昨年は大雪で大変なことになったポタ研ですが、今回はうららかに晴れて春を思わせる中での開催となりました。
今回の目玉の一つは昨年から話題となっていてCESデビューしたAudioQuestのヘッドフォン、Nighthawkです。この発表会が開催されました。
なぜケーブル専業に思えるAudioQuestがヘッドフォンをと言うかもしれませんが、逆説的ながらNighthawkの特徴は一言でいうとAudioQuestらしいヘッドフォンということです。
どういうことかというと、まず第一はAudioQuestはヘッドフォンを作ったことがないので伝統がなく、一から作れたということです。つまりこれが他のヘッドフォンの延長上ではなく、スクラッチビルドされた設計だということです。そのためにこれまでにないユニークな特徴を持ってます。これはヘッドフォンメーカーではないAudioQuestゆえの良いところでしょう。
具体的にはまずラウドスピーカー(ヘッドフォンに対しての普通のスピーカー)で用いられる技術を随所に採用してます。例えばハウジングの裏側はまるでスピーカーのキャビネットのように吸音材や補強材が施されています。バイオセルロースの振動板の周辺にはサラウンドと呼ばれるスピーカーでいうエッジがあります。これらは従来のヘッドフォンにはなかったもので、Nighthawkはラウドスピーカーのミニチュアのようなものです。
ヘッドフォンはよくスピーカーを例に取られますが実は両者は別々の進化をしてきたということも再認識させてくれます。
またNighthawkでは装着性にもこだわっています。ヘッドバンドはよく見られるノッチやバーで上げ下げするのではなく独自のサスペンションでフィットするように作り、リキッドウッドという木だけど液状に加工できるハウジングで音響的に有利でかつたくさん人に合うように理想の形を作っています。
卵の殻から作ったという人工皮革のイヤパッドはよく馴染むとともに経年劣化のさいの交換も容易です。
ケーブルはAudioQuestの得意とするところで、高純度の線材を採用するとともに4芯でバランスにも対応可能です。
また細部のこだわりは付属のミニと標準プラグの変換プラグにも及び、一般的なニッケルメッキされたブラス素材とはことなりシルバーコートされた銅を使用しています。
Nighthawkはセミオープンで、ダイアモンド形状グリルのディフューザーで背圧のエアフローを整えるのは蝶の一種から着想を得たということで、これは3Dプリンタでないと作れないような構造だそうです。
こうした新しいアイディアを投入して、Nighthawkを設計したのはSkylar Greyという人で、HeadFiメンバーでもありHeadFiでNighthawkの書き込みをしてます。彼はもとはWestoneでカスタムIEMやイヤフォン開発に携わってきた人で、2年の歳月をかけてNighthawkを開発しました。サブウーファーを作ってたこともあるようで、もともとラウドスピーカーの素養を持ってたようです。
Nighthawkは少し聞いただけですが、明瞭感とクローズっぽい密度感が両立されている感じですね。インパクトが強く、 三次元的な立体感も感じられます。
それと装着感はかなり独特なものがあり、なかなか良い感じです。
なぜAudioQuesutがDragonflyやNighthawkのようなケーブル以外の製品も作るのか、と聞いたところ、このオーディオの世界は急激に変化してるので、顧客がほしいと思っているものを我々も作っていきたいのだと言っていました。
次はNightowlというクローズタイプを作るということですので楽しみにしたいところです。
もう一つAK500N試聴会もありました。大入り満員で立ち見も出てましたね。
スピーカーはELAC、プリメインアンプにマークレビンソンの新型とハイエンドのシステムを使用しています。
一曲目でヴォーカルが浮き上がるように鮮明に耳に飛び込んできます。パーカッションのデモ曲での立体感と打楽器の色彩感再現も見事ですね。AK500Nはなかなか真面目に作られていると思います。
そして、こちら。「究極のポータブルシステム」です。
アユートさんのブースは14Fにもあり、こちらではレイラとアンジー試聴の長い列ができていました。またこの前書いたSONY ZX1用のGloveAudio S1も人気だったようです。S1はアユートさんではすべてシルバーカラーの国内タイプを販売します。
こちらはAk240SS(ステンレス)です。筐体の金属素材が異なるとグランドの特性が異なるので音質も異なるということです。国内価格はまだ未定ということです。
またこちらはアユートさんで新規導入のMaster&Dynamicのヘッドフォンとイヤフォンです。ヘッドフォンはなかなか精密に作りになってモノ的な魅力があります。ヘッドフォンもイヤフォンもiPhoneで聴くとなかなか良い音でした。
Oppo JapanではヘッドフォンアンプのHA2と、平面型クローズタイプのPM3でポータブルに向けたシステムを展開していました。HA2は昨年のポタフェスより改良をして音をよりイヤフォン向けになったということです。また大きな改良点として、前はiPhoneと接続する際にはmicroBの口にカメラコネクションキットを使って接続していましたが、この新しいタイプではUSB Aの口がついて、USB-ライトニングケーブルで簡単に接続が可能になりました。Android対応もあるそうです。
