3DプリンターをカスタムIEMに使用した際の利点ですが、以下のようなものです。
従来の手法で樹脂を化学工程で硬化させるシェルの制作においては、複雑な整形をする際にシェルの部分によって硬化のタイミングが異なってしまい、それで不均一が生じるという問題がありました。この問題によりシェルの成型に悪影響をする場合があるわけです。
しかしながら積層する3Dプリンタを使用する場合には原理的にこの問題を生じません。そのためより正確で複雑な設計が可能となります。
その一例は彩に採用されたホーン形状の高域音導孔です。BA型ではどうしても高音域の伸びに制約が出てしまいますが、この形状によって最高域の拡大とともに、肩特性の緩やかな減衰を得られる特性を得ています。
また3Dプリンターの採用により、最悪ひとつしか音導孔をあけられない場合でも、それをホーン形状に形成し、ホーン開口部あたりにもう一本の音導孔を合流させるといった複雑な設計も可能になったということです。
![IMG_4913_filtered[1].jpg](https://vaiopocket.up.seesaa.net/image/IMG_4913_filtered5B15D-thumbnail2.jpg)
彩のもうひとつのポイントは改良された新設計のネットワークです。これは過度の帯域重複を避けて特にヴォーカル域での特性に注目したもののようです。
また、彩は事前にうわさされていたようにパルテールのカスタム版ではありません。彩ではウーファーにはアコースティックローパスフィルタはなく、基本広い帯域を担当させているということです。
実際に使ってみたところブラックペイントがカッコ良く、思わず写真をいっぱい撮ってしました。軽くて装着感良く、かなりぴったりフィットします。ちなみにこの感想メモは、彩が3Dプリントと聞く前のメモでバイアスはありません。
音質はきれいな音鳴りで、一つ一つの音は細身で贅肉が取れたすっきりとした音です。他のカスタムIEMと比べたときの特徴は抜けの良い清涼感とも言える透明感です。プレーヤーなどの組み合わせもあるかもしれないけど、この二点は個性として感じられます。
録音の良いジャズトリオのドラムやウッドベースの音の鮮明さ、生っぽさとリアルさは特筆モノかと思います。特にAK120IIと組み合わせたときですね。濁りのないピアノの純な響きも気持ちよく感じられます。
ヴォーカルもとても明瞭で聞き取り安く、特に声の透明感や高域方向の伸びが良い感じです。女性ヴォーカルにはかなり向いたイヤフォンと言えます。特にAK120IIと組み合わせたときの女性ヴォーカルは逸品だと思いますね。
3Dプリンターの採用はよく製作が簡単にできるという誤解を生みますが、実はむしろ手間がかかるという面が大きいようです。つまり3Dプリント化は我々が普通考える簡素化よりも、今までできなかったことをするというプラスの要素が高いということになります。ユニバーサルタイプはすでに3Dプリンター化しているということですが、カスタムにおける3Dプリンターの効果も可能性が感じられます。