Music TO GO!

2013年10月28日

ヘッドフォン祭、2013秋レポート

いまや世界的になったフジヤエービック主催のヘッドフォン祭の2013秋開催が行われました。
場所は前回と同じ青山スタジアムプレイスで2日開催となりました。今回台風の直撃が危惧されましたが、なんとかそれて1日目は雨でしたが、2日目は晴天に恵まれました。参加者は4800人と言うことです。

今回お仕事的には10/26のOppデジタルさんのPM-1とHA-1発表会でコメントを述べさせていただき、10/27にはiFiのトルステン博士とJHAの神様ジェリーのインタビューを行いました。
また直前にSONYのレンズカメラ、QX100を入手しましたのでそのテストランかたがたレポートに使いました。

* ヘッドフォン

今回はまずEdition 5の発表会に参加しました。
発表会は有名エンジニア(兼ミュージシャン)のオノセイゲン氏によって行われました。参加者に「良い音とはなにか」などQA形式で全員に聞くなど趣向を凝らしていました。参加者からは「わくわくする音」「艶めかしい音」など数秒で思いつく印象を語ってもらい、良い音との正確な音の違いなどコメントを述べました。
もちろん本国からマイケルCEOとマイケルCOOが参加しています。

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EDition5では今回はウッドを使いたいと言う目的から選択を行い、埋もれ木と言う珍しい沼とかに何千年も埋もれた化石のようなオーク材を使用したウッドのハウジングが特徴です。価格は世界中で555台限定で49万円ほどの高価なものですが、使用しているウッドがかなり高価だということです。いわばヘッドフォン版のフェラーリと言うことで見た目の美しさと性能の良さを兼ね備えているということです。またドライバーも新素材を使用した新設計で、S-Logicもより進化しているということです。
Edition8に似ていますが、ハウジングの形状もやや異なっています。音もEdition8の硬質でシャープと言う方向性とは異なって、柔らかで広がりも豊かという感じですね。木製らしい音色の良さもあります。
こちら面白いのはCOOがAK120のユーザーで、作ったEdition5バージョンのAK120です。なんかほんとに世界のあちこちでAK120が好まれていますね。

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直前のCanJamではあたかも平面型祭りのようでしたが、日本でも平面型(Planer:プラナーまたはプレイナー)が少しずつ浸透してきています。
まず高音質のBDプレーヤーで知られるOppoが平面型のヘッドフォン、PM-1を発表しました。ここで私もコメントを述べさせてもらいました。Oppoの開発者も来ていたので直接お話しを伺いました。

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一般に平面型と言うのは高性能の反面で能率が低いものですが、PM-1はまず能率が平面型にしてはかなり高いことがあげられます。Abyssなんかはそうですが、平面型の音がいまひとつという場合には十分な駆動力のアンプを使用していないということが多いのですが、PM-1はiPhoneでも十分に音が聴けるくらいに高能率です。開発では独特の二重のダイアフラム構造を持っていて、コイルのパターンはスパイラル(螺旋)です。コイルのパターンは平面型では重要なポイントで、フォステクスのRPではジグザグ形状ですね。音質は聴きやすさを重視したということですが、実際に聞いてみると平面型らしい細かさと共に豊かさや立体感など音楽的な聴きやすさが感じられます。いままで聴いてきた平面型に比べるとたしかに駆動力が少なくても不自然な音質低下はないように思えますね。
わたしのコメントでは日本ではまだ平面型は浸透していないので、平面型の歴史とメリット、従来のものとのPM-1の違いなどを簡単に述べました。
また同時にHA-1というDAC内蔵のヘッドフォンアンプが発表されています。これはOppらしいES9018を使用したもので、DSDにも対応しています。またBluetoothにもAPT-Xで対応しています。もちろんデジタルデータはBTチップではなくES9018でDA変換しますので高音質です。高音質BTはなにげに伸びてきていますね。
これらはまだ発表段階で、製品化に向けてさらに進化するようです。
こちらモデルはもちろん福島花乃さんです。

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下は平面型としては最高のものでしょう、JPSラボのAbyssがJabenブースでは試聴できました。アンプは高性能のCavalliで、合わせると120万円と言う豪華セットです。さすがに聞いた人は音質の高さに驚いていた様子でした。JabenブースではNADやPSBのヘッドフォンもなかなか好評だったようです。

