フジヤさんのポータブル研究会イベントに行ってきました。ヘッドフォン祭よりも小さなイベントですが出展は豊作という感じでなかなか盛り上がりました。下記は開場前の様子です。
以下面白かったのをカテゴリー別に紹介します。
* Androidデジタル対応DAC内蔵ポータブルアンプ
iPod/iPhoneデジタル対応DAC内蔵アンプはFostexやSonyなど幾つか出ていますが、今回はAndroidからデジタルで受けられるタイプのDAC内蔵アンプが出てきました。注目はその方法ですね。
ADL X1
X1は多機能なポータブルアンプで、iPhone、Android(Galaxy S3など)からのデジタル入力に対応して、光出力まで備えています。AndroidはUSB Mini-Bにつなぐということです。
PCから入力する時もAndroidと同じようにUSB Mini Bにいれます。旬のESS ES9023を採用してるようでハイレゾ対応でクリアかつ精細な音も良かったですね。iOSデジタルはその隣のUSB Aに接続します。またイヤフォンのリモコンもiPhone/Walkman両方対応しているというなんでもありの多機能ですね。
X1の背面をみるとわかりやすいと思いますが、iPhoneデジタル接続はX1側がAなのでiPhoneはデバイスとしてアクセサリープロトコルでデジタル信号を取り出しているが、AndroidはX1側がBなのでアクセサリープロトコルではなく、Galaxy S3で有効化しているUSBクラスドライバーを使用していると思います(つまりAndroid側がホストなので4.0が必要です)。だからPC入力も同じプラグに接続するわけですね。
Xduoo XP1
これはWilsonがエクスデュオーと呼んでいましたが、中国製の新製品ポータブルアンプです。XP-1は特にAndroidと組み合わせることをうたっています。DAC内蔵のポータブルアンプでDACはWM8740ですが、USBレシーバーとしてPCM2706を使用して44/16での接続を考慮しています。アンプ部もOPA627ということで強力ですね。
これもXP-1側はUSB(micro)Bになってるのがわかると思います。また下の付属品のケーブルを見ると両端がUSB BになっているのでUSB OTGケーブルとして機能していますね。これもADL X1と同じくAndroidと言ってもGalaxy S3など一部機種で有効化されているUSBオーディオドライバーを使用していることがうかがえます。
Androidからデジタルオーディオ出力を取り出すには二種類の方法があります。AndroidのUSBオーディオドライバーを有効化する方法と4.1で導入されたアクセサリープロトコルを使う方法です。前に書いた下記記事を参照ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/281978580.html
X1、XP1とも前者を採用してUSB OTGケーブルでUSB B - USB Bの接続を採用してるということでしょうね。アクセサリープロトコルならばiPodデジタルアウト(こちらもアクセサリープロトコル)のようにアンプ側はUSB Aになるはずだと思います。実際にネットのレビューを読むとxDuoo XP-1ではiPadにカメラコネクションキットを使用しても使うことができるようです。これも前者と同じということを示唆していますね。
ただしAndroid対応といっても前者だと使用できる機種が限られます。これもXP-1、X1両方ともGalaxy S3など一部機種の動作確認とされているようです。
Androidアクセサリープロトコルを使用してデジタルオーディオ信号を取り出す方法をサポートしているのは4.1のときに作られたarduinoリファレンスキットだけというのもさびしい話ではありますが、こちらはDAC側に対応が必要となります。
なおxDuooは後述のXD-1も含めてJabenで取り扱うと思います。こちらのJabenリンクをご覧ください。
http://jaben.net/forums/index.php?topic=24517.0
* AK100関連
人気のハイレゾプレーヤーであるAK100も関連のデモがいくつかありました。
RWAK100(改造AK100)