これらはOppo Japanが積極的に日本市場に合わせたリクエストをし、Oppo側も日本の市場が重要だということを踏まえて改良をしてくれているということです。
PM3はケーブルが4本線なのでバランス化も期待できそうです。3/20に発売予定で、HA2は39000円くらい、PM3は55000円くらいと価格が安いのも魅力的です。
FitEarブースでは彩、fitearとともにショコラという謎のイヤフォンが展示されていました。ショコラについてはまだしばらく謎ということだそうですので。。
また今回初見参の「須山ジャンク堂」ではこの前記事を書いたShanling M3が展示されていましたが、もう少し販売まで時間がかかりそうです。アンプのH1はすでに販売されています。これらはSNSでのコミュニケーションをしながら育てていくというスタンスを取っていくそうです。
Mixwaveでは1964ADELの展示がありました。ADEL技術については下記記事を参照してください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/408595702.html
これは固定ベントのタイプで、ベントの効果の有り無しを試すことはできませんでしたが、聞いてみるとたしかに詰まったものが取れてすっきりしたという感じはあります。ADELベントによって低域が漏れるということはないようで、他の人が試しているときにも音が漏れてくるということはないようでした。
Jaben JapanではGloveAudio S1のブラックが展示されていました。これは国際版です。またER4SのSpiralStrandケーブルも出ていました。
またCalyx Mのオプションバッテリー(上右)も展示されていました。これは裏蓋を外して内部の電池を取り換えて使うタイプでこれで11時間の動作ができるということです。
A2PさんではSITを採用したTR07hpの完成版(下)が展示されていました。これには電流駆動タイプと電圧駆動タイプがあります。電流駆動タイプはシングルドライバー(クロスオーバーなし)のダイナミックヘッドフォンに向いていて、電圧駆動はクロスオーバーのあるマルチウエイBAなどに向いています。
マス工房ではmodel 404という巨大なポータブルアンプが出ていましたが、これはAbyss用のポータブルだそうです。海外需要があるということ。なかなかパワフルな音でしたね。
iFIでは日本企画でiBalance(下)というヘッドフォン(Sonyタイプバランス)をiDSDのRCAアウトからバランスで聴くためのものが展示されていました。意外と良い音でした。
またiAtteneterというイヤフォンのために抵抗入れてアッテネートするためです。
またPAW VEというPAW Goldの元モデル(上右)も展示されていました。PAW Goldは販売も好調で制作元が驚くほどだそうです。すでにけっこう出てますが返品率はほぼゼロだそうで、さすがナグラ品質。こうしたことはそのうち中国製品のイメージを覆してくれるでしょう。
テックウインドではWestoneのUM56(下)を展示していました。これはユニバーサルのチップとして使用するカスタムイヤチップです。耳型を送って注文し、シリコンのカスタムチップを作ってくれます。かなり豊富なカラー選択もできます。23000円ということ。カスタムではES60が売れてるそうで、これも製造元が驚くほどだそう。
WagnusではPONO用のDiamond dust type Aenigmaというブルガリア線材を作ったケーブルが興味をひきました(下)。K10で聴いてみました。私はいつもはBlackDragonで柔目なPONOの音を再生させてるけど、これだとPONOのより性能が高い面を引き出せるようです。ドライでなく、PONOの良いところも持ってますね。例のフラッグシップは速攻売り切れだそう。
前にうちのブログでARM1の記事を書きましたが、その後継であるAcoustic Research M2(ARM2)も展示されていました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/373836210.html
パッと見るとARM1とARM2は違うんですが、よく見るとARM1とデザインが似てて、ボリュームダイヤルとか底面のプラグも似てます。背面デザインも似て、大きくなってAndroidになった感じです。
音はARM1に比べてよりワイドレンジで音も洗練されて整った感じ。HiFi的で性能は良くなった感じとは言えますが、ARM1のちょっとした個性だったダイレクト感というか鮮度感の高さは薄れています。
今回もなかなか濃くて面白いイベントでした。いままではイヤフォン優位でしたが、Nighthawk、PM3、そしてAKT5pと高性能ヘッドフォンが再び注目を浴びてきたのも面白いですね。
今度はいよいよヘッドフォン祭ですので、またまた楽しみです。
Music TO GO!
2015年02月14日
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