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もちろん平面型と言えばAudezeです。こちらは話題作の新型LCD X(下左)とクローズタイプのLCD XCです。LCDは私は1から使っていますけど、外観も含めて音質もだいぶ進歩しましたね。Audezeでは開発者のAlexも来ておりました。

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またおもしろいのは平面型RP対決です。というのはFostexというと海外ではRPというくらいに有名で、いくつもRP(T50RP)の改造型が作られています。RPはRegular PhaseというFostexの平面型の呼び名です。(もちろん最近ではTHも人気ですが)
そこで出てきたのが、この純正RPの進化型、FostexのNew RPです(下写真)。RPドライバーの改良型を使用しているということですが、ハウジングなどは刷新されています。プロトタイプなのであら削りですが、かなりがっしりしたメタルハウジングです。価格もおそらく手頃なところにくると思います。

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もうひとつはこの下のMrSpeakerのAlpha Dogです。CanJamでもかなりの人気でした。これはFostexのRPドライバーを使用した改造品のMad Dogをベースとして、ハウジングのカップと一部部品をなんと3Dプリンタで製作したというヘッドフォンです。ハウジングは3DプリンタですからABS樹脂製になります。3Dプリンタは新進の技術トレンドの一つですが、ヘッドフォンにもとうとう3Dプリンタの波が来ました。普通のメーカーなら金型から作ると思いますが、こうした改造品などマニアックガレージ系の場合には3Dプリンタはなかなか使えそうです。
Mad DogよりはAlpha Dogの音は洗練されて改良されていると思います。ただやはり純正のNew RPの方が音質的には上かなあと思いました。

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また一般的な製品ではDENONからB&WのP5の新型でP7が出ています。P5から引き継いだデザインも良いですが、音を聞いてみるとやわらか系の代表だったようなP5からはだいぶ異なってくっきり系になった感じです。高性能ポータブルヘッドフォンと言う感じに進化しました。またこの赤いリケーブル用の高品質ケーブルもポイントで、P7の標準ケーブルと比べてみると効果は歴然としてあります。6000円プラスということですので一緒に求めることを勧めます。P7のケーブルコネクタはこんな感じです。

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* イヤフォン

イヤフォンではまずカスタムイヤフォンの神様、ジェリーハーベイのインタビューを行いました。内容は後日雑誌とうちのブログで書くと思いますが、ジェリーの過去からUEの設立、JHAの製品、そして最新のロクサーヌまでカバーしています。FitEarの須山さんも同席していましたが、ジェリーからは「Suyama FitEarがユニバーサルのすごいのを作って、一気にこの分野の水準を上げた」などのコメントもありました。もはや世界の須山FitEarですね。

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ロクサーヌは片側12ドライバーでケーブルも新規で、新しいSirenシリーズのトップモデルとなります。音導孔は3穴でもちろんFreqPhaseの考え方で作られています。Siren(サイレン)は神話にもありますが、魅力的な女声のことで、ロクサーヌはそうした女性の名前の一つです。ロクサーヌってスティングの曲から来たんですよね?って聞いたらそれはポリスだろって突っ込まれてしまいました。

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聴いてみるとロクサーヌは濃密なサウンドで素晴らしい音質、JH13を聴き返すと軽く感じられます。ケーブルが変えられないのでは、との危惧もありましたがケーブルもオープンにして、Whiplashのような他のケーブルメーカーからも出るようで、すでに動き始めているようです。

面白かったのはこの試聴用のロクサーヌ(下右と左)って試聴用の一時的なものかと思ってたらユニバーサル版のロクサーヌのプロトタイプだそうです。Sirenシリーズではユニバーサルもラインナップされるよう。この辺にも上のFItEarへのコメントも関わってきます。ユニバーサルの価格はカスタムより$200安くなるようです(日本では不明)。ただJH3Aのようなアンプラインはもう出なさそうではありますね。

