二月に行われたポタ研で参考展示されて好評を博していたJabenのバランス改造ベイヤーとオーロラサウンド(音松ブランド)のバランスヘッドフォンアンプのセットがいよいよ発売されることになりました。
もちろん5/11の2013年春のヘッドフォン祭でもJabenブース(9F-29)で展示されますのでまた試聴できます。
左からT5pバランス、T1バランス、Otomatsu BDR-HPA02アンプ
これは「Jaben バランススペシャルセット-1という商品で、バランス駆動型ヘッドフォン+アンプ+DACのセットです。ヘッドフォンはベイヤーのフラッグシップ、T1かT5pどちらかのバランス改造品が標準バランスケーブルと一緒にセットに含まれます。注文時にはどちらかを指定することになります。
価格は248,000円(消費税込)です。
音松アンプは純粋なアンプだけですのでPCとの接続を考慮して定評あるDACportが付属するのもポイントです(これだけで5万くらいします)。
またこの他にもオプションとしてクライオ処理した高性能バランスケーブルがオプションで用意されます(価格未定)。下の写真がオプションのクライオケーブルです。
先に書いたようにヘッドフォンはBeyerdynamic社のT5p(32Ω)とT1(600Ω)のどちらかで、それぞれに専用のバランスドライブができるよう改造を施した、特製の4ピンXLRの高信頼性コネクタを装備したケーブルが付属しています。
ヘッドフォンコネクター部はミニXLRジャックに改造しバランス駆動を可能 にしています。 下の写真が改造されたプラグ部分と4pinバランスコネクターです。
オーロラサウンド製のアンプはOtomatsu BDR-HPA02というバランスヘッドフォンアンプで4pinのXLRプラグを使うタイプです。BDR-HPA-02はJabenの要求により本ヘッドフォン用にオーロラサウンドがOtomatsuブランドで特別にチューニングしたもので4ピンXLRジャックによるバランス駆動、また標準フォーンプラグによるノーマル駆動ができるようになっています。またT5pとT1というインピーダンスや感度が異なるヘッドフォンも適正な音量で駆動できるようにゲイン切り変えスイッチを(High/Low)を備えています。
以下特性をリリースから転記します。
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周波数特性 5Hz -80kHz
全高調波歪率THD+N 0.0046%
最大出力 1500mW x2 @45Ω負荷 Highゲイン時
ドライブ可能ヘッドフォン 16Ω - 600Ω High/Low ゲイン
電源 AC100V 50-60Hz
大きさ W230mm x D180mm x H80mm (突起物含まず)
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販売サイトはJabenですがJaben Online のサイトに日本語ページを作っているそうで、そのオープンが5/20だそうです。これが販売開始になります。ただしヘッドフォン祭会場では会場特価で先行販売するそうです。つまり日本語で注文でき、発送も国内ということです。サポートも日本語です。(故障等はメーカーに返送になります)
本商品に関する問い合わせ先は以下の通りです。
JABEN日本代理人 : 蒼蠅堂 (そうようどう)
メールアドレス shimayutan@gmail.com
FACEBOOK https://www.facebook.com/JabenJapan
* 実機レビュー
試聴機をお借りしたので実機レビューします。アンプは金属筐体のがっちりしたものです。
まずアンプの特徴を聴くためにHD800で聴いてみました。標準のヘッドフォンプラグもロックがついていてがっちりとしたものです。DACはChord QuteHDを使っています。
非常に透明感のある音でピュアでニュートラルにヘッドフォンの性能、またはDACの能力を通す感じです。色付けはなく、アンプがどこか周波数を強調するというようにも思えません。解像力も高く、高性能のQuteHDを使ってハイエンドのHD800から聴きたいというレベルの音を素直に伝えてくれていると思います。ベルの美しい響きから、女性ヴォーカルの発声の明瞭さ、ベースのうねりまで楽器音の明確な表現も十分にできてますね。欲を言うともう少し低域のコントロールがほしいという気はしますが、十分なレベルではあると思います。
ゲインもHigh、LowがありHD800でもHighで10-11時前後で十分音量が取れます。ベイヤーにチューニングしたと言ってもHD800でも良い音で聴けますので十分な汎用性もありますね。
