかなか好ましいと思います。
また実際に使ってみると曲送りコントロールとボリュームはAK380本体なので便利なのも特筆点です。他のアンプを使うとボリュームは別になってしまいます。またケーブルもいらないので、コンパクトに使うことができます。外付けアンプだと電源も別々になってしまいますね。
電池の持ちはすっかり測ってませんが、両方ともフルチャージしてから聴き始めると、アンプの方が先になくなるけれど、そんな差ではないと思います。43%と38%とか、そんなものですが、ここはさきに書いたようにゲインのモードでも違うでしょう。
ボリューム位置にはLEDライトアップがありますが、ちょっとしたギミックで面白いですね。
* まとめ
AK380アンプはAK380の圧倒的な情報量を活かして、よりクリアでパワフル、さらに上質の音を提供しています。そのうえで電源ボタンもボリュームもAK380本体と連動するので使い勝手は単体とあまり変わりません。
これは一体型アンプとか合体アンプというよりも、AK380の完成系って言った方がむしろ正しいかもしれません。特に低ゲインで聴いてるとそう思います。一方で高ゲインだと別物感を楽しめるので、外付けアンプで音を大きく変えたい人にも魅力的でしょう。
おそらく買う前はつけたら重いとか、かさばるとか言うかもしれないけど、いったんつけたらもう外さないと思いますよ。
Music TO GO!
2015年09月11日
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