ユニバーサルタイプは耳型に合わせるカスタムではなく普通のイヤチップを使うイヤフォンのことです。カスタムの高音質技術を応用して普通のイヤフォンを設計するというのはFitEar togo 334が嚆矢でその音質は海外cnetでも認められて世界最高のイヤフォンと評されたこともあります。
今回のパルテールもそのユニバーサルタイプのイヤフォンです。ただし今回は今までのFitEarブランドでは通常付記されている334とか111というドライバー数や帯域分割(way)数を表す型番がないのに気がつかれると思います。これはドライバーの数やタイプにとらわれずに先入観なしで試して欲しいからだそうです。本記事でもドライバー構成には触れません。
パルテールとは劇場の中でも最上の席でステージから程よい距離で音響的にも優れた最高のシートだそうです。そのような席で聴いているような音を届けたいということですね。
こちらに製品ページがあります。
http://fitear.jp/music/product/parterre.html

製品のポイントはマルチドライバー(バランスドアーマチュア型)でありながら、担当する周波数レンジを完全に独立させるアコースティックフィルタ&ネットワークにより、澱みの無いピュアで伸びやかな音質を実現したということです。
普通スピーカーのクロスオーバーはコンデンサ(ツイーターのローカット)とコイル(ウーファのハイカット)でそれぞれツイーターとウーファの最適周波数で鳴らすわけですが、イヤフォンの場合はサイズの問題でコイルによる効果的なローカットが出来ないという問題があります。そのためローからミッドに帯域重複が出てしまいます。
これはスピーカーでも往年の名器JBL4312みたいに意図的にハイカットしない例もあり、いわゆるああいう厚みの演出には良いのですが、現代スピーカーのような整理された音再現が苦手だったとのことです。
そこにメスをいれて新機軸のネットワークで挑戦したのがこのパルテールです。パルテールではツイーターのローカットはコンデンサですが、ウーファのハイカットをアコースティックフィルタで行っているということです。ドライバー構成に触れないという理由の一つはこの新システムがとても効いているからだと思います。
もう一つのパルテールの特徴はF111で採用された純チタン削り出しのテーパードポートステムを音導口に採用しているということです。これで高域が伸びやかに改善されますが、このチタン削り出しの技術を持っているというのもプロ用イヤモニの実績と共にFitEarが差別化できる点ですね。
これらの特徴によって従来とは一味違う音になっているのがパルテールというわけです。
* 実機試聴
最近よく使ってるAK100の改造モデルであるRWAK100で試聴しました。これなら上で書いているパルテールの長所を引き出しやすいでしょう。
パッケージにはいつものようにペリカンケースと、ユニバーサルですのでチップがいくつか付属します。


はじめに音の広がりの豊かさにはっとすると、FitEar Togo 334の系統かなとも思わせますが、聴いているといままで感じたことのないようなピュアな透明感のある音再現に気がつきます。
音が綺麗で瑞々しく淀みないという感覚で、山のきれいな清流を思い起こします。特に楽器音の再現力は秀逸で、ピアノの響きは素晴らしく美しく感じられます。ピアノ曲専用にこれ買ってもいいんじゃないかと思ったくらいですね。ハープの音もとても澄んで音空間に響きます。いわゆる美音系のように演出しているのではなく、逆に混じり気なく純粋だから美しいという感じでしょうか。音色自体はニュートラルで着色は感じられません。弦もとても良く、ぜひハイレゾで聴いて欲しいと思いますね。
このピュアで透明感のある純粋な再現力はあまり聞いたことのないレベルで、togo 334と比べてもはっきり違いがわかります。ここにパルテールならではの独特の音世界があります。
この透明感を反映してか、解像力も良くライブ録音の細やかな環境音も明瞭にわかります。演奏のニュアンスも伝わりますね。このリアルな音はたしかにコンサートの一番良い席というネーミングもうなづけます。
高域はチタンチューブらしくクリアでシャープ、とてもキレが良くそれでいてキツさを感じないうまいバランスになっていると思います。低域は適度な量感がありタイトでキレ良く、ロックの畳み掛けるようなドラムスのインパクトは気持ち良く感じます。ローエンドはかなり深く沈む印象で、キレの良いシャープな高域と合わせてワイドレンジであると感じます。
パルテールの低域の良さはソリッドでシャープなアタック感、インパクトの鋭さでしょう。ピュアな音再現の他にパルテールのもう一つの長所はこのキレの良いテンポの良さです。音の歯切れが良くスピード感がありますね。低域の量感は比べてみるとtogo 334同等以上にあるので普通は十分満足できると思います。
FitEar Togo 334とパルテールの音の比較をもう少し続けますと、全体的にtogo 334の方がやや濃く厚めで音場もやや広め、Parreteはすっきりとピュアで細身、アタック感はより鋭く軽快感があります。
togo 334はカスタムのベースモデルが存在することもありますが、カスタムの性能をユニバーサルに持ち込んだということで画期的でした。パルテールはさらに独自の世界に挑戦したと思います。
価格はオープンですがtogo 334の下になると思います。このことからtogo 334の弟と思えるかもしれないけど、実際はtogo 334とは上位・下位というより好みで切り分けるべきものかと思います。
ぜひヘッドフォン祭で試聴してみてください。須山さんのブースは7F No2(いつものところ)です。