Music TO GO!
2014年12月04日
ニールヤングのPONO到着とファーストインプレ
* ニールヤングのPONO
今年はクラウドファンディングで開発されるオーディオ機器が盛り上がりを見せてきました。その中でも象徴的に取り上げられたのはニールヤングのPONOだと思います。もともとPONOはニールヤングの音楽を変えよえとした試みでした。
ニールヤングはジョブズとともに音楽・オーディオ業界にiPodの次を考えて話をしていたわけですが、ジョブズを失った後に自分がやらなければ、と思ったのか、それが形になったのがPONO Music Player、つまりニールヤングが作ったハイレゾプレーヤーです。これはハイレゾ音源を販売するPONO Musicストアと合わせてニールヤングの考える高い音質の音楽リスニングのあり方を提示したと言えるでしょう。
ただし市場はおそらくヤングの想像以上に進んでいて、実のところすでにAstell&Kernがハイレゾプレーヤーの位置を占めていたわけです。そこにPONOが追う形になったというのがひとつのポイントだと思います。つまり考えていた以上のものを世に出す必要が出たということです。
また、当初はアンチPONO的なネガティブ意見が意外と多かったのも興味深いところです。とはいえAK100ではそうしたことはありませんでしたので、ニールヤングのプロモーション自体がいかにいままでにそうしたものに興味なかった層にアピールしたかがわかります。実際にはWalkmanよりもさらに一般層にアピールしたということだと思います。
* PONOとKickstarter
そうしてPONO PlayerはKickstarterキャンペーンで開始するという面白い展開ではじまりました。こちらに記事を書きました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/391214911.html
ちなみにクラウドファンディング・Kickstarterについてはこちらをお読みください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/391376986.html
私はキャンペーン開始当日は出るだろうEarly birdの安いモデルに照準を合わせていて早起きしたのですが、日本時間の早朝に起きた時にはすでに$299だった早割モデルは売り切れでした。たしか始まったのが日本時間の3時ころだったと思います。そこでアーティストモデルのなかでもやはり象徴的なニールヤング・シグネチャーモデルを選択しました。そうしたらこれも早々に売り切れてしまい、事前のネガティブ意見を上回る実際のPONO人気の高さを伺わせてくれました。結果としてPONOはKickstrterでも上位に入るクラウドファンディングの優等生となったわけです。おそらくPONOではじめてクラウドファンディングに手を染めた人も多いと思います。
ニールヤング・シグネチャモデル
KickstarterがKickstrterであるゆえんは、スタートアップ、つまり新興企業を支援するためで、そうしたところは技術的な気概はあってもロジステックスや企業運営には素人なわけです。ですのでたいていKickstarterものは遅延します。当然PONOの会社も例外ではありません。
10月中に届ける、という目標はなんとか10月中に出荷を開始と言う線をキープできた程度です。その後も遅れたりサポート問題でおそらく12月中までは最低かかるでしょう。12月予定だった分は来年だと思います。
Update#50でサポートが強化されましたが、私の場合はまず住所欄にJapanが選べないという問題がありました。途中でデータをKickstarterからPono Musicのデータベースに移動した際に起こったと思います。次にニールヤングモデルの仕上げに不備があるという問題があり、これは特定のシグネチャーモデルに発生しました。
これは他のクラウドファンディングでも同じですが、クラウドファンディングものはパーツがそろった順に組み立てるので、届く早さは申し込みの日時より、オプションのパーツがそろう順になってしまうのが常だと思います。ブラックを頼んだ人は仮に私のように初日に頼んでいたとしてもおそらくさらに遅れていると思います。
なにはともあれ、やっと手元にPONO Playerが届きました。
* PONO Player
ハイレゾプレーヤーとして見た場合、話題をまいたのは設計がAyreによってなされたという点です。AyreといえばMPフィルタの使用で知られています。これも当初情報では設計はMeridianでした。おそらく途中までは実際にやっていたのではないかと思います。というのは、もともとPONOはニールヤングがなにか新しい音楽フォーマットを策定しているといううわさがはじまりですが、おそらくそれはMeridianの独自形式MLPのことだったのではないかと考えられるふしがあるからです。しかしながらなんらかの理由でMeridianとは別れて、最終的にはAyreが設計担当になっています。
