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2014年09月18日

クラウドファンディング開発のイヤフォン、AurisonicsのRocketsレビュー

話題となったPONOをはじめ、PS AudioとかLight Harmonicsなどクラウドファンディングによるオーディオ製品開発も増えてきましたが、本記事で紹介するRocketsはAurisonicsがKickstarterで募集したイヤフォンのクラウドファンディング開発による製品です。
Kickstarterでは私は$129で投資したのですが、最安は$99でした。そのうち$250くらいで市販されると思います。Kickstarterのページはこちらです。(すでに終了しています)
https://www.kickstarter.com/projects/1285259404/aurisonics-rockets-next-gen-iems-made-in-usa

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Rocketsの特徴はまずその名のようにロケットの形をした独特の3枚のタブです。また筐体はチタン製で、ケーブルはケプラーの特注品です。開発中はクラウドファンディングなので開発経過が出資者に報告されていましたが、このケーブルの遅れが出荷の遅れにかなり影響していたようです。

Aurisonicsはイヤモニの会社で、ダイナミックドライバへのこだわりで知られています。ふつうイヤモニはBAを使うことが多いわけですが、この会社はASG-1という大口径ダイナミック15mm一発のイヤモニで知られています。ちなみに他のモデルでは中高域にBAを採用したハイブリッドモデルもありますが、よく知られているのはこの大口径ダイナミック使いのメーカーということです(現行は14.2mmドライバーに変更されています)。
RocketsはShureやゼンハイザーのように最近流行りの小口径ダイナミックドライバーを採用しています。やはりダイナミックにこだわったわけですが、大口径ダイナミックドライバーでならしたメーカーが今度は小口径のダイナミックを採用したわけです。

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コンパクトな金属カンに入ってきます。私の場合はスペアのイヤチップが入っていました。
ケプラーのケーブルは赤と青のユニークなデザインがなされています。ケーブルの表面のビニールはやや摩擦があるタイプです。ここは意図的な設計だと思いますが好き嫌いがあるとは思います。またマニアック系ケーブルほどではないけれどもやや硬めです。残念ながらケーブルの交換はできません。ミニプラグがかなりがっちりしていて、はまりも上々です。ケーブルの質はこだわっただけあって価格的に考えてもかなり高いと思います。
装着についてはストレートも耳巻きも両方できると言うのがうたい文句だけどここが曲者ではあります。また特徴のタブは効果があいまいで、HeadFiなんかではよくはずされてます。

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音を聞いてまず感じるのは能率低いってことです。ボリュームは高めが必要ですがiPhoneでも音量は取れます。
音はわりと硬質でシャープ、柔らかいとか甘い音ではありません。全体にアタックやパンチはかなり鮮明で歯切れがよく、明瞭感があり、引き締まった感じです。音色はニュートラルで着色感はあまりないけれども、無機質にはそれほどなっていないのは良いところです。
低域は出すぎずに意外とあります。高音域も明瞭なので、ワイドレンジ感があります。標準の三角チップだとやや刺さる機種もあると思います。AK120IIはそれほどでもありません。
イメージングが良くてDAPによっては楽器の三次元感覚が楽しめると思います。深み、奥行き感があって、この点でAK120IIによく合うと感じます。音場の二次元的な広さ自体はそこそこですね。
ダイナミックにしては解像度高い方で、iPhoneでもオッと思うくらいですね。
解像力・情報量たっぷりのWestone W60なんかで日ごろ慣れてると、それほどでもないように思えてしまうけれども、やはりダイナミックのシングルドライバー機としてはかなり高いと思います。

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端的に言うと、硬質な明瞭系、シャープ系、スピードある系、イメージングやピントが決まる系でしょうか。音的にはチタンの筐体が利いていると思います。
相性が良く、Rocketsの魅力を引き出すと思ったDAPはAK120II、ARM1、Calyx M(FW0.97以降)でしょうか。Calyx Mは以前のファームだとややハイがきつめだと思います。iPhone5sの直も悪くないです。
HeadFiでははじめはER4Sとよく比べられていたんですが、ちょっと違うようには思います。

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イヤチップは標準のやや尖ったタイプがひとつ(M)と先端がやや丸いタイプが3つ(S/M/L)付属してきます。(わたしのには丸いタイプが一袋予備についてきました)。やや音が違っています。私の耳での変化ですけど、尖った方がやや高域が出てシャープ、丸い方はやや全体が穏やかになって低域が少し出る感じですね。アンプと合わせてきつすぎるときは丸いタイプが良いけど、どちらかというと尖ったタイプがこのイヤフォンらしい音のような気はします。ケーブルで調整できないのでチップで音を調整するとよいでしょう。

全体にかなりコストパフォーマンスが高いと思います。この価格帯にはないような高級な音が楽しめます。Kickstarterの$129だと格安ですね。$250でもかなりよいと思います。
クラウドファンディングなので開発経緯が分かるのも面白いところです。ただクラウドファンディングはプリオーダーではありませんので、あくまでリスクもあるし、納期の遅延やデザイン変更なんかは茶飯事ですから、くれぐれも注意してください。Rocketsは多少遅れはしましたが、クラウドファンディングではよいほうだと思います。
RocketsはKickstarterのみではなく、そのうち市販(予価$250)がなされると思いますのでこの記事で興味を持った人は情報に注意していてください。

いずれにせよ、クラウドファンディングによるオーディオ機器の開発も2014年のトレンドと言えるでしょう。
posted by ささき at 23:30 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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