これはあの有名なクラシックの名曲であるヴィバルディの四季を"リミックス"したものです。タイトル通りに言うと四季の再作曲ですね。クラシックのアレンジというと原曲にビートをアレンジするというパターンがほとんどですが、現代音楽家のマックス・リヒターは本作で文字通り楽譜レベルから四季の再構築を行っています。四季とは異なったメロディーラインに絡めて四季の有名なフレーズをループさせるっていうミニマル手法が斬新です。こちらにYoutubeの試聴リンクがありますのでご覧ください。アルバムから冒頭のSpring 0とSpring 1です。
ビートが入ってないのに気持ちよく躍動的に感じられるところも良いですが、ドラマティックに見せかけていて終結部がなく唐突に終わるのも現代曲を思わせます。Richterは元の四季のスコアを音符レベルで再構築して、結果的に3/4を捨てたけれども元の曲のダイナミックさとエッセンスを抜き出したと語っています。Max Richterのインタビューもあります。
Max Richterは元は現代音楽ユニットであるピアノ・サーカスのメンバーでした。ピアノサーカスは6台のピアノを同時に使用するスティーブライヒのSix Pianosを演奏するために結成されたユニットで、その後もグラスなどミニマル音楽を中心として活動しています。Max Richterは最近ではエレクトロニカのアーティストとして有名になりいくつものアルバムを出しています。現代音楽家でもあり最近ではエレクトロニカで有名というと、少し前に紹介したヒラリーハーンと共作したハウシュカを思い出します。こちらのリンクです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/272154203.html
本作もハウシュカのSilfraと同様にクリエイティブにクラシック音楽の再構築をしています。
ちなみにピアノサーカスのSix Pianos演奏はこちらのiTunesリンクでどうぞ。
https://itunes.apple.com/jp/album/reich-six-pianos-riley-in/id206660790
ここでカップリングされているテリーライリーのin Cはミニマルの名曲、というよりこの曲でミニマルという音楽が創始された記念碑的作品です。Cはハ長調のことですが、それまでの現代音楽の代表だった無調が調性を否定しないと自由で創造的な作曲はできないという主張なのに対して、調性を持っていてもこれだけ創造的でかつ人が楽しめる音楽が作れるという意味がタイトルの"in C"に込められています。
そうしたミニマルムーブメントを受け継いで、最近のポストミニマルの傾向はもっとカジュアルな音楽に寄ってきて、こうしてゼロ年代音楽の代表ともいえるエレクトロニカと融合してきていますが、このRecomposed Four Seasonsもその流れと言えるでしょう。
Recomposed Four Seasonsのアルバムはドイツグラモフォンからリリースされています。
Music TO GO!
2012年12月29日
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