コンピューター界隈のひとつの流れに超低価格コンピューターがあります。これはもともと教育目的で作られた英国のRaspberry PIが元ですが、他にも多く作られるようになってきました。Raspberry PIの価格はタイプによりますが30ポンド前後、日本円にして4000円くらいのARMベースの基盤でLinuxが走ります。
Raspberry PIについては日本語でもネットに情報がたくさんありますのでそれ自体の説明などは割愛します。本来的にはプログラム勉強用ですが、コミュニティもたくさんあって応用も活発です。
Raspberry PIとその構成図
そのRaspberry PIをオーディオに応用しようとする試みはいくつかありました。メジャーなものはRaspbmcです。これは昨年Raspberry PIが出てからわりとすぐに出たので私もその頃にインストールして試してみました。
http://www.raspbmc.com/
RaspbmcはXBMCをRaspberry PIに実装したものですが、どちらかというとピュアオーディオと言うよりはAV目的のいわゆるHTPCを安価に作るためのものです。オーディオはHDMIを使うためにピュアオーディオに使うようなUSB DACはサポートできません。このUSB DACの未サポートというのが当初のRaspberry PIで使用するOSディストリビューションの課題でもありました。デジタル出力がHDMIに限られてしまいます。
その点で画期的なのがこのRaspyFiです。RaspyFiは簡単に言うとLinuxではよく知られるミュージックサーバーソフトウエアのMPDをRaspyFiで使用できるようにしたものです。作者に言わせるとVoyage MPDのRaspberry PI版みたいなものということです。つまりLinuxのOSディストリビューションのひとつです。
RaspyFiではUSB DACの使用も可能です。また音楽再生向けのOSチューニングがなされています。以前はいろいろと問題があったようですが、ここに1.0としてめでたく公式リリースされました。
RaspyFiのホームページは下記です。RaspyFiは無料でダウンロードできます。
http://www.raspyfi.com/
まずSDカードを用意してRaspyFiのOSイメージをインストールします。無料ですが、twitterかfacebookでフォローすることでダウンロードできます。SDカードは2GBで十分です。
http://www.raspyfi.com/download/
電源を入れるとブートが始まり、あとはブート終了でロゴが出てくればリモートUIと接続できます。
画面をつないでおく必要はありませんが、ブートが終わったかどうかの確認などをしたければ、HDMIでモニターにつなげます。こちらはブートシーケンスです。
ここではリモートプレーヤーとして主にiPad miniとiPhoneをつないでWEB UIとMPoDアプリで操作を行いました。
接続のためのIPアドレスが必要であれば、RaspyFiのコマンドプロンプトから/sbin/ifconfigとやってie0の項のinetアドレスでわかります。
まずXDuoo XD-01とFitEar USBケーブルで最小クラスのミュージックサーバーシステムを作ってみました。音源はUSBメモリに格納しています。
上左の写真ではわかりやすいようにXD-01とUSB結線のみ接続しています。右はすべての接続をしたところです。モニターは基本的に不要です。USBメモリが巨大に見えるくらいコンパクトな基盤です。Rasbery PIからのネットワークは無線LANにつなげてあります。
ディスプレイはHDMIですが、なくてもかまいません。電源はMicroUSBのような外部電源です(5V)。USBポートは2つついています。このほかにヘッドフォン端子もあります(ここでは不使用)。ただしRaspberry PIでは安価にするためにDACではなく簡易DA再生をしています。
LinuxのUSBクラスドライバーはClass2対応で192kHzまで対応できます。
DACではドライバーはWindowsやMacのドライバーは使えませんので、標準USBドライバーのサポートが必要です。(Linux向けのドライバーが提供されていれば別ですが)
Raspberry PIのUSB給電能力はどんなDACでも心配ないって開発者が書いています。
バッテリーは外部ですが、5V USBから取れますので、頑張ればポータブルにすることもできます。あとは無線LANとポケットNASをなんとかすれば、iPhoneから操作可能なポータブルのオーディオ向けネットワークサーバーシステムが作れてしまうでしょう。この場合RaspyFiはトランスポートとして機能します。
また自作の人向けにはオーディオ用のクリーン電源も作られています。
http://www.raspyfi.com/the-best-raspberry-pi-power-supply/
ケースは別に購入ができます。
RaspyFiはNASにもつなげられますし、インターネットラジオのストリーミングにも対応してます。NASはDLNAではなくSambaでマウントします。
再生はWAV, FLACのみならずAiffやAppleロスレスも可能です。ハイレゾは192/24まで対応できます。それに加えてMPD設定でDSDサポートをオンにするとDSDも再生可能です。このちっちゃなRaspberry PIでそこまでできます。再生はDSFでもDFFでもOKです。
MPoDでRaspyFiに接続したところ
操作はリモートからWebやMPodなどのMPDクライアントで行えます。このRaspyFiのWeb UIはとても良くできていて、プレイリスト経由の再生からMPDの設定、そしてリブートなどのシステムコマンドもWebから簡単に操作ができます。MPodでは上のようにアルバムアートも見られます。
上左はiPad mini上のWeb UIでRaspyFiのFLAC再生をしている画面です。楽曲を追加したならば上右のようにデータベース更新を行います。
ミュージックライブラリはブラウズで楽曲を表示させ、上のようにプレイリストに追加することで再生ができます。
リブートやシャットダウンのようなシステムコマンドもWeb UIから上のように可能です。
音質もヘルゲリエンのtake fiveなどで本気で聞いてみましたがかなり良いです。透明感がとても高く、ベースの止めなど制動もよく効いてます。ホントにXD-01の音かと驚いてしまいました。動作も安定してるようです。
ハイレゾも上のように96/24を試してみましたがノイズなどもなく、とてもクリーンに再生できてるようです。ARM 700MHzのプロセッサでよくやってます。
Schiit LokiとRaspberry PI
DSD再生は標準ドライバーとDoPサポートが必要です。さっそく最新のDSD専用DACのSchiit Lokiを使ってみました。コンパクトサイズでよく似合います。
LokiはDSD専用ですから、DSDネイティブ再生ができるのは確実です。DSDロックLEDもついてますね。
なかなか良い音が楽しめます。
DSD設定はデフォルトではオフなので、上のようにMPD設定画面からDSDをオンにします。上右はDFFファイルを再生しているところです。
わずか4000円のRaspberry PIとSchiit Lokiが15000円くらい、RaspyFiは無料ですから、トータル2万円くらいでこんな高音質のDSD再生環境が手に入ります。
コストパフォーマンスは楽に10倍以上はありますね。これ。
とはいえRaspberry PIは低価格ボードなので
そこで作者はRaspberry PIのGPIO(汎用IOポート)を使ってI2Sでデジタル出力することも視野にいれているそう。RaspyFiはこれからも進化していくかもしれません。
ここに書いたのは私がやれるくらいなのでハンダも精密ドライバーも必要ありません。遊びのつもりで始めてきっと本気になるようなポテンシャルも秘めてますね。
Raspberry PIの購入はネットワーク対応でRAMが512MBのモデルBを勧めます。