Music TO GO!

2015年02月12日

Shanling(シャンリン) M3レビュー

Shanling(シャンリン)は中国の大手オーディオメーカーで、1989年に創業してCDプレーヤーやDAC、真空管アンプなどスピーカーオーディオからPCオーディオまで多様なラインナップがあります。以前は真空管アンプなどが日本でも販売されていたと思います。

IMG_5769_filtered[1].jpg

M3はシャンリンのハイレゾプレーヤーで192/24対応です。
メモリーは内蔵が8GB、MicroSDスロットがひとつ装備されています。最近のFWアップデートでexFATが読めるようになり、最大で128GBまで認識できます。
ファームウエアのアップデートが多いのですが、レビューは音と機能は一番使ったFW1.08、UIは大きく刷新された最新のFW1.15ベータを使用しています。またハード的に昨年の古いユニットといまの新しいユニットがあって、新しいユニットではイヤフォンプラグや音質が改善されているようです。下画像は主に新しいユニットです。

電池の持ちは公称で9時間程度だと思います。重さは220gです。色はブラックとシルバーがあります。

* M3の回路設計

まず私がM3に興味をもった点は、オペアンプ構成がAD8610+BUF634ということです。つまりこれはあのサミュエルズさんのSR71と同じ構成だからです。聞いてみるとやはりSR71同様にデュアルモノを意識して設計しているということです。この辺は音に効いていると思います。
DACチップはシーラスのCS4398で、CS8422によって192kHzアップサンプリングが可能です(中の設定で行います)。最近のファームでは24bit拡張も同時に行っています。またこのCS8422によってジッター制御も行っています(おそらくASRC)。

またM3のタオバオの広告を見ていて興味を引いたのはこれが台湾の有名な博士によって設計されたとうたっていることです。広告に載せるくらい向こうでは有名なのかと、これもShanlingの人に聞いてみたところ、その人はDr Choiという人で台湾のオーディオ世界では名の知られた設計者であるということです。この人は回路設計と音質解析のエキスパートで、38°やESTiなどのブランドを立ち上げたことでも知られているということです。
設計者を広告に使うというのもちょっと興味深いことです。

* M3の操作系と機能

M3のはじめの特徴はユニークな操作系です。M3はAndroidではなく独自ファームウエアを採用しています。そのためタッチパネルではなくキーでの操作になりますが、その操作は右上のコントロールホイールを使用します。これはボリュームと十字キーを合わせたような機能を持ち、回転させるとボリュームの上下、ジョイスティックのように倒すと十字キーのような機能を持ちます。

IMG_5741_filtered[1].jpg

これは使ってみるとなかなか便利です。よく曲を変えると録音レベルが違ったり、静かな曲とかうるさい曲で音のボリュームをすぐ変えたくなることがありますが、この仕組みだとそれが簡単に可能です。
このほかにある操作系は電源ボタンだけで、これは操作ロックも兼ねています。

IMG_5778_filtered[1].jpg

シャンリンの人に聞いてみると、普通のハイレゾプレーヤーはボタンが多くてデザインに制約を与えてしまい発想の余地がない、そこで彼らはジョイスティックひとつとボタン一つというシンプルな形にしたかったということです。これによって片手だけでの操作が可能だということ。
このスティック自体はジッポライターから発案したという話で、今後もこのミニマル志向で設計していきたいということです。

IMG_5763_filtered[1].jpg   IMG_5775_filtered[1].jpg

画面は2.4インチ液晶でタッチではありません。前はメニュー階層が分かりにくかったし、デザインがいまひとつだったのですが、最新ファームではUIが大きく変わって メニュー階層も分かりやすく、デザインも洗練された感じです。

もうひとつのM3の特徴は入出力が豊富だということです。光出力もついています。入力はアナログインと光イン、出力もアナログアウトと光アウトがついています。ラインアウトがついててるDAPはいろいろありますが、アナログインがついているのはあまりないように思いますね。通常の音楽はDAPに入れておけばよいですが、たとえばiPhoneで動画をみてたりゲームをやってるときに、より迫力ある音で楽しみたいというときにも使えます。

IMG_5758_filtered[1].jpg   IMG_5747_filtered[1].jpg

ハイレゾDAPというより、TEACのようにハイレゾDAP+ポータブルアンプととらえることもできるような汎用性も期待できそうです。


* M3の音質

M3はファームウエアで音がよく変わるので、よく覚えてるFW1.08でのレビューです。
イヤフォンはFitEar fitearが良い感じでお勧めです。キレの良さと細かさを堪能できます。私は001ケーブルをつけてチップを変えて使用しています。JVCのFX1100やJH Audioアンジーなんかもお勧めです。ワイドレンジ感や空間表現など、これらの高性能イヤフォンの性能を十分に生かしている感じですね。

IMG_5756_filtered[1].jpg

M3でまず印象的なのはバランスでなくてなにがわるい、と言いたくなるような広大な音の広がりの良さです。これはバージョン問わずM3の基本的な長所だと思います。おそらくデュアルモノの設計が効いているのでしょうね。
ワイドレンジで高低の帯域バランスはクセがないので、組み合わせたイヤフォンの性格が素直に出ると思います。音色もニュートラルでクセがない方だと思います。
素直な素材感のある一方で、モニター的というよりはコンシューマーライクでメリハリがあって迫力があってパワフルです。耳に近い感じで迫力もありますね。音の良さがわかりやすく、MP3でも音が良いのでエントリーユーザーにも向いてると思います。
楽器音は明瞭感が高くクリアですが、加えて滑らかさがあって、そこが価格以上に上質に感じさせるところでもあります。情報量とか音の正確さはこの価格帯ではかなり良い方だと思います。
それとM3で良いと思うのはいわゆるモニターライクではなく、聴いていて音楽的にきれいな音と感じられる点ですね。

周波数特性は低域が張り出してないでバランスよくフラットに聞こえるけれど、低いほうまでよく出て量感が確保されているのでベースが強いように聞こえると思います。またワイドレンジ感があり、高域も透明によく上に伸びる感じですね。この辺はFWバージョンでも少し異なるかもしれません。

Fitear fitearの空間再現の良さ、雰囲気感、クリアな細かさがよく発揮できます。この組み合わせでは躍動感とかインパクトも良いですね。
fitearだとキレの良さとかスピード感があって、ノリの良いジャズではフットステップ踏みたくなるくらいです。

* まとめ

総じてコストパフォーマンスが良く、価格以上の内容が楽しめると思います。またジョイスティック方式の操作はなかなか良くできていますが、多少慣れは必要かもしれません。
ホタ研では上の新UIでデモするということなので、当日は須山さんブースにどうぞ。
posted by ささき at 21:40 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック