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2012年12月13日

Shure SE215 Special Editionレビュー

少し前の記事でShureの新製品であるSE215 Special Editionの発表会報告を書きましたが、実機を使うことができましたのでそのレビュー記事です。なお"SE215SPE"は商品型番であって紹介記事のなかでは正式名称の"SE215 Special Edition"と表記してほしいとShureの方から言われてますので文中はSE215 Special Editionと表記します。

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SE215 Special Editionは2011年4月に登場したShureラインのエントリーモデル、SE215のスペシャルバージョンです。SE215はダイナミックドライバーを採用していますが、バランスド・アーマチュアドライバーはやはり性能を発揮するにはマルチウエイありきなので、このくらいの価格帯ではダイナミックタイプの方がより良い選択なのではないかとも言えます。

1. SE215 Special Editionの特徴

SE215 Special Editionのオリジナルモデルとの違いはまず美しいトランスルーセント(透明)ブルーのカラーです。実物を見てもなかなかセンスの良い仕上がりで、ブラウンよりもコンパクトに見えます。iMacみたいと言う人もいますが、私にはeMateに見えました(ちなみにeMateからがジョナサンアイブのデザインです)。ただしShureの人に聞いてみると、特になにかを意識したわけではないとのこと。スマートフォン市場や女性ユーザーなど新しいターゲットを意識したとも言います。

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またケーブルはSE535 Special Editionと同様にオリジナルモデルの1.6mから1.16mと短くしています。SAECの交換ケーブルでも短いものが人気でしたね。もともと1.6mという長さはステージで使うイヤモニに合わせたということです。またケーブルカラーが黒ではなくダークグレーというのも変更点です。線材はオリジナルと同じということですが、このケーブルは交換可能なうえになかなかに質が良く、隠れたSE215のポイントの一つです。

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このほかにもパッケージが刷新されています。後でまた触れますがShureではプロ・コンシューマー統一ブランドですが、Special Editionは全体によりコンシューマー向けを意識したものになっているのが分かります。

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そしてオリジナルモデルとの違いは音の作りこみにあります。どう変えたかというと、20Hzから1kHzまでの低域から中音域にかけての範囲を2dB増やしています。(上左図参照、画像は発表会の資料)
1kHzというと通常のヴォーカル帯域はほぼカバーされていると思います。さらに高域は変化させていません。これはコンシューマーのフィードバックをもとにロックポップ向けにチューニングしたということです。実際にどこを変えたかというと、ドライバー後方の音響抵抗スクリーンのチューニングを変えて行っているということです(上右図参照)。以降書いていきますが、これは単に低域を盛り上げたベースブーストモデルというのとは違うようです。

2. SE215 Special Editionの音の印象

最近人気のiriverのハイレゾDAPであるAK100と組み合わせてみました。(AK100の記事はこちら)
SE215 Special Editionは低価格のダイナミックドライバー機だからといってこもったような音ではなく、クリアで明瞭感が高く楽器の音もきちんと分離しています。音のリアルさも感じられ、あまり人工的な感じがなく自然な再現性を感じます。ただしバランスド・アーマチュアに比べれば線は太めで、ダイナミックドライバー機らしく全体に暖かみがあって骨太の印象です。

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AK100で聞くとベースが膨らんだとか誇張されたという印象ではなく、ロックでのベースやドラムスの重みと量感がほどよく再現され、AK100のよく整った音表現のバランスを崩していません。AK100はフラット基調であり、イヤフォンによってはベースが物足りないと思えることもありますが、SE215 Special Editionでは気持ち良いベースのレスポンスがありますのでちょうど良いですね。ヴォーカルものを聴いても明瞭感は十分にあって低域によって中域がマスクされてしまうということはありません。かつ、さきに書いた中域での2dBプラスの効果もあるのか、音の厚みが適度な甘さとなって良い感じです。


AK100とはお勧めの組み合わせといえるでしょう。AK100は音がかなり細かくローノイズフロアなのでバランスド・アーマチュアとの相性が良いのですが、反面で音がドライな方にいきやすいので、SE215 Special Editionを使って暖かみのあるダイナミックな良さを引き出してみるというのもお勧めです。AK100のまた別な良さも発見できるでしょう。
落ち着いた音で高域などのきつさも少なく感じられます。またAK100に見合うくらいの性能もSE215 Special Editionは備えています。ハイレゾ音源の良さもわかりますね。

SE215 Special Editionでは他のペース志向イヤフォンのように低域が盛り上がっているというよりも、中低域の範囲の全般的に厚みが増えてベースの充実感につながっていると感じられます。全体的な音傾向は通常モデルSE215とほぼ変わらないのが興味深い点です。ベース志向だから低域をポンと盛り上げて全体のバランスが崩れたり中域がへこんでしまうというようなものではありません。
たとえばアカペラ曲を聴いても印象は異なります。声だけにおいても中域の増強が厚みや豊かさにつながっていて好印象を受けます。通常SE215に戻して聴くと、音傾向はやはり同じで音が痩せたというかすっきり細身になるという感もあります。

3. SE215 Special Editionの位置づけ

SE215 Special Editionは今年聴いた中では一万円前後の一押しのイヤフォンです。
従来品も併売されますが価格的には従来品よりやや高めであるようです。細身ですっきりした音が好きな人はあえて従来品を選ぶ手もあるけれども、一般にはロック・ポップだけではなくさまざまなジャンルで豊かな厚みのあるSpecial Editionの方が良いと感じることも多いと思います。従来品と比べると多少高くても私はSpecial Editionをお勧めします。もともとSE215でも線は太いほうなので、細身ですっきりした音が好きな人はBAタイプを選んだほうが良いでしょうね。
逆にいままで高級機のBAモデルを聴いている人もSE215 Special Editionはダイナミック型としてのもうひとつの選択肢として選べるイヤフォンとなる魅力があると思います。単にエントリークラスの良品というだけではなく、上級ユーザーにもお勧めでダイナミック型らしい良さが楽しめるでしょう。

フジヤさんの販売リンクはこちらです。
http://www.fujiya-avic.jp/products/detail14555.html

Shureはやはりプロ機材のブランドであるというのがポリシーのようです。そのためSE215の前任のSE115あたりでは多少コンシューマーサイドに降りすぎたという反省もあるようです。2011年あたりではさらにプロラインとコンシューマーラインとの統一をモデル的にも音的にも考えていて、SE535ではSE530とはやはり音傾向も違うし、SE215もSE115とは違います。ハイクラスもエントリーでも極端な音作りよりはバランスのとれたプロ向きの音作りが前提にありますね。そして現在では基本的にプロとコンシューマーを分けるという製品開発はしていないということです。裏を返すとコンシューマーが使うイヤフォンでも耐久性も含めたプロ向けの基準を満たしているというわけですね。

一方でコンシューマー向けにはやはりそれなりの味付けのモデルが必要ということで、SE215 Special Editionではカラバリを取り入れたり、ロックポップ向けの音の味付けを試行したのだと思います。しかし上で書いたように実際に聞いてみると他のメーカーのベースヘビーイヤフォンとは異なるアプローチを取っているのが分かります。単に低域を盛りつけないで、上手にチューニングすることで全体のバランスは崩さずに中低域での物足りなさを解消させています。
これがコンシューマー向けとはいえ、他のメーカーとは一線を画したShureのプロメーカーとしての矜持なのでしょう。SE215 Special Editionはエントリー価格帯とはいえ、そういう点から見て他のブランドとは一味違ったShureならではの品質と魅力を楽しめるイヤフォンであると思います。
posted by ささき at 23:11 | TrackBack(0) | __→ Shure イヤフォン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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