今回のCESの目玉の一つにAURALiCが事前アナウンスしていた、WiFiによるDSDネイティブ再生の実現があります。今回のCESではプレビュー的なものだったようですが、あちこちのレポートを読んでみて分かったことをまとめてみます。
まずこの「WiFiによるDSDネイティブ再生の実現」はAURALiCが提唱するLightningという技術のことです。Lightningは技術と書きましたが、特定の製品のことではなく、DLNAのような技術総称とか製品体系のようなもののようです。このLightningに基づいた具体的な製品群の第一弾がAriesです。またワイヤレスと言うと領域が広くなりますが、ここではWiFi技術のことです。
Lightningはストリーミング技術を利用してDSD128ネイティブ再生やDXDのようなハイレゾのオーディオ再生を可能に可能にする技術で、WiFiの新しい802.11ac規格を前提としています。Lightningはかならずしも802.11acが必要ではありませんが、なければこのようなWiFiでのDXDやDSDのような"スーパー"ハイレゾデータのワイヤレスのストリーミングはむずかしいだろうということです。たとえば現在主流の802.11nでも96k/24までのハイレゾ・ワイヤレスは可能ですが、それを超えるようなDXD(352.8kHz/24bit)やDSD128などは802.11acが必要になると言うことです。
Lightningが志向しているのはホームネットワークで、簡単に言うとDLNA機器をLightning機器で置き換えて有線ネットワークを無線ネットワークに置き換えるようなイメージです。実際にLightningはDLNA(uPnP)と上位互換性があります。つまりLightningはDLNAと互換性があるとともに、DLNAでは実現できないギャップレス対応やSpotifyとの互換性、マルチコントロールポイントなどの追加機能が可能となっています。
ハードウエア側面で見たLightningの特徴はプラットフォームの進化があります。AURALiCはARMベースのプロセッサを核としたシステムがポイントですが、このプラットフォームがARMコアA5ベース(デュアルコア@500Mhz)のSanctuaryから、Teslaと呼ばれるA9ベース(クアッドコア@1GHz)の新プラットフォームに進化しています。
このTeslaベースのLightning製品の第一弾がAriesで、5月のドイツハイエンドショウで正式デビューを目指しているようです。CESでは旧VEGAシャーシにプロトタイプが入っていたとのこと。AriesはいわゆるStreamer(日本で言うネットワークプレーヤー)ですが、AURALiCではブリッジと称しています。つまりLightningによるWiFiストリーミングを受けて、DSD対応DACなどにデジタル出力(おそらくUSBとSPDIF)できるもののようです。Ariesの価格はUS$999からになりそうだということです。
システム構成としては、まず一方の部屋にNASとPCが設置されたネットワークがあり、このネットワークは802.11acをサポートする必要があります。もう一方の部屋にはAriesをDACにつなげたオーディオシステムがあります。LightningはDLNAに準拠しています。PC上にはJRMCまたはLINN Songcastなどがインストールされていて、そこでネットワークを開けると、離れたところのオーディオシステムに接続したAriesが見えます。そしてNASの音源をAriesにストリーミング指示するというものだと思います。
ただしさきに述べたようにこれだけだとDLNAベースの機能しか使えないので、Lightningのフル機能を使うためにはソフトウエアの機能強化が必要になるでしょう。ここはよくわかりませんが、おそらくSongcastを改良するかJRMCのプラグインを作るのではないかと考えています(Songcastはオープンソースだから)。ネットワークDSDネイティブ再生はDoPEかバッファロー方式かはわかりませんがDoPEになりそうな気はします。
なにしろ断片的なレポートを元にしているので推測も含んでいますが、こんな感じかと思います。
ここでAURALiCがいう「ブリッジ」というのは実はこのCESで他でも聞いた言葉です。たとえばMcintoshのMB100 Media Bridgeとかシャープのユニバーサルプレーヤーの受信機VR-WR1000などですね。ブリッジというのはハブに相当するネットワーク機器の名称でもありますが、ここではネットワーク・PC世界とDAC・オーディオ世界をつなぐ橋渡しと言うわけです。
Music TO GO!
2014年01月16日
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