タイムロードさんのショウルーム「遊」で発売予定のChordのネットワークプレーヤーでDSX1000を試させてもらう機会がありました。
ラックの上側がDSX1000
DSDネイティブ再生はいまのところUSB DACが主ですが、以前の記事でも書いたように現在ではネットワークプレーヤーを使用して、ネットワークを介する方法でも可能です。
そしてネットワークプレーヤーでのDSDのネイティブ再生にはいまのところ大きく分けて二つの方式があります。
1. バッファローのDSD対応NAS(LS421Dシリーズ)を使用する
2. DoPEに対応したJRiver Media Center(JRMC)を使う
上記の二通りですが、両者は別々の異なる方式です。そのため両方ともネットワークプレーヤー側でそれぞれの方式に対応していることが必要です。いまのところバッファローNAS方式は日本国内製品、DoPE方式は海外製品が主な流れです。
強いて言うともう一つの方法として前にスフォルツァートがやっていたWAVにあらかじめDoPパックするStefanoのツールを使う手もあります。DoPEはこの延長上にあるといっても良いかもしれません。
ちなみにこのstefanoの記事を書いた時点ではDoPという言葉がありませんでしたので標準規格1.0と書いてますが、これは今でいうDoP 1.0のことです。この当時は"DSD Audio over PCM Frames(DoP)"ではなく、"USB Link for DSD Audio via PCM Frames"と呼んでいました。これがDoP1.0のことです。私が言っていたところの"dCS方式"(本来の呼び方は"DSD Audio over USB")はさらに前の規格です。このころ(2011年秋くらい)はUSB経由と明記していたのが、いまではネットワークでも可能になったというわけです。
* システム構成について
DSX1000では上記の2者では後者のDoPE(DoP Ethernet)という方式を採用しています。Ethernet(イーサネット)は一般的に使われているネットワークの種類のことです。DoPでエンコードされたDSDデータをネットワークを介して転送するのがDoPE方式です。これでネットワーク経由のDSDネイティブ再生が可能になります。ただしDoPEという規格があるわけではなく、DoPを利用してネットワークでDSD再生をするときの通り名です。(この記事を見て参考にされる方に念のため)
以前DoPEのことは下記記事に書きましたが、自分で理解確認という意味でもDoPEの実際ということを踏まえて今回はテストしてみました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/358186736.html
DoPE方式で必要なものはDSX1000本体(DoPE対応済み)、ネットワークハブとケーブル、そしてJRMC18以降がインストールされたWindowsPCかMacです。テストではMacbook上でJRMC18を用いました。
ネットワークプレーヤー(海外ではストリーマーと呼ぶ)というとLINN DSからの流れでNASを使ってパソコンレスというものというを想定してしまいますが、NASも結局はハードディスクにネットワークにつながるためのコンピュータが合体されたものにすぎません。コンピューターの世界的にはアプライアンスと呼ぶ形態です。アプライアンスとは専用機と言うような意味合いですが、アプライアンスでもパソコンでもコンピューターには変わりありません。そういう意味ではNASの位置にそのままパソコンを持ってくることができます。そしてその方がもっと柔軟性があるわけです。
一般的なネットワークプレーヤーの構成は以下の通りです(ネットワーク省く)。簡単に動きを解説すると、iPadでメディアサーバーの中の曲を探して再生の指示をし、レンダラーが実際の再生をするオーディオ機器です。
iPad(コントローラー) - NAS (メディアサーバー) - DSX1000(レンダラー)
DoP-Eのシステムでは次のようになります。もちろんJRiverをコントローラとして直接再生することもできます。
iPad(コントローラー) - Mac/JRiver (メディアサーバー) - DSX1000(レンダラー)
Mac/JRiver (メディアサーバー&コントローラー) - DSX1000(レンダラー)
このシステムにおいては現在PC/Macを持っている人がそのまま導入できるという点がメリットですね。それらを立ち上げておく必要はありますが、NASを新たに追加購入して設定に悩むということもないでしょう。
テストしたときはMacbookを使用したのですが、大方のNASとは異なって無線LANを使用できるというメリットもありますね(無線LANを引いている場合)。この辺がパソコンをそのまま使用する柔軟性です。音楽ライブラリはパソコンの中に(あるいは外部拡張ディスクに)格納することになります。つまりいままで構築していたものがNASに移し替えることなく、そのまま使えます。もちろんDSDだげてはなく、PCMのFLACやWAVも使えます。