液晶の立ち上げ時にもPowered by Ayreの文字が表示されます。また当初の協力クレジットにはAudioQuestの名前もありました。ただし製品としてのPONOはあくまでPONO Music社の製品ですので、品質管理などはそちらの責任となりますので念のため。
またPONOが特徴的なのはバランス駆動に対応していることです。一見そうは見えませんが、3.5mmイヤフォン端子と3.5mmラインアウトを同時に使うことでバランス駆動が実現できます。ソニーと同じような規格のようです。実際にソニーバランスを使っている人もいますね。
バランスプラグの極性は下記のリンクに図式があります(PONO Musicのアカウントが必要です)。これを見てもらうとわかりますが、Ayreのレターヘッドにチャーリーハンセンのサインが記入されています。
https://ponomusic.force.com/069A0000001eCMz
またラインアウトを使って2人で聴くモードもあります。これらのことから考えると、このラインアウトはいわゆる真のラインアウトではないと思います。
PC上のソフトウエアも提供されますが、音源はPCからUSBで直接出し入れできるので特にソフトウエアがなくてもかまいません。PCとのUSB接続はMTPではなくマスストレージクラスです。PCと接続するとルート直下にAndroidというフォルダーがあって、ははーんと思わせてくれます。
マスストレージクラスなので曲の転送が終わったらライブラリの再構築が必要です。(MTPの場合はファイル単位で送られるので都度ライブラリがアップデートできて、まとめて再構築不要なのが良い点です)
メモリは内蔵64GBに64GBのMicroSDが付属してきます。MicroSDは128GBまで認識できるので、トータルで192GBまで拡張できます。
シグネチャーモデルは竹製の化粧箱に入って届けられます。これも一部の国では輸入禁止品目に当たるため、遅延をもたらす原因となりました。
話題となった三角形のボディデザインはデスクトップに横置きするためのものですが、手に持ってみると意外としっくりきます。手に包むように握れる感覚はたしかにiPodを思い出します。
○ボタンは電源オンオフだけではなく、iPhoneイヤフォンのリモコンのように二回クリックで曲スキップ、三回でリワインドという風にも使えます。操作系がでかいのは便利ですね。
ただタッチパネルの液晶で曲を選択していくのはやや不便なものはあります。また大きさの割には軽い感じです。
はじめちょっと聴いたときはいまひとつか、と思いましたが一日バーンインしたらかなりよくなりました。後で書きますが、PONOの音の良さは滑らかさなので、滑らかにならないとPONOの良さが出てこないと思います。
まず楽器の音がきれいで、ピアノの再現なんかは良いですね。明瞭感とか細かさもよい方です。クリアでありながら柔らかく滑らかに音の角が取れています。ESS的な細かさはありますが、ESS的なドライさはなく、ここはAyreのMPフィルタ技術が抑え勝ちをしたというところでしょうか。音楽的な設計でスムーズな音鳴りだと思います。バランスケーブル作るなら銀線よりは銅線で作りたい感じです。
また帯域バランスもよく出来ていて、いろんなジャンルに合うと思います。音の広さはもうちょっとほしい気はしますが、悪くはありません。立体感はなかなか良いです。
ただイヤフォンではややゲインが高いのでヘッドフォン向けに作ってる気はします。ただ背景ノイズはないので、高感度BAでも大丈夫です。
ハイレゾ音源を再生中はLEDが転倒したり、曲リストでマークされていたりとハイレゾを意識しているのも面白いところです。
PONOにははじめから曲がインストールされています。私の場合はニールヤングのHarvestとStorytoneの新旧二作のハイレゾアルバムが入っていました。Harvestはあの有名なHeart Of Goldが入っているアルバムです。
PONOは音楽好きのために作ったと言いながらバランス駆動とか意外とマニアックなものになってますし、音も本格派です。操作性はまずまずというところですが、音は価格以上はあるでしょう。優しく音楽を楽しめる風に作りこんでいます。音に関しては伊達にAyreの名前は使っていないというか、なかなかよい出来だと思います。
Ayreも自ブランドでハイレゾプレーヤーのハイエンドモデルをだしたくなるんじゃないかと思いますね。
RocketsとPONOを組み合わせてもよい感じですが、今年はKickstarterでハイレゾプレーヤーもイヤフォンも高性能なものがそろってしまいました。来年もすでにGeek Waveや1964ADELなどクラウドファンディングものが見えてますが、まだまだ出てくることでしょう。
さてこのニールヤングの試みはどう評価されるのか、これも2015年にかけての興味の一つです。
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