Astell&Kernの第二世代機リリースの最後を飾るのは名器の名を冠する第二世代機、AK100IIです。
名称はいままであったAK100MK2は第一世代で改良型という意味、AK100IIは第二世代のAK100シリーズという意味です。
7月11日に発売され、価格は直販で109800円、フジヤさんなど店舗では10万をちょっと切るでしょう。
*発売日は7月下旬に延期されました。
本稿では主にAK120IIとの違いについて述べていきます。
AK100IIはAK120IIと比べるとやや小さく、少し軽くなっています。また内蔵メモリが64GBと第二世代機ではもっとも容量が小さくなっています。しかし64GBで最低とは最近の高密度化・大容量化には驚きます。たしかにハイレゾとかDSDを入れると容量はほしくなりますけれども。
5.6MHzのDSD音源もPCM変換で再生が可能です。
大きさのほかには本体カラーも異なります。AK120IIはシルバーですが、AK100IIのカラーは薄いブルーです。これは肉眼で見るとなかなか良いんですが、写真泣かせで、この青色を画像で再現するのは少し苦労しました。
またDACチップがAK240/AK120IIのCS4398デュアル搭載とは異なり、AK100IIではCS4398一基だけとなっています。そのほかの回路もスペック的にみてAK120IIはAK240と同等だったのに対して、AK100IIではSNや歪み率、などいくつかスペックが低くなっています。
たとえばAK120IIはAK240と同じでアンバランス2.1vmsでバランスは2.3vmsでバランスが上ですが、AK100IIはアンバランスで2.0vms、バランスで1.7vmsとアンバランスの方が高い仕様となっています。AK100IIはアンバランスメインでバランスはとりあえずお試し的と考えてもよいかもしれません。ただぱっと聴きではそこまで大きさでもないとは思います。ちなみにAK100MK2では出力は1.5vmsです。
出力インピーダンスはAK120IIと同じです。
パッケージは従来のAstell&Kernシリーズに準じたもので、専用ケースも付属しています。
AK100IIの付属のケースはイタリアンポリウレタン(PU)レザーという人造皮革に代わっています。スマートフォンケースなどによく使われる素材です。
リアルレザーに比較すると高級感は及ばないかもしれませんが、質感はなかなか悪くありません。普段使いにちょうどよい感じですね。
本体の質感はAK120II譲りでなかなか高級感があります。特にボリューム周りがメカ要素を感じます。
100IIも120IIも操作性・機能は同じです。操作感ではAK120IIに比べて遅くなったということはないと思います。AK240とも遜色ありません。のちに書くように素のAndroidのZX1などと比べると操作感はかなりスムースです。また液晶の表示品質もきれいだと思います。
* 音の印象
まずAK100IIの音を聴いて感じるのはAstell&Kern第二世代機としてのAK120IIとの音の統一感です。なかでもAK100IIの音の個性はAK240よりもAK120IIに近いと思います。
透明感が高く、良く洗練されて整った音はAK100MK2からのレベル差を感じさせます。
前に書いたようにAK240とAK120IIは音の個性の違いがあるけれども音質のレベルとしては同じくらいにあると思います。ただAK100IIは音の個性ではAK120IIに近いけれども、音質のレベルではやはりAK120IIとは差があるという感じです。
AK120IIと比べると透明感やシャープさはやはり一歩譲ります。ただDAP全体での絶対的な位置ではかなり良いレベルにあります。
この辺をもう少し詳細に他の機種と比較しながら書いていきます。
イヤフォンはW60を主に使いました。最近W60の試聴も同時にやってたので耳が慣れて機種比較しやすいこともありますが、このW60とAK100IIの組み合わせは良いと思いますね。W60は音の個性ではAK120IIよりはAK100IIに向いているでしょう。これはAK100IIがAK120IIほどは透明感やシャープさを追求しているわけではなく、聴きやすい柔らかさをほどよく持っているからだと思います。
他にも画像にあるように様々なヘッドフォン・イヤフォンも使ってみました。ロクサーヌなんかもAK100IIの整った音をよく引き出すと思います。
- AK100MK2 vs AK100II
AK100MK2と比べるとAK100IIはより引き締まって透明感が高く、より細かな音が再現できます。AK100IIに比較するとAK100MK2はやや甘く音も太って曇りがある印象があります。録音のよいジャズなんかを聴くとよくわかりますが、楽器の音がAK100IIではよりピュアに濁りなく聞こえます。全体にAK100IIではより洗練されて整っているという感じです。帯域バランスもよりよくなっています。
