Music TO GO!

2013年06月26日

1ビットオーディオ研究会(旧:1ビットオーディオコンソーシアム)のセミナーに参加しました

本日は1ビットオーディオ研究会(旧:1ビットオーディオコンソーシアム)のセミナーに参加してきました。
詳細は下記です。(PDFが開きます)
http://www.jas-audio.or.jp/jas-cms/wp-content/uploads/2013/06/2013-06_1bit-audio.pdf

* インターフェース株式会社

今回初めて参加しましたが目当てはまずインターフェース株式会社(長野・立川)さんのDoP/ASIO伝送方式のセミナーです。

最近DSD DACが急にどっと出てきたという印象を持つ人も多いでしょう。これは人気があるから流行だから雨後の竹の子的に出しているという見かたもあるかもしれませんが、それはちょっと短絡的で実は開発側からみた見方があります。
例えばPCオーディオの先鞭をきったアシンクロナス方式はWavelengthのゴードンがややこしいファームウェアをAyreなど各オーディオメーカーにライセンスしたことで一気に広がりました。USB Class2のときにはXMOSがありました。XMOSは独自のトランスピュータという新技術の小ロットでの柔軟性を宣伝するためにオーディオ分野でClass2を実装し、一気に広めました。ネットワークオーディオでもネットやスマートフォンアプリのソフトウエア基部を作る会社(StreamunlimitedやTIのnSDKなど)があります。そのため、「あの会社がネットワークやるの」、と思わせる製品が出てもおかしくありません。

このように現代PCオーディオではややこしいインフラを専門の会社が一手に引き受けてオーディオメーカーはそれにオーディオとしての回路を足すというのが一般的です。こうしてインフラが整ってどっと製品を出せる基礎ができるわけです。
そしてDSDの分野において難しいところを引き受けているキーとなるのが国内ではインターフェースさんです。インターフェースさんのホームページはこちらです。
http://www.itf.co.jp/

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インターフェースさんでは2011年のdCS方式から研究を開始して、今ではTEACやLuxmanその他のDSD DACのファームウェアを担当してます。
伝送方式のセミナーの細部ははしょりますが、DoPでのマーカーの判別における処理の難しさ、それに関してのミュート処理、サンプルのバッファリングとフィードバックなどポイントと感じられました。
ASIOでは2.1からもともとDSDを認識できるのでDSD/PCMの切り替えもコマンドで伝送前に実施できます。音楽データを流しながら動的にDSDを判別しなければならないDoPとの違いがあります。

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肝心のファームウェアはITF-DSD via USBというものでその実体はTIのTMS320C6748というDSPチップです。これは5.6Mまでの対応が可能で、これでDoPとASIOの両対応が可能です。ASIOの方が安定して良さそうであっても、MacではASIOが使えないことを考慮する必要があります。
またPC上のアプリケーションはITF-Audio Toolkitというのを用意してサンプルソースコードをベースに容易にWindows上でメーカーがDSD対応アプリケーションも作成できます。ドライバーもITF-Audio for WindowsというASIOドライバのカスタマイズベースを用意してます。こうしたトータルなソリューションでメーカーはDSD対応機器を手軽に作れるわけです。

今後はインターフェースさんの取り組みとしては安くしたい(まだTIのチップが高い)ということがテーマだそうで、これがうまく行けばもっと安いDSD対応機器が出てくるかもしれません。
またもう一方はiOSへの発展です。デモでは国内某ショップ製のDSD DACにiPad miniに独自アプリを入れて再生デモをしてました。カメラコネクションキットを経由していますね。iPadアプリはPCM(WAV)、DFF、DSFに対応しているようです。

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iPadではDoPならDSDネイティブ再生できそうですが伝送方法はDoPではなく、なにやら言えない方式ということです。後述するKORGさんみたいにマーカーではなくコマンドで切り替えると思いますが、その場合はiOSの標準ドライバーを通過してるのが不思議ではあります。

少し担当の方とご挨拶させてもらいましたが、うちのブログもご存知ということでありがたいことです。

* LUXMAN

インターフェースさんがインフラの基礎部であれば、LUXMANさんはその上にオーディオとして製品を実際に作る立場です。大手メーカーでもDSDを扱うことで間口が広がることも期待できますね。