アンプはアナログ入力のみだけれどもDACportがついているのでこれをUSB DACとして使うことができます。DACportも小型ながら性能には定評ありますからね。
T1バランスとクライオケーブル
* T1バランス+標準の黒ケーブル
ゲインはHighで試聴しました。4pinバランスを使用しています。キヤノンプラグなのでがっちりとしてロックができます。ヘッドフォン側はミニXLRでこちらもロック機構がついています。しかしこのプラグ改造はほんとに良くできていて、初めて見たときは、もともとこういうオプションあったっけ?とベイヤーのホームページを見直したほどです。改造というよりはじめからこうだったように思えるくらいよくできています。
先のHD800ノーマルで聴いてたのに比すると、低音の量感がたっぷりとして、音の広がりが大きく向上します。さきに聞いたHD800もノーマルながら音の広がりには定評ありますが、それをも軽く超えてしまう立体的な空間表現力はまさにバランス改造で期待される音になっていると思います。
T1というと正確でタイトな音を鳴らすという印象ですが、このバランス・リケーブルによってより音楽を鳴らす厚みのある濃い音が加わったのが面白い点です。個人的にはT1というとジャズトリオとか室内楽を聴きたいタイプのヘッドフォンだけれども、このバランス化でもっといろいろなジャンルを聴きたくなると思います。
ただ低域はあまり張り出してはいないのでT1の音の範疇ではあります。
* T1バランス+クライオケーブル
オプションとして用意されているクライオケーブルに変えると音のクリアさが大きく向上してベールがはがれたような明瞭感が得られます。ベースは量感だけではなく、よりタイトになりさらにT1の力を引き出しているように感じられます。細かな解像力もさらに上がり音を聴いてハッとする凄味のような魅力が加わります。SHANTIのヴォーカルの表情もより生き生きとして細かな再現力が上がります。
このケーブルはこのT1バランスシステムの魅力を最大に引き出していると思いますね。高価だとは思いますが、できればこのシステムにおいてこのクライオケーブルはぜひほしいところです。ただ曲によっては腰高できつめと感じることもあるので、元のケーブルもあったほうが良いとは思います。
T5pバランスと標準ケーブル
* T5pバランス+標準ケーブル
ゲインはLowにして試聴しました。T5pはもともとT1の低インピーダンスバージョンというだけでなく、音の個性的にもT1よりもロックやポップに向いたダイナミックさを持っていると思います。音楽をより正確に分析的に聴きたいときはT1、より楽しく聴きたいときはT5pという感じでしょうか。このバランス改造でもそうした個性の差を引き継いでいて、T1に比べてやや緩め太めのT5pの音はダイナミックに音楽を聴くのにより適しています。生楽器と打ち込みビートの複雑に入り混じったエレクトロニカでも躍動感と音のち密さを両方聴かせてくれます。この標準の黒ケーブルはT5pの方が似合うと思います。
* T5pバランス+クライオケーブル
T5pバランスにオプションのクライオケーブルを付け替えても、やはりベールがはがれた感じを受けますが、T1の場合はベールが二枚はがれた感じだけ、T5pの場合は一枚ベールがはがれた感じです。もともとT5pの方がアンプ的に鳴らしやすいと思うので、T5pの場合は黒ケーブルでも良いかなとは思えます。
いずれにせよ、T5pとクライオケーブルの組み合わせもより細かに音も浮き彫りにして情報量の洪水をもたらすというという感じです。
音楽性と性能の高次元の調和ですね。試聴はPCオーディオでやっていて、たいていはたくさんのいろんな曲のポイントを次々に聴くんだけど、このT5pバランス+クライオケーブルの組み合わせを試聴していて最近気に入っているRhian SheehanのStory from elswhereを聴いていたらはまってしまって曲を聴きとおしてしまったというくらい魅力的な組み合わせではあります。なにより音楽的に美しく楽しく聴けますね。
挾間美帆のように軽快でスピード感あふれるジャズを聴きたいときはT1がいいけれども、情感あふれる感動的な音楽を聴くときはT5pかなあと思えます。そういう意味ではやはりT1もT5pもほしいところではありますね。なかなかどちらだけとは言い難いけど、そうしたベイヤーの新型テスラシリーズの魅力を再発見させてくれたシステムと言えるでしょう。
ポタ研でデモした時もベイヤーを持っている人から好評だったシステムですが、ぜひヘッドフォン祭で試聴ください。Jabenは9Fの29(大部屋の真ん中あたり)です。
Music TO GO!
2013年05月05日
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