ちなみにDSX1000は現時点ではDSDネイティブ再生においてバッファローのDSD NASには対応していません。もちろん通常のPCM再生では使用できますので、上記のシステムにバッファローNASを加えることもできます。これは実際に試してみました。DLNAクライアントからメディアサーバーを切り替えるだけです。
バッファローNASは音楽再生においてなかなか有効であるようですのでNASの中では推奨できると思います。
* JRiverでの設定について
設定はJRMC上で行います。設定方法は以前に記事に書いた通りであることが確認できました。DSX以外のDoPE対応ネットワークプレーヤーでも設定は同じだと思います。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/358186736.html
JRMC18以降(最新は19)を使用してください。
再度確認すると、
1.JRMCのオプションをクリックして、下記のような設定画面を出します
2. Media Network(メディアネットワーク)を選択
3. Advance(詳細)から"Bitstream DSD (requires DoPE Compliant rendarer)を選択します
(requires DoPE Compliant rendarerとはDoPE互換のレンダラーが必要と言う意味です)
以上だけです。DLNAの設定はあらかじめ有効にしておいてください。
* テストの内容
今回はテストとしてrie fuのDSFファイルを再生してみました。MacbookのJRMCのライブラリに入っていた曲をネットワーク経由で再生しました。DLNAメディアサーバーとしてJRMCが機能しているわけです。
上記Bitstream DSD設定をオンオフして比較すると、オフだとやはり機能しないので上記設定が効いていることが分かります。
また今回わかったのはPlugPlayerからもJRMCをメディアサーバーとして設定すれば、JRMC内のDSFファイルが見えるということです。このため、iPadなどからいわゆるリモート的に操作が可能です。
音質としてはDSX1000をCHORDのプリ・パワーアンプを通してRaidho C1で聴きましたが、中身はQBD76相当というだけあり、音質はさすが素晴らしかったですね。Chord独特の透明感や研ぎ澄まされてシャープでソリッドな音像はC1の再現力とあいまって非常に高い音質のハイエンドの音楽再生を楽しむことができました。ロバートワッツの高い技術力がネットワークを介して開放されているかのようです。
またボリュームもリファレンスクラスのプリのパーツを使用するなどいっさい手を抜いていないこだわりの設計が見て取れます。iPhoneで操作するとDSX1000側でも本体の液晶が連動します。
Macbookで無線LANと有線LANの両方が可能であることも確認しました。
無線LANと有線LANで音質を比べると、環境の要素はあるけれどもやはり聞き比べると有線の方が細部の表現は少し上のように聞こえます。ただ劇的な違いと言うほどではないので、使い勝手とのトレードオフになるでしょう。
この辺は今年あたりから活性化するであろう無線LANの5G帯域への移行もまたどう影響するか面白いところです。
またDSX1000はDSDファイル以外でのWAVやFLACはNASからも音楽再生が可能です。この場合はバッファローNASがとても良い相性であるようです。ただしバッファローNASのDSD再生にはDSX1000は対応していないようです。DSDファイルにか関してはMac/PCが必要です。
なおJRMCだけではなく、以前書いたminimServerも使えるようです(未確認)。
* 結果のまとめ
結果として今回わかったことはネットワーク経由のDSDネイティブ再生の手段としてDoPEはうまく機能しているということです。JRMCの画面でDSFファイルを選択してレンダラーであるDSX1000で正しく再生することができます。またPlugPlayerのようなiPadなどからのリモート操作も可能です。DSX1000の純正アプリだけでなく、標準的なDLNAアプリから見えるというのはDoPEという仕組みがDLNAの中でうまく効いているということです。
QBD76がネットワークプレーヤー化したようなDSX1000は興味のある方も多いと思います。DSX1000は発売予定ですが、準備中とのことです。
バッファローのNASとも異なる、このDoPE方式はこれからも海外製品を中心に広がることが期待されます。
Music TO GO!
2013年09月08日
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