まず手前味噌ですが、Red Wine Audioの改造RWAK100で、フジヤさんのブースで展示してもらいました(告知が行き届きませんで私に直接聞かれた方も多くすみませんでした)。
評判を聞いてみたところ、けっこう人気でショウの後に帰ったらすぐ送るって言ってた人もいたそうです。
xDuoo XD-01 + AK100
AK100の組み合わせでなかなかよかったのは上でも書いたxDuooのXD-1です。こちらは光入力により192k/24までデジタル入力で再生可能ということで、AK100の光出力と組み合わせると素晴らしい音質で再生ができました。
DACチップはAK100本体と同じWM8740ですが、シーラスロジックのCS8422でASRCを行ってジッター低減をさせています。これはColorfly C4と同じですね。ASRC(非同期型サンプルレートコンバーター)はBenchmark DAC1やDigital LinkIIIでも行われている微妙にリサンプリングをしながらジッターを低減させる方式です。またこれにより192kへのアップサンプリングも可能としています(ASRCとアップサンプリングはたいていセットです)。これと強力なアンプ部があるのでトータルでは音質を向上させることが出るというわけです。AK100用のポータブルアンプとして好適ですね。
短めの光ケーブル(角->丸)も付属しているので買ってすぐにAK100とのデジタルセットが楽しめるのも良いところです。また同軸とUSBでのデジタル入力にも対応しています。
iQube V3 + AK100
下記はタイムロードブースのAK100とiQubeの光デジタルシステムです。v3ならば光入力がついていますのでiQube v3をお持ちの方にはまずこれがお勧めです。やはり音がだいぶグレードアップしますね。
このほかにもマウスコンピューターのブースではAK100のカラバリを展示していました(写真失念)。カラーはレッドが人気があったようでした。
* バランス駆動アンプ
CEntrance HiFi-M8
ようやく実機が聴けたHiFi-M8ですが、今回は開発に専念してヘッドフォン祭にやってこなかった開発者のマイケルさんもミックスウェーブのブースに来ておりました。
ヘッドフォン出力は三種類のパネル交換でオプションで変えることができるようです。下記写真のように3ピンXLRx2、4pinXLR、標準プラグとRSA方式バランスの3種類が用意されているようです。HM901のようなTRSSバランスもほしかったかも。
音はLCD2で聴くとホームアンプみたいに厚みがあって密度感のある本格的なものでした。鳴らしにくいLCD2でこれだけの音が出るならホームアンプとして買っても良いかもしれませんね。また逆に高感度のUE18でも試してみまたしが、まったくノイズが聴こえないすごくノイズフロアが低いのが確認できました。さすがこの辺はCEntranceの面目躍如たるところです、
機能としてはハイブースト、ローブーストは効き目も派手ではないオーディファイル向けの味付けで、他にもゲインとインピーダンス、またiOSデジタル入力となんでもありの多機能な面もあります。これも楽しみですね。
Jabenの音松アンプとベイヤーT1/T5p改造ヘッドフォン
これはベイヤーのT1またはT5Pとケーブルを交換してバランス改造したものと、音松アンプというオーロラサウンドの出しているキットをベースに特にこのベイヤー改造ヘッドフォンに合わせてチューニングをしたもののセットです。DACは内蔵していないので、これにDACportをつけて20数万円でネット限定販売予定とか(ヘッドフォンはT1かT5pのどちらかです)。この組み合わせだとお得感もあります。
手持ちのiPhoneにコネクタつけて試聴したんですが、iPhoneから出た音とは思えないくらい豊かで厚みのある本格的な音が出てきました。このT1/T5pのケーブル改造だけでも別物という感じで、自分のT5pを持っていた人が試聴したら、やはりもう全然別ものって驚いてました。
* 真空管ポータブル
こちらは最近は海外でも話題のアナログ・スクエア・ペーパー(A2P)のブースです。
http://www.analog2p.com/index.html
