Music TO GO!

2007年02月11日

Red Wine Audio - Signature 30

いろいろと書くものが多くて手が回りませんでしたが、やっとSignature30のコメントです。

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箱はかなりきちんとパックされて届きます。大きさはかなり小さくてJeffのModel102のようにコンパクトサイズといって良いと思いますが、持ち上げてみるとかなり重く感じます。中身がみっちり詰まっているという感じですが、実際はバッテリーの重さなのでしょう。

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前面にはDACTのステップアッテネーターのみついています。入力は一系統だけでセレクタはありません。表面仕上げも大変にきれいで市販のメーカー製オーディオと比べても遜色ありません。ロゴのデザインはVinnieさんの友人のプロのデザイナーによるものということでなかなか美しく仕上がっています。

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背面には改めて驚くことに電源インレットがありません。ACアダプタへのプラグのみあります。
RCA端子は上のペアが入力で、下のペアはアッテネーターのみ通した(音量可変できる)ループアウトです。これはサブウーファー出力などに使うとのことです。
左右のスピーカーポストはそれなりのトルクはありますが、ここはやや品質がいまひとつです。バナナで使うにはあまり問題は無いと思いますが、Yラグで太いケーブルを使うにはWBTなみのきっちりした締め付けトルクがほしいところです。
電源スイッチはやや固めですが確実な動作です。これを上にあげるとオンになります。下にさげるとオフになり、そのときにプラグにACアダプタが差されていれば充電を開始します。Signature30はフル充電で24時間持つということですが、基本的にはプラグを差したままにしておいて使用が終わったら充電させるという運用でよいそうです。

ACアダプタはわたしはお勧めのユニバーサル仕様をオプションとしてつけてもらいました。これはコンセントに差す側のケーブル(メガネ)はついていませんでした。ここは国で違うので自分で用意するようです。わたしはカメラの電池の充電ケーブルですませました。


Signature30の特徴はなんといってもバッテリー駆動のアンプであるということです。
そのせいかSignature30で感じるのはいままでのアンプとはやや違う音の性格です。端的に言ってとてもよい音ですが、それを他人に分かるように説明するというのがややむずかしいとも思います。
システムはいつものようにIKEMIまたはDLIII、そしてスピーカーはDynaudioのSpecial25です。

まず音がとても整っていて楽器や声の分離がかなりはっきりしています。ノイズはたしかに皆無に近くノイズレスの漆黒の背景から音像はくっきりと浮かび上がり、そのため音の重なりがリアルで立体的です。

音と音はかなりはっきりと分かれていますが、そのエッジはきつくありません。全体的な印象は真空管アンプのような美音はありませんが、適度に温調で分析的な冷たさはあまりありません。
余韻や響きは余分なものはなく正確にあるものだけがあるという感じです。おどろくのはコーラスがユニゾンからふっと途絶えたあとの空間(ホール)に消え行く声の余韻の消えるさまが、砂に染み込む水のようにあいまいにならずに自然に溶けていきます。これもノイズレスというSNの高さとあいまってのものだと思います。

また全体的に帯域バランスが優れていてダイナミックさもかなりありますが、あまり前に出るほうではありません。
全体にハイエンドというわけではないですが、ミドルクラスとしてはかなり良い方という感じです。印象としては素晴らしいものがありますが、この辺はある程度予想された感想ではあります。


一方でもうひとつこのアンプではじめて感じた不思議な感覚は演奏の完全さ、です。ちょっと分かりにくい表現ですが、たとえばいままで録音のせいかと思っていたあらが、あれっという感じですんなりと鳴ってしまうという感覚です。S6のような真空管アンプと比べると顕著です。
ダイナミックレンジが大きいクラシックや、低域でかなり入力レベルの高いビートやインパクトを刻むロックでも破綻せずに音をわりと正しく再現できます。

たとえば車で曲がりくねった道を高速で飛ばすときに、カーブやアップダウンで車が横滑りしたり速度が一定に保てなかったりします。それがまるで道に車がぴったりと張り付いたようにすいすいと走る気持ちよさ、とでもいいましょうか。。
駆動力と言ってもいいんですが、それよりも演奏力と言いたくなります。複雑な曲をなんなくこなしてしまい破綻や息切れはありません。これがちょっと不思議な感覚です。


はじめの音のはっきりした分離感はデジタルアンプの特性からくるように思えます。実際にインターナショナル・オーディオショウで聴いた中で音が一番近いのはジェフのModel302でした(同じ音という意味ではありません)。Model302はICEというデジタルアンプ技術を使っています。これにSig30の場合はノイズレスというバッテリーの利点が相乗効果を得ていると思います。
Sig30の場合はかなり明瞭な音ですが、不思議に尖ってないでとても聴きやすく感じます。ここは例のPaper-in-oil-capsが効いているということです。
むこうでは"Underground SET Club"なんていう言葉で評したりしていますが、「秘密の三極管シングル同盟」みたいな感じでしょうか。真空管とは異なった柔らかさ・滑らかさがなにかあると思います。

次の"演奏力"のほうはよく分かりませんが、思ったのはバッテリーの効果としておそらくノイズが乗らないというだけでなくSLA(鉛蓄電池)の瞬時電流供給能力がかなり高いのではないかと思います。
うちでは週末の昼であってもアンプがクリップするくらいまででかい音を出せませんが、それでも普通にはどんなシーンでも破綻するということがほとんどありません。
とくに電流が必要になる低域の再現がおそろしくいいのでそう思います。うちのスピーカーは4オームなので特に差を感じるかも知れません。
Vinnieさんも記述してますが鉛蓄電池は車のスターターを起動するくらい瞬間的に大電流を流せるということなのでそうした利点もありそうです。

他方で欠点としては音場がそれほど広くないのでプリをつけたくはなります。そこでGS-Xをプリとして初めて使ってみました。たしかに音場は広がり厚みはやや増します。これは普通にプリを入れた効果といえますが、代わりに鮮度感が後退してしまいます。誇張して言うとちょっとだるくなる感じです。
個人的にはやはりプリがないほうが好みです。


ちなみにいまはSig70というモノラルタイプもあります。これはデジタルチップのブリッジ出力モードを使用して70W/chを出しています。
ちょっとバッテリー駆動オーディオに興味を持ったので、今度はVinnieさんのOlive Musicaの改造ものにひかれています。Oliveは海外でちょっと知られているHDトランスポートの専用機です。
こちらもレビューを見るとなかなか良さそうで、Digital LinkIIIと組み合わせてハードディスクトランスポートとして考えています。

HDトランスポートは今年取り組みたいテーマのひとつです。そのうち真空管アンプと無線LANという半世紀はなれた技術が同居する怪しいシステムを妄想しています(笑)
posted by ささき at 18:58| Comment(1) | TrackBack(0) | __→ Signature 30 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
充電池駆動はなかなか良い感じですね。
やはり余計なノイズが徹底的に排除されると、
背景の静かさが引き立つというイメージがあります。

>鉛蓄電池は車のスターターを起動するくらい瞬間的に大電流を流せる

ということは、ポータブルにおいてもコンデンサーの
容量を出来るだけ大きくとった方が有利ということですね。
でも電圧が高いと図体が大きいのがネックですね。(ーー;
Posted by rabbitmoon at 2007年02月12日 15:09
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