好評のAK100に日本だけの限定モデルとしてAK100 MKIIが発売されます。
これは音質の強化と、アクセサリーの充実がポイントとなっています。商品名は『Astell&Kern AK100 MKII(マークツー) 32GB ソリッドブラック』、直販予定価格は76,800円(税込)です。
AK100 MkIIはほぼAK100と同じですが、主な改良点は出力インピーダンスを3オームと下げたところと、専用に調整されたプロEQ設定を持っている点です。また、AK120に付属していたブッテーロの高級革ケース(ブラック)とSundiskのMicroSDHCカードが2枚付属してきます。
また、これとあわせてFitEar須山さんからイヤフォンではなく、高音質のUSBケーブルが登場しましたので、AK100 MKIIと合わせたレビューも書いていきます。
1. MKIIでの改良点とAK100との違い
まずAK100 MkIIの音質的な改良では出力インピーダンスを3オームと下げたところがメインです。この点はAK120と同様です。
以前はこの出力インピーダンスが22Ωもある点が低インピーダンスイヤフォンに対しての弱みとしてユーザーサイドから指摘され、以前書いたRWAK100のように改造モデルが作られたりしました。
一般に出力インピーダンスが低ければスピーカーやヘッドフォンの駆動力・コントロールの力が高まり、特に低域での音の出方に効いてきます。また、オーディオでの出力はロー出しハイ受けが基本ですので、もともとのAK100の22オームという値はだいたいが16オームのイヤフォンには逆に高くなってしまっていたというわけです。
iriverはこの声をくみ取ってAK120ではきちんとここを改良してきました。ただしiriverほどの多国籍メーカーになるとさまざまな制約もあって、1オームではなく3オームとなっています。このAK100 MkIIでも同様の改良がほどこされています。これはAK100を育ててきた日本市場への贈り物と言えるかもしれません。
それと音質面ではAK120に近くなるように調整したという特別なプロEQも入っています(MkII専用です)。
またAK100 MkIIはAK100のラグジュアリーモデルとしての意味もあり、アクセサリーでも好評のブッテーロのケースがはじめから付属してきます。AK120のケースとの違いは色が精悍なブラックで、正面にAのロゴがあしらわれているということです。これはAK100 MKIIの専用品で、単体発売はされないということです。
ブッテーロのケースを着せると高級感があり、かっこいいですね。また本体を保護する本来の働きもあります。ポータブルアンプとかさねるときにも良いですね。ケース表面には、Astell&Kernブランドを象徴する「A」の刻印が入っています。
加えて付属品ではSunDiskの microSDHC 32GBが2枚ついていくるもポイントです(Class10です)。販売価格で比較するとAK100とは2万ほど違いがあると思いますが、このケースとSDカードだけでも2万弱はするかもしれません。
また、細かい点では本体背面には小さくですが、「MkII」の刻印が施され、箱もケース同梱なのでAK120のものに入ってきます。
2. AK100 MKIIの音質について
さて、肝心の試聴ですがAK100 MKIIをAK100オリジナルとAK120と比べてみました。RWAK100とも比較したいところですが、わたしのRWAK100は今はRWAK100-Sとなっていますので直接は比べていません。
AK100 MkIIとAK100(左)、AK100MkIIとAK120(右)
はじめAK100とAK100 MkIIを聴き比べて、あれっと思いました。実際はAK100と比べなくてもAK100の音には慣れているので、AK100 MKIIをはじめに聴いた時点でそう思いました。
なぜあれっと思ったかと言うと、はじめに予想していた見込みと音の印象が異なったからです。はじめに予想していたのは出力インピーダンスの違いだけと聞いていたので、AK100とRWAK100の違いと似たものになるだろうということでした。(ちなみに国内のRWAK100同様の改造品についても聴いたことはあります)
AK100MkIIとAK100の音は単に低域の出方の違いではなく、全体の音傾向自体が異なっています。これはAK100とRWAK100との違いとは異なるように感じました。どう違うかと言うと、AK100の音傾向ではなく、AK120の音傾向に近くなっています。これもAK120の音に似せたのはプロEQだけと聞いていたので意外でした。この音の違いは私だけではなく、試聴機を聴いた他の人も認めています。
