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2014年04月02日

ハイエンドイヤフォン用のほそーい高性能交換ケーブル、Estron Linum

Estron Linumは見た目でとても細くてインパクトのあるイヤフォン用の交換ケーブルです。

linum_cables2.jpg

* Estron Linumケーブルの特徴

Linumケーブルは補聴器業界のケーブル提供で知られるEstron社によるイヤフォン用の交換ケーブルです。Estronは25年以上の医療技術の経験にも裏付けされた技術背景を持っています。

Linumケーブルの特徴としては高い張力耐性と強固なデザイン、それでいて軽量であるということです。ケーブルとしてはes-Linum 6+という線材をベースにしていて、7本の銀コートされた銅線で構成されます。それぞれはなにか塗布されているようで、かなり腐食や変色に強いということです。またアラミドファイバーにより、強固なケーブルが設計されています。ケーブルはTPAでカバーされていて肌との相性がよく、紫外線にも強いということです。TPAはぺバックス(ポリエーテル・ブロック・アミド)という素材をベースにしたもので曲げに強いということです。またマイクロフォニックスも最小に抑えられています。

設計コンセプトとしてはケーブルを変えることでイヤフォンの音を変えられるという点を明確にすることです。そのため3つのタイプが用意され、別々の用途に使えるように設計されています。それらはMusical, Vocal, BaXの3つです。

2pin1.png
MusicとVocalケーブル (2pin)

2pin2.png
BaX(Bass)ケーブル(2pin)

設計上の仕様は下記の通りです。
Musicは一番フラットでキーボードプレーヤー向きということ。またフラットなため聴き疲れしにくいという点も考えられているということです。
VocalはMusicモデルより高いインピーダンスを持つようでヴォーカルをより明瞭に再現します。つまりはヴォーカル向けです。
BaX(Bass)モデルはラウドネス効果があり高域と低域が強調されてダイナミックレンジが広がったように感じられるということこのためダイナミクスと広帯域感があります。これはドラムスやパーカッションに向いているということで、特にベースが強調されていますがやや聴き疲れしやすくなってしまったということ。またツイストケーブルによってクロストークが減っているということです。

test.jpg
緑=Vocal 青=Music 赤=BaX

こちらに面白いテストが掲載されているのですが、MusicとBaXバージョンの特性比較をイヤー・シミュレーターを使用して行ったものです。イヤー・シミュレーター(人工耳)というのはIEC711カプラーにIEMを接続したもので、ここではケーブルの特性変化を測定します。

Cosmic Ears estron linum cable test from Cosmic Ears on Vimeo.



カプラーにはMusicとBaXバージョンのEstron Linumケーブルが接続されています。スイッチによってそれぞれ比較するA/Bテストができます。赤いカーブはMusicモデルの周波数特性です。スイッチをオンにすると緑色のBaXケーブルが現れます。この周波数特性の差はインピーダンスの差によるものです。(正確に言うとインダクタンスやらキャパシタンスやら言わねばならないかもしれませんが、まあそういうことで)。ちなみにBaXの方が低いインピーダンスです。
差は高い周波数と低い周波数に顕著に表れ、1-5kHzあたりにはさほど変化はありません。この辺でケーブルがイコライザ的な働きをするのがわかると思います。

コネクタはカスタムイヤフォンでよく使用される2pinタイプとMMCXがあります。このほかにT2というタイプがありますが日本では販売していません。またMMCXではVocalバージョンは用意されていないようです(少なくとも日本市場では)。

header_2pin.jpg
2pinバージョン

header_mmcx.jpg
MMCXバージョン

* ケーブルの取り回しと音質

実際にJH13(2pin)につけて音を確認してみました。DAPはAK100MK2を主に使用しています。

やはり特徴はケーブル線がとても細いことです。またとても軽いので、海外の重量のある交換ケーブルに比べるとかなり装着したひっぱり感が少なく快適です。まるでワイヤレスイヤフォンみたいというと言い過ぎかもしれませんが、そうした感覚があります。
また柔らかいのでメモリワイヤーなしで耳に巻くことができます。
反面で難点はしまう時にちょっと絡みやすい点です。ぐちゃっとポケットに入れないでなるべくきれいにケースか袋に入れるとよいですね。

3つタイプがありますが外観的にはMusicとVocalはまったく同じでいったん袋から出すとどっちがなにかわからなくなりますので注意。BaX(Bass)はケーブルがツイストペアになってるので区別がつきます。3タイプで共通的な音の特徴は、空間の広がりの表現が素晴らしいということ、マルチBAイヤフォンで堪能できる十分な解像力の高さがあるということ、またここが一番かと個人的には思いますが音色がよく音楽を聴いていてきれいに感じられるという点です。ただこれはタイプによっても異なります。

次に各タイプ別の特徴をあげていきます。

Music - 音楽を聴く上では一番バランスは良く、低域がやや強調され十分量感もあります。
全体の印象はVocalと似ているところもありますが、こちらは温かみがあり、美音的という意味で一番着色感が感じられます。特にVocalに比べるとメリハリがあるように思えます。

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UE18 + 2pin Music , IQ + MMCX Music

BaX - ベースが強調されて量感もかなりあります。またベースだけではなく高音域も鮮明であり、3つの中では一番ワイドレンジに感じられます。中音域も少し引きずられて強調気味でヴォーカルが近く迫力があります。着色感は3つの中間くらいでしょうか。
なおBaXモデルだけにツイストペアのケーブルが用意されていて、左右チャンネルが別になっていますので、音場に関するチャンネルセパレーションも向上しています。これはVocalとMusicでは構造的に採用ができないようです。

DPP_0001_filtered.jpg   DPP_0002_filtered.jpg
UE900+MMCX BaX , JH13+ 2pin BaX

Vocal - 全体的にフラット系です。ヴォーカル(中音域)が強調されているというよりヴォーカル(声)の明瞭感が高いという感じで歌詞が聞き取りやすいですね。着色感がMusicより少なくてすっきりとした印象です。一番ニュートラルなケーブルと言えると思います。モニタ的に使うのには良いでしょうね。

DPP_0003_filtered.jpg
V6 Stage + 2pin Vocal

音質レベルの高さのわりには価格が安く、なにも知識なくデモ品が送られてきたときにはもっと高いケーブルかと思っていました。設計者も書いていますが、Linumは安いし、3タイプそれぞれ音質が異なりイコライザー的に使えること、それでいながら共通の音調があるということで、3タイプを全部買ってDAPやイヤフォンの個性で切り分けらるようにすると良いと思います。私もそうして使い分けています。

太い線の方が良いと信じている人も一度聞いてみてください。プラグも小さいのでHugoとかスマートフォンケースなど彫りこみ穴があってケーブル太さに制限を受けてしまう場合にも役に立ちます。
ぜひ試してみてください。

Jaben Japanの販売リンクは下記です。

http://jaben.net/jp/shopping/Estron-Cabels.html

またフジヤエービックさんでも販売をしています。

http://www.fujiya-avic.jp/products/detail60082.html
http://www.fujiya-avic.jp/products/detail57365.html
http://www.fujiya-avic.jp/products/detail57364.html
http://www.fujiya-avic.jp/products/detail57363.html
http://www.fujiya-avic.jp/products/detail57362.html


posted by ささき at 00:24 | TrackBack(0) | __→ ケーブル関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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