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もうひとつのイヤフォンの注目ポイントはシンガポールの新進メーカーのDita Audioのその名もAnswerというイヤフォンです。形式はシングルのダイナミックですが、ピュアオーディオ畑の開発者がこだわって設計し、ハウジングのみならずプラグまで自製したという、ほぼ全てを音質向上のために自製した超こだわり品です。これは既製品を使うと自分では音を調整できないというポリシーのもとです。マルチBAもクロスオーバーにオーディオ用ではない部品を使うのは好ましくないという考えに基づいて採用しなかったそうです。またその思想に共鳴したというケーブルメーカーVDHの特性ケーブルモデルが用意されているのも特徴です(Truth Edition)。

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Answerはぱっと聴いて良さが分かります。音質のレベルもIE800なみに高いのですが、そうした音の細かさや帯域の広さに加えて、滑らかで上質な品格の高さが感じられるのが特徴です。イヤフォンもiPodのおまけみたいな存在からこうしたオーディオ機器レベルに進化してきました。実はシンガポールのショウにいったときにもDitaの人とは話をしてきたのですが、その辺もいろいろ含めてAnswerはそのうちもっと詳しく書きます。


音楽的なイヤフォンと言うと、好評の音茶楽の新しいドングリタイプの新イヤフォンもなかなか好印象でした(下)。とてもバランスの良い音で聞き疲れのなさも前作並みで、ポイントはケヤキのハウジングで音色がとてもきれいです。音茶楽も一本筋の通ったこだわりのあるブランドですね。

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* ハイエンドDAP、ポータブルアンプなど

DAP・アンプ系ではさきにレビューしたiPhone接続可能なAK10が注目ですが、さらに隠し玉がありました。
これはラトックとの共同開発で、AK100/120とデジタル接続できるDAC内蔵ポータブルアンプ、KEB02AKです。これはなんと最新のES9018 2Mを使ってます。音も極めて良いですね。またバランス駆動対応で、ラトックの二本ケーブルを使う方式です。ポータブルのバランス駆動は4ピンのTRRSとか、RSA方式のミニXLR、またこの二本方式などいろいろありますので注意が必要です。

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またAK100用のアクセサリーでバンパーも展示されていました。チタンのAk100はネタのようですが、バンパーは販売するということ。

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こちらはHiFimanの新作でHM700、単体で2万円台という低価格もさることながら音質もかなり良く、バランス駆動に対応しています。これは4ピン一本のTRRS方式です。
ただイヤフォンも合わせるのはけむずかしいので、RE400バランスモデルとのセット販売になると思います。それで低価格のポータブルバランスシステムが作れます。

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こちらも好評のiFIの新製品、iDSDとiCanです。これはコンパクトさもありますが、バッテリー駆動がポイントです。DSD対応のiDSDはセルフパワーとなるのでiPadなどでも使えそうです。
iFIはインタビューもしましたが、トルステン博士はメールのレスポンスも詳細ですが話もなかなか饒舌でした。下右はiFIの新境地であるレトロシリーズです。iFIはヘッドフォンオーディオ志向ですが、こちらはカジュアルユーザーの小型スピーカーシステムを試行しています。中は真空管アンプでレトロルックですが、BT(APTX)対応など新しいところもあります。

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これはおなじみALOの新作islandです。これはコンパクトなUSB DAC+アンプでポータブルバランス端子と大きいボリュームが特徴です。バランス端子はRSA方式のミニXLRです。
このタイプの小型のヘッドフォンアンプ付きのUSB DACはDragonfly以降けっこう流行ってきて、今回はResonessenceのHerusなどDSD対応機種も出てきています。ALOでは下右のContinentalが良かったですね。駆動力と暖かみを両立させています。

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またゼンハイザーのバランスアンプも発売開始ということで音出しの展示をしていました。
下右はAirplayから光とアナログとHDMIに出せるApcastです。こうした機器の高音質でポータブル版がほしいですね。

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なんと一世を風靡したDrDACがDSD対応でDrDAC3として戻って来ました。小型機器のDSD対応も進んでいます。

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こちらは角田さんのハイレゾVSアナログ試聴会です。このほかにもいろいろなテーマでやっていましたが、けっこう盛況のようでした。