あわててファームの違いを確認しましたが、最新のAK100とAK100 MkIIは同じファーム(Ver2.20)バージョンを使用していますのでソフトウエアの違いではありません。(同じバージョンでもAK100とMkIIでは中身が違うかもしれませんが、それはわかりません)
思わず「話と違うじゃない」とアユートさんにメールしてしまいました 笑 (本当)。個人的に言うとAK100 MkIIの音傾向の方がAK100よりも好感が持てます。
AK100 MkII + UE18
話を戻しますが、AK100、AK120とAK100 MkIIを低インピーダンス・マルチドライバーのカスタムイヤフォン、UE18+TWagで比べてみました。
低音の迫力が意図的に強調されている音響系エレクトロニカなどはオリジナルAK100で聴くと気の抜けたような低域になってしまうけれども、AK100 MkIIでは出力インピーダンスが下がった効果もあり、低音の迫力も高く量感もたっぷりあります。UE18ではかなり大きな差があります。Ak100MKIIでは(記憶の)RWAK100と遜色なく低域もレスポンスの良さを感じます。AK120と比較しても低域のレスポンスにかんしてそん色はないですね。ただし解像力とかベースの情報量などはさすがにAK120の方が上回ります。
全体的な音の印象もAK120と同じで、AK100とはやや異なっていて、なんとなくジャズとかクラシック向きのようだったおとなしめのAK100に比べるとよりダイナミックに感じられます。音の端正さは引き継いでいるけど、端正だがちょっと平面的なAK100に比べると音のメリハリもあって抑揚も明確ですね。そういう意味ではオールジャンルで使えるようになったと思います。
AK100とAK100 MkIIとAK120を並べて同じ曲で試すと、音の傾向はAK100がやや平坦であるのに対し、AK100 MkIIはメリハリが感じられ、音の傾向としてはAK120に近い感じがします。AK100とAK100MKIIは情報量は同じくらいだけど、音の個性が異なる感じです(低域の量感の増加に加えて)。
AK100 MkIIとAK120を比べると音の傾向は似ているが、AK120の方がやはり情報量は豊かでヴォーカルの発音や楽器音にしっかりした密度感があります。比較するとAK100 MkIIはAK120よりやや軽く聴こえます。半面でAK100 MkIIの方がAK120より聴き疲れがしないということもあるかもしれません。
AK100 MKII専用のプロEQをオンにすると細かく微妙ではありますが、さらにAK120に近い音の印象になります。ただし情報量などはよく聴けばAK120の方がより豊かなことが分かりますので、同じになるわけではありません。テイストが近くなるという感覚です。
RWAK100とAK100 MKIIの違いで言うと、記憶で言えばRWAK100の方がAK100 MKIIよりも少しクリアさは上回ると思います。RWAK100はインピーダンス抵抗のカットだけではなく結線をもいじっています。そういう意味ではRWAK100はそれなりの価値はあると思います。ただしRWAK100は音傾向はAK100と同じなので、そこは好みになると思います。
AK100 MkII + パルテール(左)、Ak100 + IQ(右)
イヤフォンの相性で言うと、パルテールも良いですね。パルテールの透明感が生きてきますし、適度なダイナミズムも感じられます。バランスのとれた音を望む人にはよいでしょう。
この前記事にしたRe:cab;e+Ultrasone IQも良い感じです。低域の迫力ややや脚色した音の良さを楽しみたいならこの組み合わせも良いですね。
3. FitEaのUSBケーブル 「USB01-Micro35」登場
カスタムイヤフォンや大人気のパルテールでおなじみのFitEarから、イヤフォンではなくUSBケーブルが登場しました。このFitEar USB 「USB01-Micro35」はMicro USB(Micro B)端子を採用した長さ35cmの高品位USBケーブルです。USBケーブルやイヤホン等の持ち運びに便利なFitEarセミハードケースが付属しています。
FitEar USB01-Micro35