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LUXMANさんは技術的なところよりもPCオーディオとDSDへの取り組みを中心にプレゼンしました。
オーディオ人気はいったん2000年頃に底に突き当たりますが、その後はゆるやかに回復基調にあるということ。これはPCオーディオが牽引役になってるのではないかとのことです。また年齢的にいうとLuxman的にはかつて60才台くらいにピークがあったがこれは定年後の趣味ということでオーディオを始めるためではないかとのこと。私が思ったのは一昔前のカメラと同じだなあということ。
LUXMANさんによると二年前くらいから30才台に少しピークが出てきているということです。これもいまのカメラと同じように思いますね。
思うんですが、オーディオはPCオーディオっていうコンピュータとの関わりで新しい市場を得てるのとおなじに、カメラもデジカメで同じことになりますね。つまりはPCオーディオっていうのはオーディオだけの流行ではなく、他の世界もそうであるようにコンピュータによる世代交代の流れをオーディオも受けているということだと思います。

またヘッドフォンの人気にもふれ、ヘッドフォンユーザーはスピーカーユーザーにいずれなるのではなく、別のユーザーであると感じているとのこと。
LUXMANではアナログ部分も重視してるが以前とは違い重いものはやめてくれというアンケート結果が増えて来たというのも面白いところです。小さくて良いものが求められる時代が来たと感じているとのこと。
またPCMとDSDとの比較試聴も行いました。

* KORG

KORGは1bitの雄ですが、同時に上記のグループとは別の道を歩んでいるように見えるのも興味深いところです。

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KORGでは1bitの研究は2004年からはじめ、KORG U1という珍しい機器の紹介もありました。KORGのメインはご存知の通り、楽器とかDAWのオーディオインターフェースが主ですね。MR1とかMR1000の開発からAudioGateの初期UIのボツ写真など面白い紹介もありました(恥ずかしいのでブログには載せないでくれとのこと)。
興味を引いたのはAudioGateではCではなくSSD2アセンブリベースで高速化したということ。AudioGateって意外と音がいいんですけど、この辺が関係してるのかもしれません。聞いててかなりマニアックなことやってます。
もうひとつのポイントはClarityというDAWソフトで、ClarityはCPUネイティブ(PyramixなどのようにDSD専用ハードなしでソフトウエア処理する)で出来るDAWをめざしたということで、オーディオインターフェースとしてはUSBでMR0808Uを使用しています。AudioGateと親和性がありClarityの技術をAudiogateに活かすことも可能だそう。(ただ諸般の事情で製品化予定はないとのこと)

KORGさんで面白いのは最近発表されたDAC10(DSD対応のUSB DAC)のMac対応です。
普通ならASIOをMacでは使えないのでDoPですが、AudioGateではDSD/PCMでの切り替え時にClarityエンジンでのミュート処理とコンフリクトがあるので使用できなかったとのこと。そこでDAC10のMac対応ではコマンドでDSD/PCM切り替えをしてASIOに近い形でDACに送っているそうです。これは独自ドライバーとhogモードを駆使してます。

これは発表のあとでKORGの人に聞いて見たんですが、CoreAudioのAUでも実際はDoPのようなPCM見せかけの中身24bitのDSDではなく、32bitのDSDデータで通っているようです。AudioMidi上はDoPと同様の176k設定で見かけはPCMで通ってるけど中身は32bit詰まったDSDデータで、CoreAudioまではそれで通っているが、ドライバーはそれで通らないので独自ドライバーにしているということのようです。DSDをCoreAudioで通すためにはインテジャーモードが必要とAudirvanaのダミアンとも話したことがあるんですが、おそらくCoreAudioのところではDSD通すためにhogモードを使ってなにか同様な工夫してるんではないかと思います(想像ですが)。

KORGは1bitについてはハードだけではなく、ソフトウエアも低いレベルから独自に開発してきたのがよく分かりました。自社技術力があるのでDAC10のMacドライバーでDoPではなく、ちょっと標準とはことなる独自の道を選択するのもわかります。

* * *

今回は予定より倍以上の人がきて倍の部屋を使ったということで、人気のほどを伺えました。150人以上はきたようです。
質問コーナーでは1bitの利点について「アナログライク」のような感覚的な意見が多くて学問的ではないのではないか、なんて意見があったのはいかにも大学でやってるコンソーシアムかなと思うのも面白いところでした。

私としてはKORGは山崎研究室の流れを汲むのか、それでWSD(ワセダのアナグラム?)も対応しているのね、とかいろいろと国産DSD世界の関係もよくわかり、なかなか収穫多いセミナーでした。
posted by ささき at 22:14 | TrackBack(0) | __→ DSD関連 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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