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* SONY QX100

SONY QX100を会場のレポートに使いましたが、レポしたブースの人たちからも驚かれて逆にいろいろ聞かれました。これはスマートフォン用の通称レンズカメラと言うもので、レンズ部分とiPhoneをWiFiで結びつけています。レンズ部分はSONYの高級コンパクトRX100Mk2ベース(というか同等)でかなり高画質です。このほかに低価格版もあります。iPhoneはSONYの専用アプリでシャッターはiPhoneからもレンズ部分からも撮れます。画像はフル解像度(18MP)がレンズ内のmicroSDに格納され、同時に縮小画像(2MP)がWiFi経由でiPhoneに取り込まれます。

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今までブログ用にデジカメで撮り、twitter用にiPhoneって別に二回撮ったりしてたんですが、QX100になって高解像をMicroSDに格納、縮小画像をiPhoneに転送って同時に撮れるんでとても便利になりました。画質もさすがRX100mk2ベースで素晴らしいものです。ただしつけっぱなしにしてるとWiFiのせいか電池がすぐ切れ、無線環境が混んでるとつながりにくくなったりと欠点もあります。


* 海外とのつながり

今回はいつものHeadFiメンバーに加えて、アメリカからはHeadFiのリーダーであるJudeも来てくれました。HeadFiは単なる掲示板と思われがちですが、組織化されたコミュニティでCanJamをはじめさまざまな活動もしています。その中心となるのが設立者でもあるJudeですね。日本のHeadFierで言うとCurrowong(Amos)がリーダー格です。この辺はHeadFiを見てるだけではなく、その中に入ってみないとなかなかわからないかもしれません。
今回はJudeも精力的にカメラのみならずビデオまで使ってレポートしていました。そのうちHeadFiにいろいろとレポートが載ると思います。こうしてレポートしてくれるおかげでヘッドフォン祭も世界的なものとなってきました。

偶然あった海外の人の中で感慨深かったのはHeadroomのJameyが居たことです。Headroomはポータブル歴史の中でトップクラスの重要ブランドで私もいろいろ買って少しメールやりとりしましたが会ったのは初めてです。最近アンプ作らないのは寂しいね、って言ったら、そのうちまたやるかもって言ってました。アロハシャツで有名なTyll氏はInner Fidelityでレビュアーをやっています。

また、今回は海外のヘッドフォンレビューサイトでよく知られるHeadfoniaのマイクも来てくれました。さっそく下記にレポートを上げてくれています。
http://www.headfonia.com/tokyo-headphone-festival-2013-autumn/

ちなみに外国人と飲むときのヒントですが、海外の特に中国アジア系の人たちは日本みたいに冷たいものを飲む習慣がないところもあるので、日本酒が飲みたいって言われても冷酒は避けた方が懸命です。常温かぬる燗が良いと思います。一般に世界から見ると日本は生モノと言うよりもまず冷たい食事(冷えたおにぎりとか)や冷たい飲み物を好むのが変わっている方です。逆に刺身とか塩辛は日本食レストランで慣れていることも多いので意外と平気だったりします。また、食事では肉と言ってもアメリカでは赤身肉しか食べないので内蔵系(ホルモンなど)は避けてください。以上自分の失敗より、ご参考まで。
もちろん宗教食がある場合やベジタリアンであることも多いので、レストランを予約する前に聞いておくことも大事です。


ヘッドフォン祭がますます国際化するのは良いことです。
Dita Audioも望んで日本をデビューの場としたいって言ってましたし、インタビューしたiFiのトルステンもJHAのジェリーも日本のユーザーの質の高さとマニアックさを口にしていました。海外からは日本製品だけではなく日本のユーザーも注目されています。
シンガポールでも国際的なショウが開催されますし、このヘッドフォン・ポータブルの世界も国の垣根を越えて進化するでしょう。これは従来のオーディオ文化にはなかったことだと思います。一つにはこの世界がボトムアップで育ってきたからでしょう。これはネットワークというのがインフラになってることもあります。私も前はHeadFi世界も見るだけだったけど、今では実際に会って親交をより深めてます。
コンピュータやデジタル技術が冷たいなんてだれが言ったのでしょう。実際はこのようにネットワークがコンピュータだけではなく、いままで不可能だったような人と人のネットワークも繋いでいるのです。このヘッドフォン祭がそれを証明しています。

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posted by ささき at 23:22 | TrackBack(0) | ○ オーディオショウ・試聴会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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