手前の黒いのは私も持ってるTu05でこちらはなんと全段真空管のフルチューブ・ポータブルアンプです。前は電圧を昇圧するところでノイズが少し出てヒスってんですが、こちらはいまでは改良されていて以前よりノイズが減りました。現状のものではカスタムIEMでも大丈夫です。これはまさにいかにも真空管という柔らかさ滑らかさが堪能できます。向こうのものは新製品のハイブリッドの06です。こちらはより小型に安価になるということです。ケースにも凝っていて趣味性の高さもアピールしているところが良いですね。
フォステクスの真空管ハイブリッド HP-V1
こちらはフォステクスの隠し玉、真空管ハイブリッドのポータブルアンプです。ピュアアナログ設計にこだわったポータブルアンプということでオリジナルのフィルムコンデンサを使ったところもポイントということです。また前後にアナログ入力を付けているというのも面白いところ。デザインはまた少し変わるかもしれないということでした。
HP-P1からのアナログアウトを受けてTH-600で聴いてみましたが、ものすごく柔らかいというわけではなく、強く真空管を主張するというより、モニター的なHP-P1に対してアナログ然とした古風なアンプという感じです。HP-P1だと音が少し乾いた感じがするという人には良いのではないかと思います。
* イヤフォン・ヘッドフォン
Aedle VK-1 ヴァルキリー
http://www.aedle.net/
昨年発表されたデザインに優れたフランス製のヘッドフォンです。私も実はプリオーダーしておりますが、トップウイングさんによって国内販売される予定だそうです。
本体は軽くて思ったよりも華奢な感じです。デザインだけではなく音も悪くないですね。いわばコンシューマー向けサウンドで、暖かみがあって中低域にウォーム感がある感じですね。ヴォーカルは甘くてよかったです。これはFocalのSpirit oneと良い比較になりそう。
Jaben Pro1
シングルBAのイヤフォンで一万円くらいと安価な製品です。三月発売とのこと。
中高域のクリアな抜けの良さが気持ち良く、ベースは抑えめです。価格的には良いですね。
怪しいE2c改造イヤフォン
開場で見つけた怪しいE2c改造イヤフォンです。E2cのダイナミックドライバをそのままにBAドライバをチップマウントしたというもの。作った人はこの辺から推測できるかも。
音もネタにしてはけっこう良かったですね。まじめにほしかったりして。
* その他
iFIのUSB機器
http://www.ifi-audio.com/en/iUSB.html
こちらはUSB DACとUSBクリーン電源などのシステムです。最近海外ではちらほら見るようになってきました。iFI自体は新興ブランドですが、ヨーロッパの大手企業がバックについている新展開製品群ということのようです。こちらは後で詳しくかけるかもしれません。
ヘッドフォンブックの英語版
これは私も書いているところの日本で出いるヘッドフォンブックを英語に完訳したものです。これは2012年版をベースにした準備稿のサンプルです。海外では日本製品だけではなく日本の評論家の意見も尊重されるということで完訳という形になったようです。下のように私の書いたページも翻訳されていますね。
これはJabenがプロデュースしていて、なんと付録にJabenのアンプがつきます。価格は$45くらいになりそうということですが、まだ未定です。二週間後くらいにHeadphone mook companyと言うところから出るということです。翻訳はアイリッシュ音楽の専門家でオーディオにも造詣が深い翻訳家の大島さんが翻訳したうえでネイティブプルーフもやってますので完璧です。日本のみなさまも日本語版と両方合わせて英語の勉強にどうぞ!
ポタ研は今回は700名くらいは来てたんでしょうか。けっこう入っていましたね。初期の中野時代のヘッドフォン祭を思い出しました。はじめから終わりまでずっといるという熱心な人も多く熱気にあふれ、ユーザー同士のコミュニケーションの場でもあり、まだ学生という若い人たちもたくさん来て、オーディオ業界の希望を体現したものという気もしました。別にオーディオ産業が斜陽になったわけではなく、ユーザーが求めるものを提供するならばユーザーはやってくるということではないかと思います。
Music TO GO!
2013年02月10日
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