
下記のレポートはいつものようにiMod->RnB->C&C XO->Silver Dragon->HD25-13という組み合わせをメインにしています。
またあとで書きますが、XOについてはRockboxも使って多角的に評価してみたくなったので今回からiPodオリジナルファームとRockboxを併用しています。
1. 使用感
まず大きさが程よいという感じで、サイズ的にiPod(iMod)とバランスが良くマッチします。重さは170gということでかなり軽いほうですね。毎日の携帯にも苦になるというわけではありません。
またデザイン的にシャーシがカープしているのですが、これは手に持ちやすくも感じます。ただしウイスキーのように尻ポケットには入れられないでしょう。
下記の写真は付属の保護スリーブを装着したものです。

それと意外といままでになかったのですが、2分間信号がないとスタンバイモードに入るというのはなかなかいい機能です。アンプはポータブルとはいえ暖めておきたいので、スタンバイモードがあるというのはいいですね。
電池は完全に切れる前にチャージしているので、どのくらい持つかは計ってませんが、かなり持つほうだと思います。
2. 音
XOで驚かされるのは基本的な性能がかなり高いということです。
そこで特徴的なところをいくつかのカテゴリーに分けて書いてみます。
2.1 繊細で高い解像力を持っているということ
部屋の中でいろいろ聴いていると古楽の演奏において、いままでに聴こえなかった妙な音がするので「う、ハムかノイズか」とよく耳を傾けてみたら、演奏自体の音みたいなものとは別にプレーヤーの何か(手か衣服?)が楽器のどこかを擦っている音がします。
音の全体的な印象も線が細く細かな印象がします。この印象は次に書きますが、このアンプのDCアンプ的な性格と関係があるかもしれません。
2.2 色付けが少なく強調感がないということ
全体的な音はフラットでストレート、かつ色付けがかなり少なく感じます。サミュエルズさんのアンプになれているとXOはドライに感じるかもしれません。Xinのように前に出てくるわけでもないのでかなり脚色は少ないという感じです。
前項で書いた繊細な感じの解像力の高さとこの色付けのなさをあわせて、なにかに似ていると考えていたのですが、私が思い出したのはSTAXのドライバーです。
おそらくはこれらの印象はこのアンプがDCアンプであるということからきていると思います。わたしは回路を見ても分かりませんが、XOはSTAXのドライバーと同じく周波数特性がゼロ(DC)から始まっていますので一般的な推測としてはコンデンサーがシグナルパスにないということが考えられます。
アンプに固有の色がつくというのはシグナルパスにあるものすべてが影響しますが、特に大きな影響力があるのはコンデンサーであるといわれています。たとえばポータブルアンプではHornetが初期型と現行でコンデンサーのメーカーが違うことで音傾向も違うということが知られています。逆に言うとコンデンサーがなければこうした色付けも最小になるというわけです。
ただ後で書きますが、このことはプラスにもマイナスにもなりえると思います。
2.3 駆動力の高さ
XOの能力の高さはヘッドホンを暴れさせずにコントロールする力の高さにも表れています。特に高インピーダンスのヘッドホンに対して駆動力が高いということが特筆すべき点だと思います。
XOは専用の高インピーダンスのモード(IM)があって、600オームのHD25-13をつないだときなどはIMをオンに入れた瞬間に音のたるみが消えてぴしっと音が締まるのが分かります。HD25というよりもハイエンド機のように上品に鳴らしこみます。