ただAK100MK2とAK100IIでは音調はやや異なり、別のDAPを比べているという感じが高いというのもまた事実です。
- AK120II vs AK100II
AK100IIとAK120IIを比べるとAK120IIではAK100IIよりもさらに透明感が高くなりクリアで見通しもさらによくなります。SN比も向上して楽器の音の鮮明さ・明瞭感はより高くなります。またAK120IIでは楽器音の芯がより強くなって、より引き締まってリアルな音再現です。
AK120IIとAK240では音質レベル的には同じくらいで個性が違うと書きましたが、AK100IIとAK120IIではやはりAK120IIの音質レベルが一枚上手で音の個性は似ています。ただAK100IIもAK100MK2よりは音質レベルはかなり高く、AK120IIに近いくらいではあると思います。
iriverに聞いて見ると、AK240はクラシックにチューンして、AK100II/120IIはジャズポップにチューンしたということです。
ただしさきにW60のところで書いたようにAK100IIとAK120IIでもやはり音の個性差はあると思います。
AK100IIは誇張感が少なく、ニュートラルで素直な音だけれども、AK120IIよりは音楽リスニング向けだと思います。AK120IIはやはりもっと色つけ少なくいわゆるモニタライクな感じですね。AK100IIは音楽的な聞きやすさと良い意味での甘さを感じます。そのためもあってかWestone W60はAK100IIにより向いているように思えます。
- Sony ZX1 vs AK100II
SONY ZX1とAK100IIでHELGE LIEN TRIOの192kHzハイレゾなど音質の良い曲で聴き比べると、ZX1はそれだけ聞いていると悪くないように思えるんですが、やはりAK100IIと比べると格下という感じはしてしまいます。
ZX1では音の先鋭さが低く切れが鈍って聴こえますね。全体的な音の洗練さでもAK100IIの方が高いレベルにあります。AK100IIの音はAK120IIに比べれば劣るとはいってもかなり整っています。(AK100IIはまだ完全にエージングしていないのに、です)
またAK100IIあたりと比べるとZX1ではデジタルアンプ臭さがやはり耳についてしまう難点はあります。それが硬さとか軽さにつながってしまいます。
ただZX1はCDリッピングの曲でDSEEを利かせると差を詰めることはできます。この辺は良いポイントとは言えるでしょう。
それといろいろと曲を変えて比べて操作していくとAK100IIと比べたZX1は操作性がやはりよくないですね。AK100IIはわりとなめらかに画面遷移しますが、ZX1はいかにもAndroidっぽいリミテッドアニメ的なカクカクした動きです。
AK100IIのようなよく練られたハイレゾDAPと比べるとやはりZX1はWalkmanの改良機というレベルであると思うところではあります。前にも書いたように私はSONYではRX1もZX1も持っておりますが、RX1はいまでもどんなカメラに比べても最高だと思うけれども、ZX1は最高のDAPではありません。Astell&Kernの第二世代機が出たことでよけいにそう思います。それはサイバーショットとはいっても完全新規のRX1と違って、ZX1は所詮はウォークマンの改良機ということだからだと思います。SONY ZX1は国産唯一のハイレゾDAPなんですから後継機がもしあるならば奮起してほしいと思います。
* まとめ
AK120IIについての音質レベルの高さは予想通りだったけれども、予想と異なっていたのはAK100IIの音質レベルの高さだと思います。従来のAK100/AK100MK2よりも大幅な音質の向上で上位モデルにより近いと思います。
実のところこれもAK200として聞いていたモデルであり、れっきとした第二世代の性能を備えています。
AK120IIと比べるとたしかに少し音質レベルは劣りますが、全体的なDAPの中ではかなり高いところにいると思います。やはり設計自体がかなり洗練されているからという気がしますね。
また、AK120IIと音の個性は似ていますが、やや異なってもいて、音楽リスニング用途により適している気がします。イヤフォンの組み合わせによってはAK100IIのほうが好ましい場合もあるでしょう。
オーディオ機器としての性能はやはりAK120IIのほうが上ですが、AK120IIは音楽リスニングでもよいけれども、やはりスタジオモニタ的なところはあるかなとは思います。
AK100IIは実売で10万を切るDAPとしてはかなり良い出来と言えるでしょう。
ぜひ店頭でいつも使いのイヤフォンを持って試してみてください。
Music TO GO!
2014年06月27日
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