AK100ではUSB DACの機能が付加されましたが、問題はオーディオ向けの高音質USBケーブルと言うと端子がミニUSBかフルUSBのものに限られてしまい、AK100で使用するマイクロUSBの選択肢が限られてしまうということです。これは最近出ているAndroid対応のUSB DACなどMicro USB端子を持つデバイス共通の悩みです。そうしたところにUSB01-Micro35の価値は大きいと思います。
AK100MkII(左)、Macbook AIr 11インチ(右)
USB01-Micro35はとても短く余分な長さのないサイズで音楽再生に向いています。またMacbookなどノート用に使って外で使うのもありですね。AK100を電車ではDAPとして聴いて、喫茶店などで書きものをするときにMacbookとつなげてUSB DACとして音楽を楽しむ、というのも良いです。
感心したのはプラグがきちんとAK100ケースの切欠きにきれいにはまることです。AK100ケースのUSBの部分の切欠きにうまくはいらないUSBプラグもよくあるのですが、これはさすが国産らしい細かさです。
須山さんに聞いてみると設計はAK120をリファレンスとしたようで、AK120がプロユースも念頭に入れているということから、このケーブルもDAW-DACで作業した時と、切り離してAK120単体でプレイヤーとして利用した際の音質差を小さくすることを目指したそうです。そうしてワイドレンジで高解像度でありながら、過度に高域のきらびやかさ、低域の量の無い銀メッキ線にて、派手さという面ではちょっと控えめとしたとのことです。ただし当初プロトタイプはもう少し音楽鑑賞用に演出的であったようで、その良さも残しているそうです。
試聴はAK100 MkIIとAK120で試しました。PCオーディオ的に使うので試聴にはヘッドフォンのEdition 8を使用しました。
音は透明感が高く、楽器の音は明瞭で細やかさはAK100の魅力をよく引き出しています。低域もEdition8では迫力がたっぷりあります。音質のレベルは高いと感じられます。音の切れがよくシャープさも際立つので銀メッキ線の良さも出ていますが、全体的にはきつさはあまりなく聴きやすくさえあります。音場の広さ、立体感の再現性も良いと思います。
AK120に変えるとさらに音質は洗練されてレベルの高いものとなります。比較としてワイヤーワールドの高音質USB ケーブルのStarlightと比べましたがこれら一級品とそん色のないレベルの音質です。透明感や明瞭感はさらに上回っていると思います。
プロユースを想定したということですが、音楽鑑賞用にも十分な良さがあると感じました。ポップロックでのノリの良さもなかなか良いですね。
Xduoo XD-01とUSB01-Micro35
もちろんxDuooなどの最近のUSB DAC対応のポータブルにも向いています。それらのいわゆるAndroid対応DACを持っている方にもお勧めできます。
Micro USBで取り回し良く、音質の高いUSBケーブルを求めている人にお勧めです。
4. まとめ
AK100 MkIIについてはリリース内容のAK100との変更点での文言だけでなく、実際に聞いてみて判断するのが良いと思います。
AK100 - AK100 mkII - AK120というラインナップの中で自分にあったモデルを選ぶことができるでしょう。
AK100は市場に大きなインパクトを与えて、日本がそうした市場をリードしてきました。いまではフォロワーとおぼしき製品も他のメーカーから出てきつつあります。
そうした中でAstell&Kernのブランドイメージを守りながら、ユーザーの声を聞いて日本市場だけのモデルとしたのがAK100 MkIIと言えます。
購入に関してはAK100との音の違い、アクセサリーなどがポイントとなるでしょう。
追補. AK120のブラックブッテーロケース
AK100 MkIIのブラックのブッテーロケースがかっこいいと興味あるAK120ユーザーにはAK120用のブラックのブッテーロケースが発売されています。
こちらは単体販売されていますので購入が可能です。AK120にはシックなブラウンのケースが付属してきますが、AK120はそれほどレトロチックなデザインではないので、現代的で精悍なイメージのブラックもなかなか似合います。
AK100 MkIIとAK120のブラック・ブッテーロケース(中、右)
Music TO GO!
2013年09月13日
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