Music TO GO!

2014年03月13日

はじめてのKickstarter

Ponoはわずか9時間で目標額達成し、一日ちょっとで5000個もオーダーが入りました。
おもしろいことにコメント欄などをみると、これがはじめてのKickstarterと書いている人も多く、ハイレゾDAPだけではなく、クラウドファンディングもすそ野を広げてくれたと思います。
PonoでKickstarterに興味を持った人もいると思いますので、基本的なことを書いていきます。

Kickstarterはみんなの投資で製品を開発するクラウドファンディングを運営するサイトです。別な言い方をすると、Start-Up(ベンチャー企業)を支援するサイトです。ちなみにクラウドは雲の意味のクラウド(cloud)ではなく、民衆の意味のクラウド(crowd)です。
各自の出資はPledgeと呼ばれプリオーダーみたいなものですが、期間内に目標額に満たない場合は製作されません。また開発期間の前に出資するのでたいていリードタイムが長い点が製品のプリオーダーとは異なりますので注意が必要です。あくまで購入ではなく出資です。
Kickstarterは名の通りにStart-Upを支援するものですから、ベンチャーゆえに量産に対しては見込みが甘く遅延することも多いのでそこも考慮しておかねばなりません。たとえばPonoにしてもAyreやAQが開発に参画しているといっても、製品を作るのはあくまでPono Teamですからそこは未知数です。念のため。

Kickstarterのサイトはこちらです。
https://www.kickstarter.com/

Kickstarterの場合はウエブとiPhoneアプリで参加ができます(iPadネイティブアプリはいま現在ありません)。
Kickstarterに参加するためにはまずアカウントが必要です。Pledgeは米国Amazonのアカウントが必要でクレジット払いです。目標額に届かなかった場合は、KickstarterではPledgeはキャンセルされて支払いは発生しません。予定額に届いてプロジェクト期間が終了した時点でクレジット支払いが発生します。

Kickstarterのキャンペーンが開始されたら、プロジェクトの内容を見ていくら投資するか決定します。たいていはリストを見て、製品が対価としてもらえるところに出資します。賛同表明で$1だけ、なんていうのもかまいません。日本の場合は送料が別になっていることが多いので注意が必要です。
たとえばPonoの場合には$300 or moreという欄にBlack Pono Playerまたはもう一行あってYellow Pono Playerとありますので、そこが製品が対価として手に入るところです。moreとあるのは賛同する気持ちですのでそれ以上出してもかまわないということです。(またあとで書くようにオプションのための追加支払いもある場合があります)
その欄を見ると海外へは+$15とあります。ここでクリックすると次では+$15の送料も含めてトータルでの支払額があります。おそらくは自動で計算されていると思います。ここを次に進めるとAmazon USでのクレジット支払の画面となります。支払を終了させるとPledge手続きは終わりです。Pledgeをした人はbackerとよばれます。私のtweetを見ている方は私がI just backedというtweetをたまにしていますが、それはこのタイミングです。

プロジェクトの期間中は出資金額を増減したいときはPledge Managerを使用します。これは後で書くようにオプションが途中で追加されてオプション分の金額を増やしたいときに活用できます。また期間中であればキャンセルもできますが、それもPledge Managerから行います。

Kickstarterの各プロジェクトはUpdateとして途中経過が報告されますので、ここは目を通す必要があります。またメールでも知らせが来ます。開発状況、出荷遅れなどが書かれたりします。
プロジェクトが成功して目標額に達成すると、期間が終わったあとにサーベイという調査のメールが来ます。サーベイはbacker kitとも呼ばれることがあります。サーベイでは発送住所とオプションの確認が主な目的です。例えばRingでは海外送料はPledgeの際に加えますが、指輪のサイズはPledgeでは指定しないのでサーベイで聞かれるはずです。

オプションはPledgeで固定される場合とサーベイで後で決める場合があります。オプションが一個だけの場合は前者、複数オプションの場合は後者が多いようです。例えば、
ベース製品: $100
オプションA: $10
オプションB: $20
オプションC: $30

という組み合わせがあり、AとBが欲しい場合はPledgeではとりあえず$130払っておいて、サーベイでAとBを指定するというやり方です。このときCに変更しても良いと思いますが、出資金総額はこの時点では変更できないのが普通です。このサーベイはいくつかシステムがあるらしく、サーベイの方法はプロジェクトによってまちまちなのでメールをよく見て注意が必要です。

私が思うに、Kickstarterの一番のだいご味は開発中にコメント入れられるという点です。出資して作らせるのでフォーラムに好き勝手書けるのがクラウドファンディングの良い点です。もちろん聞いてくれるかどうかはわかりませんが、言うだけは言っておくというのが海外的なやり方でもあります。(日本的だとはじめから言わないでおく、という感じですが)
また実際に開発に取り入れてくれたりもします。Geekでは高出力を主張してたら高出力バージョンも追加してくれました。Kickstarterではありませんが似たようなクラウドファンディングのIndiegogoの方のGeek Pulseではキャンペーン開始時と終了時ではまるでちがったUSB DACになっています。外形デザインもユーザーコメントを取り入れ、オプションもどんどん追加され、ミニモンスター的になりました。
あとはiPhoneのポータブルフラッシュNovaではアプリへのSONYのレンズカメラのライブラリ対応を依頼しましたが、検討するとはありましたが対応不明。Ponoでは出力インピーダンスは低くしてね、DSD対応してねってコメントしときました。
いずれもこれらは単なるプリオーダーでは不可能なことで、開発中にユーザーが参画しているからこそできることです。このユーザーと作り手の関係が新しい点です。

クラウドファンディングによる開発はいままでにないユーザー参加型の製品開発でもあります。また、従来のビジネスモデルに対する変革でもあります。あるいは変革というよりは時代の変化に対する順応といった方がよいかもしれません。ハイエンドオーディオメーカーのLight HarmonicがStart-Up版の分身としてLH Labsを作り、Geek outを開発したのもそうしたトライアルであると思います。LH Labsではユーザーの声を直接聞くサイトも立ち上げました。Ayreも自分で製品を作るわけではありませんが、こうした新しい仕組みに参画することで得ることは大きいと思います。
作り手が買い手の顔が見えない、という時代からいまはもっと作り手と買い手の距離が近くなっています。その変化の背景にはIT進化があります。こうした新しい時代の新しいビジネスモデルとしてクラウドファンディングは面白い展開を見せていくでしょう。
posted by ささき at 22:41 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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