Lowインピーダンス(HD25-1)のときは細かい仔細な鳴りに加えて厚みのある音を両立しているように思えます。
ただし同じ高インピーダンスに強いといってもXenos X1HAとは違います。
IMモードではX1HAのくせになるようなパワフルさ・力強さは感じられなくて、あっさりとしたものです。それは熟練した武道家が指一本で相手を倒すように、力でねじ伏せるというより技でコントロールする、柔よく剛を制す、という感じです。
通常のアンプではゲインを変更して高インピーダンスのときに対応しますが、XOではIMという専用モードをオンにするわけです。その分でゲインはヘッドホンの能率の方で使い分けることができます。そうした意味でより柔軟にいろいろなヘッドホンに対応できるといえるでしょう。
また高域のコントロールも優秀で、アンプ由来と思われるきつさは感じられません。
2.4 カスタムモード
XOは多機能なアンプですが、その特徴のひとつはさまざまなカスタムモードです。
先に書いたIMとゲインのほかに音場が広がるSFと低域を強調するLFがあります。XOは音の広がりについては標準状態でそこそこといった感じですが、SFをオンにするとより広がって感じられます。クロスフィードとは意味が違いますが、一般的なクロスフィードに比べても違和感は少ない感じがします。これはHD25などの場合は常時オンにしてもいいと思います。
ただしLFは少し強すぎるといった感じであまりお勧めできません。XOは全体に強調感は少ないのですが、低域性能はきちんとしているので出るところはきっちり出ます。そのため普通はあまり必要性は感じませんが、音楽によっては物足りないと思うかもしれません。
HD25-13を使うときには私は(IM=HI, gain=lo, LF=OFF, SF=ON)で使用しています。
3. ヘッドホンとの組み合わせ
このアンプのハイライトはやはり高インピーダンスモードで、いろいろテストしていたときはしばらくHD650で聴いていたくらいです。低域のコントロールもきっちりしています。
いまのお気に入りの組み合わせはその強みを生かせるHD25-13ですが、HD25よりももっとモニターライクなものが合うかもしれません。

また意外とノイズフロアも低いのでIEMでも使えます(ただしTomahawkなみではありません)。
ER-4P+24PでER-4S相当にすると高インピーダンスモードも生かせてかなり良いと思います。またtriple.fiとの組み合わせではtriple.fiの長所である高いほうの再現性・解像力をTomahawkが逃していたところまで引き出す感じはします。
高いほうの再現性に関してはHD25-13よりもさらに高いとさえ思います。
ただちょっとドライな傾向があってtriple.fiとあわせるとちょっと敬遠したくはなります。全般的にはやはりtriple.fiはTomahawkのほうが良いですね。ちなみにtriple.fiと組み合わせるときはSFはオフにしたほうがよいでしょう。
4. 客観的総括と主観的メモ
ここまで書いてきたようにXOはかなりハイパフォーマンスで低コスト、そして携帯性が高いとわりと隙がありません。
ピアノの良録音などは驚くほどクリアで音がはっきり鮮明、かつ明瞭に聞こえます。音の形もよくて歪みが少なくクリーンです。
アンプ自体は音楽的でもアグレッシブでもありませんが、解像力とかトランジェントなどの基本性能が高いので曲によってアクティブにもしっとりとも聴かせます。ある意味では良いアンプといえます。
しかし最後にちょっと余計なメモをひとことはさむと、好きか嫌いかという個人的な好みから言うとわたしはいまひとつと感じます。音に対して個性がないという点ですね。
アンプの場合は個性がないということは付帯音がないということですから、原音忠実という側面からはいいことかもしれません。たとえばアキュフェーズなんかを求める人はそうした評価点に重きを置くでしょう。しかし私の場合は持っているアンプはLINNとユニゾンリサーチといういわゆる「音楽性」アンプの代表格的なものですので、推して知るべしというわけです。
海外のレビューでよくデジタルアンプなんかの評に出てくる言葉にsterilityというのがあります。直訳すると「無菌」ですが意訳すると「味気ない」という言い方も出来ます。つまりこれは良くも悪くも使われます。これらはもちろん一般のオーディオでも答えの出ない問題ですので、論理をもてあそぶのはこの辺でやめておきます。
いずれにせよ、こうした余計なことを考えることができるほどにはポータブルアンプというものも選択肢が増えてきた、成熟してきたとは言えそうです。
しかも駆動力も十分のようですし。。。(^^